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講演と分科会
第1分科会「家族会と市町村との連携」
<9月5日(水)13時〜14時40分>
会場:モンブラン(7階)
 
 精神障害者がもっとも身近な市町村でサービスを受けるにあたり、どういうサービスが受けられるのか、どうしたらそのサービスが受けやすくなるのか。市町村の側、家族や当事者の側、また家族会として、それぞれどんな課題が見えてくるのか・・・
 
司会者  小川悦子  (市町村福祉業務検討委員会委員)
講師  蔭山正子  (全家連保健福祉研究所)
報告者  野本新作  (埼玉県精神障害者家族会連合会)
  菅野勝行  (栃木県精神障害者家族会連合会)
 
 
家族会と市町村 〜これからはこんな連携を〜
全家連保健福祉研究所 蔭山正子
1.平成14年度から市町村が行なう業務
[1]通院医療費公費負担に関する手続きの申請受理等
[2]精神障害者保健福祉手帳の申請受理等
[3]精神障害者社会復帰施設、精神障害者居宅生活支援事業(ホームヘルプ、ショートステイ、グループホーム)、精神障害者社会適応訓練事業の利用に関する相談、助言
[4]必要に応じて上記の事業の斡旋、調整及び利用の要請
[5]精神障害者居宅生活支援事業の実施
 
2.市町村が精神保健福祉業務を担うことによって期待される効果
<家族側>
[1]精神障害のサービスが他障害ののサービスと横並びに近づく
市町村の精神保健福祉担当者が精神障害者の相談や援助を通じて、精神障害者本人や家族について理解が深まると、精神障害者へのサービスを整える必要性を感じる。市町村職員は、当事者のニーズを施策に反映できる人たちなので、将来的には、他障害と横並びのサービスが受けられるようになることを期待する。
[2]距離的に近いところでサービスを受けられる
[3]地域を熟知した、地域の保健・福祉に責任のある担当者からサービスを受けられる
地域の状況にあった対応、地域の保健・福祉に責任ある対応が期待できる
 
<市町村職員側>
[1]精神障害者の状況を把握できるようになり、独自のサービスを提供しやすくなる
今まで精神障害者へのサービス提供が不足していると感じながら、障害者を把握できないために施策・業務に反映しにくかった。
[2]精神障害者本人や家族のニーズを把握しやすくなる
窓口などで精神障害者本人や家族の声を聞くことができ、ニーズを把握しやすくなる。地域における問題点や必要な対策を明確にでき、精神保健福祉施策、啓発活動・ホームヘルプ事業などの業務に活かせる。
 
3.市町村が精神保健福祉業務を担うことによる不安
<家族側>
[1]市町村の窓口で適切に対応されるか不安である
精神障害者の支援経験の無い職員が窓口で対応することも考えられる。障害者本人・家族に対する言動が十分配慮されるか、事務的対応に終始しない親身な対応がなされるか、プライバシーに配慮した対応がなされるか、など窓口の対応に不安を感じる。
[2]地域住民の目が気になる
役場で近所の人に会わないか、役場の職員に知人がいないか、など身近な役場になると、知っている人に遭遇する可能性が高まるので、「知られる」ことへの不安が強い。
[3]市町村がプライバシー・秘密を遵守してくれるか心配である
身近な市町村だけに個人情報が漏れたときの影響が大きい。プライバシー・秘密を遵守することに関して、市町村職員全体がどの程度の意識を持っているのか心配である。
[4]精神障害者本人や家族に対するサービスを確実に受けられるか心配である
通院医療費公費負担・精神障害者保健福祉手帳の事務手続き以外の精神保健福祉業務は、市町村によって進み具合が異なる。自分が住む市町村ではサービスを受けることができるか心配である。
[5]市町村格差が広がる
居宅生活支援事業など市町村によって取り組みに格差が生じる。
<市町村職員側>
[1]精神保健福祉行政へのノウハウ・精神障害者や家族への支援経験が不足していることから、対応に不安がある
事務処理が問題なく行なえるか、窓口で障害者本人や家族からの相談に答えることができるのか、などの不安がある。
[2]財源やマンパワーの不足により、当事者のニーズに答えられるか不安である
 
4.市町村精神保健福祉に関わる機関・団体
市町村福祉領域課および保健領域課、保健所、精神保健福祉センター、地域生活支援センター、社会福祉協議会、医療機関、社会復帰施設、ホームヘルパー、民生委員、ボランティア、家族会、患者会
 
5.家族会と市町村職員との連携によってそれぞれが得られる効果
<家族会側>
[1]市町村の精神保健福祉担当者に対して、当事者の立場から精神保健福祉に必要なサービスに伝えることができる
[2]家族会活動が活性化する
市町村の窓口で申請にきた家族に家族会の存在を知らせてもらうことで、家族会の新規会員が増える。家族会の例会に職員が参加したり、家族会の行事に支援をしてもらうことで、家族会活動が活発になることが期待できる。
[3]市町村職員と交流することで、理解が深まる
家族会としては、家族会と市町村で協力した取り組みにつながり、家族個人としては、市町村職員に気軽に相談できる関係になるという効果がある。
<市町村職員側>
[1]家族会で当事者の生活実態・ニーズを把握できる、サービスや施策へ反映できる
家族会の例会では、日頃誰にも言えない悩みや日常の生活実態が話される。職員は家族会の例会に参加することで当事者の生の声を聞ける。
[2]窓口にきた家族に、家族会という社会資源を紹介することができる
[3]家族会で家族の問題対処方法などを聞くことにより、自らの援助技術が向上する
[4]家族会の例会に参加することで、障害者の状況を一度に把握することができる
 
<家族会と市町村職員の両者にとって共通した効果>
 地域に暮らす障害者の実態や問題点を共有し、家族会と市町村職員がそれぞれ異なる立場から「障害者の住みよい暮らしづくり」に向けて努力できる
 
6.家族会と市町村職員とのこれからの関係:パートナーシップ
<パートナーシップ> 日本語では二人三脚、相棒に似た関係。
特徴
[1]共通の目的を持っている。
[2]お互いに役割が違う。違うから良さがある。
[3]関わることでお互いに利益がある。お互いに成長していく。
関係の基本
[1]対等で平等である。
[2]お互いに信頼している。
[3]お互いをよく理解している。
[4]家族会が主体性を持っている。
[5]状況に応じて関わり方が柔軟に変わる。
 
7.報告の整理
[1]家族会と市町村が関わるようになったきっかけは何か。
[2]現在、家族会と関わりのある市町村担当課・その他の関係機関はどこか、どのような関わりがあるのか。
[3]家族会と市町村の共通の目標は何か。
[4]家族会と市町村のそれぞれの役割は何か。
[5]家族会と市町村が関わることでお互いに得たものは何か。
 
第1分科会「家族会と市町村との連携」 報告
埼家連副会長
桶川あけぼの会長 野本新作
 
◇ 昭和41年、偏見・差別の厳しい時代、自宅を開放し、僅か4人で定例会をスタートしました。
 
◇ 市議会議員に継続的に賛助会員の呼びかけ。
 
◇ 昭和51年4月、「桶川あけぼの会」発足。
 
◇ 桶川市より補助金を受ける。
 
◇ 桶川社会福祉協議会より補助金を受ける。
 
◇ 各種大会に桶川市より無料バスの提供を受ける。
 
◇ 平成3年、桶川市の施設で小規模作業所開設。
 
◇ 作業所、関係機関より清掃業務を受託。
 
◇ 平成12年、埼玉県精神保健福祉協会より「あけぼの会」表彰される。
第2分科会「作業所運営〜授産施設への移行」
<9月5日(水)13時〜14時40分>
会場:王朝(7階)
 
 グループホームや生活支援センター、ホームヘルプなど、地域生活支援にどうしても必要な事業も、小規模授産施設で立ち上げた社会福祉法人で実施できます。しかし、小規模授産施設への移行にあたっては、社会福祉法人格をとることが必要です。資産要件を満たすことができるか、この法人と家族会との関係をどうするかなど・・・
 
司会者  戸高洋充  (グリーンウエーブ湘南)
講師  釣船晴一  (ぱれった・けやき)
 
全家連ブロック研修会 「作業所」分科会《2001年度》
社会福祉基礎構造改革と作業所運営の課題
釣舟晴一(全国精神障害者地域生活支援協議会、ぱれった・けやき/宮城県)
 
1.社会福祉基礎構造改革がもたらす作業所への影響
(1)「措置」から「契約」への転換が意味するもの
〔厚生省による説明〕
社会福祉基礎構造改革…
○社会福祉事業、社会福祉法人、措置制度など社会福祉の共通基盤制度について、今後増大・多様化が見込まれる国民の福祉への要求に対応するための改革
○介護保険制度の円滑な実施や成年後見制度の補完、地方分権の推進、社会福祉法人による不祥事の防止などに資するもの
措置制度…行政が行政処分によりサービス内容を決定
利用制度…利用者が事業者と対等な関係に基づきサービスを選択
《これからの社会福祉サービス利用の考え方》
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〔社会福祉事業における公的責任の所在の変化〕
公的責任のあり方が《実施責任→監督責任》に
⇒実施主体の多様化の促進、事業運営に対する規制緩和等、実施しやすい環境整備
〔「選択制」の条件〕
 サービスを選択できる状態というのは、供給されるサービスの総量が需要を上回っていること。 …福祉サービスが供給過剰の状態 ※現状は、言ってみれば「配給制」の福祉
 必要以上のサービス量の創出と、選択にあたっての十分な情報提供の体制の整備
 福祉サービスの特質(利用者は相対的に弱い立場にあるということ)から、その利用にあたっての権利擁護体制についての格段の整備
 
(2)地域福祉の拡充における作業所への期待
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2.「小規模通所授産施設」をどうとらえるか
(1)小規模通所授産施設の意義と役割
・「作業所の法定事業化」の具体化のひとつ
・障害者の生活の場を基盤とした地域内の社会資源のひとつとしての利用型施設の整備の方向
地域を基盤とする作業所活動に対する国による積極的評価のあらわれ
 
 
《小規模作業所(共同作業所)が小規模通所授産施設へ移行するための条件》
[1]小規模授産施設としての土地建物を所有しているか、または国・地方公共団体から貸与、または、民間の賃借による場合は資産として1000万円(現金、確実な有価証券、不動産)を所有している。
[2]公的補助を受けての事業実績が5年以上ある。(NPO法人の場合は3年以上)。
[3]施設の面積についての基準はないが、(1)作業室または作業場、(2)静養室、(3)食堂((1)または0と兼用可)、(4)洗面所、(5)便所、があること。
[4]利用者数が10名以上19名以下であること。(支障がなければ、20名以上も可)。
[5]施設長1名、精神保健福祉士・作業療法士・社会復帰指導員2名以上(施設長兼務可)がいること。内、1名は常勤であること。
※[2]については、補助年数の実績のみの問題なので、時間が解決すること。また、同一法人で小規模通所授産施設を複数運営しようとする場合は、その内の1ヶ所について実績年数がクリアできていればよい。
※[3][4][5]についても、多くの作業所でクリアできる水準で、解決も可能。
※問題になるのは、[1]。
   ⇒資産以外の条件は、多くの作業所では大きな問題にはならない。
 
 
小規模通所授産施設は「小さな授産施設」ではない。今までどおりの「作業所」が法律の裏づけを得た、ということ。
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「この小規模授産施設は授産施設のいわゆる安い版だと私どもは理解していないのです。これは小規模作業授産施設と言いますけれども、新しい施設体系なのだと。本当にこの小さな規模が比較的自由にいろいろな地域に芽生えていくという、一つの施設体系なものですから、あまり一般の授産施設と比べてどうだこうだというよりも、この良さをどう生かしていくか…(以下略)」
 今田 厚生省障害保健福祉部長談(公衆衛生審議会精神保健福祉部会/2000.12.11)
 
(2)社会福祉法人化の意義と役割
・現状の作業所運営主体の安定化=事業運営の安定性の確保
・地域の核となる事業主体の設置
《小規模通所授産施設による社会福祉法人が実施できる事業》
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 民間社会福祉事業の核となる社会福祉法人を設立することが、制度的保障の充実と社会的認知を高めることにつながり、今後の精神障害者の地域生活支援活動の多様な展開の基盤となる。
 小規模通所授産施設への移行と、社会福祉法人の設立は、新たな活動に取り組んでいくための、とても重要な「スタートライン」。








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