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2.広報資料の配布による活動
1)広報資料の制作と配布
 啓発活動を進める際の「広報資料(ニュース紙・誌やチラシ、パンフレット、ポスターなどを含めてここでは、資料と呼びます)」の作成と配布について、その進め方をまとめておきましょう。
 「作業所ニュース」を送る場合のように、情報提供自体を目的とする啓発活動のときはもちろん、バザーやスポーツ大会などのイベントを行う場合や商品販売を行う場合にも、イベント自体の告知のためにポスターを掲出したり、商品の説明書を作成したり、精神障害についての理解を深めてもらうためのチラシを配ったりするなど、「広報資料」を作成したり配ったり、掲出したりする機会はたくさんあります。資料の作成と配布には4つのステップを踏んで進めていきます。
 
(1)ステップ1:基本方針の作成
 まず、「基本方針」を定めます。「基本方針」といっても、それほど大袈裟に考える必要はありません。目的、ターゲット(伝えたい相手)、目標を明らかにすることです。
 
[1]目的の確認:何のために配布するか?
 資料作りにあたっては、まずそもそもの目的を確認するところからはじめましょう。目的、つまり「何のために資料を作成するのか」は広報資料づくりでとても大切です。たとえば、「イベントのポスターを作る」といっても、イベントにお客さまを集めることが目的とする場合と、イベント会場で作業所の製品を買ってもらうことを目的とする場合では、作る広報資料の中身も配り方も違ってくるからです。以下にあげるのは、目的の例です。
例1)今度予定されている交流事業のイベントにお客さんを集める
例2)作業所の近隣住民に作業所活動を理解してもらう
例3)精神障害者に対して偏見の強くない人々に、病気に対する理解を形成し、潜在的な不安要因を解消する
 
[2]ターゲットと目標の設定:誰に対して、何をめざして配布するのか?
 目的が整理できたら、続いてターゲットと目標とを整理しましょう。ターゲットとは標的、つまり誰に向けた広報資料を作成するか、です。イベントに集客する場合でも、近隣の小学校で配布する場合には子どもを引き付ける内容がふさわしいでしょうし、それは、作業所関係者に来場を促すチラシとは違ったものになるはずです。
 目標とは、達成したいことがらをなるべく数値を使って具体的にしたものです。具体的にすればするほど、的確な資料の作成と配布ができるようになります。
 たとえば、目的が例1)のようなイベントへの動員(今度予定されている交流事業のイべントにお客さんを集める)でしたら、ターゲットと目標とは次のようなものが考えられます。
 
例1-1)イベント会場の近隣3km以内に住んでいる10,000戸/30,000人に対してイベントを告知し、そのうち2%の人たちの来場を目指す
例1-2)学校・教育機関など100校/30,000人に対してイベントを告知し、そのうち1%の人たちの来場を目指す
例1-3)過去にイベントに来て住所を残してくれた2,000人お客さんに対してイベントを告知し、そのうち7.5%の人たちの来場を目指す
 
 このターゲットと目標は、「たくさんの人たちに来てもらう」といった曖昧なものよりも具体的です。このようにしておくと、「広報資料」作成に係わる人々の間で誤解がおこらない、「広報資料」内容や配布方法について判断に困ったときの拠り所になる、あとで効果測定をする際に達成度が明確になるなどのメリットがあります。
 表現や配布方法などのアイディアや問題点ばかりに目が行ってしまって話がまとまらない、思いつきのアイディアに基づいて実施してしまったため思ったような効果が出ないなどは、「広報資料」作成時におこりがちな問題です。実施準備会議のときなどに、基本方針(目的、設定したターゲットと目標)を黒板に書いておくと、会議に参加する人たちがいつも確認でき、このようなトラブルを避けることができます。
 
(2)ステップ2:実施準備
 基本方針が決まったら、次は「実施準備」に移ります。実施準備とは、「広報資料」を「何を使って伝えるか(ポスターなのか、チラシなのか、パンフレットなのかとその配り方)」と、「どのような表現で伝えるか(チラシの内容や記事)」を決め、その準備をする活動です。
 
[1]何を使って伝えるか?
 まずは、設定したターゲットと目標をもとに、「何を使って伝えるか」を決めましょう。たとえば、例1-1)のようなターゲットと目標(イベント会場の近隣3km以内に住んでいる10,000戸/30,000人に対してイベントを告知し、そのうち2%の人たちの来場を目指す)を設定したならば、チラシを全戸配布する、ニュースレターを新聞の折り込み広告に入れる、といったように、使用する手法の候補を挙げ、全体の予算の制約、それぞれの施策を費用対効果の観点から検討し、実際に利用する施策を選定します。
 施策が決まったら、それを実行するための計画を立てます。たとえば、ポスター掲出であれば、何枚のポスターかどこに掲出でき、それを誰がいつ行うかを決め、掲出するメンバーを手配します。また、新聞での折り込みチラシであれば、新聞販売店と相談して、いつまでに何部のチラシをどのように届ければよいか、費用はいくらかなどを計画します。
 そして中身作成にあたっての制約(大きさや紙質など)を明らかにし、中身制作グループに伝えます。
 
[2]どのような表現で伝えるか?
 利用する施策(ポスターかチラシかなど)を選定したら、そこで伝える表現の内容を作ります。そこでは、「ターゲットが誰か」と「使う施策の特性」を考えながらメッセージをつくるとよいでしよう。たとえば作業所の近隣住民にチラシを使って作業所活動内容の理解を求める場合には、読み手がそもそもこちら側が伝えたいメッセージに関心を持っていないことが普通ですので、伝えるポイントを絞り、目につきやすい内容にするとよいでしょう。また、同じ近隣住民をターゲットとした場合でも、ニュースレターを使う場合は、継続的な読者を獲得するために「名物コーナー」となるような連載企画を考える必要があるかもしれません。
 
(3)ステップ3:実施と実施管理
[1]実施管理:実施計画どおりに配布・掲出されているか?
 ステップ2までで、「広報資料」作成と配布の準備ができました。次はいよいよ、実行に移す段階です。計画にしたがって、「広報資料」制作と配布(掲出や発送)を進めます。実施管理の内容は、(a)品質(目的、ターゲット、目標に合致しているか)、(b)予算、(c)スケジュールの3点です。
 チラシの各戸配布ならば、作成について、(a)作成するチラシが目的・ターゲット・目標に合致しているか、(b)予算の範囲で作成できているか、(c)スケジュールどおり進んでいるか、を確認します。配布では、印刷したチラシやニュースレターが、(a)配布したい対象者に配布されているか、(b)協力してくれる人たちが無理なく配布でき、協力者などへの謝礼は予定どおりか、(c)予定した期間内に届いているか確認し管理します。また、問い合わせ先などを記載している場合は、その連絡先で対応ができるよう当番を設けることなども忘れないようにしましょう。
 
(4)ステップ4:評価
 実施が終わったら、それで終わりではありません。活動内容を評価する必要があります。
[1]効果測定:広報資料配布はどこまで目標を達成したか?
 実施した後は、その効果を表す数字を採り、広報資料配布が活動全体としてどのような効果をどの程度もたらしたかとともに、その中のどの部分の活動がどれだけ効果があったかを評価しましょう。
 たとえば、イベント来場者が1000人で、来場促進のためにチラシを配布したりハガキを送ったりした場合を考えてみましょう。その内訳が仮に次のようだったとしましょう。
 
・近隣3km以内の10,000戸/30,000人に配ったチラシを見て600人が来場した
・100校/30,000人の学校に置いてもらったチラシを見て300人が来場した
・過去にイベントに来てくれた人2,000人に送ったハガキを見て150人が来場した
・折り込み広告30,000部のチラシを見て50人が来場した
 
 この場合には、活動の中では、各戸配布と学校・団体への協力要請とが特に大きな効果を持つことがわかります。
 さらに、それぞれの活動にかかる予算をもとに、1人のお客さんにイベントに来てもらうためにいくらかかったかを計算すれば、予算枠の中でどの活動か効果的か、どのような優先順位で行えばよいかが明確にできます。
 ともすれば広報資料は配布をしたら「それで終わり」になってしまいがちですが、限られた予算の中で得られる効果を高めていくためには、数字など客観的な指標で効果を測定することが鍵となります。この結果は、次の活動を計画する際に、たいへん貴重な資料となります。
 
図:4つのステップ
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2)広報資料を使った主な活動
 次に、全家連が行った一次調査の結果に基づき、全国で行われている交流事業の事例を参考に、活動のポイントを整理します。「広報資料」が必要とされる典型的な場合に、どのような使われ方をしているかが分かります。
 
(1)交流事業やイベントへの集客
ターゲットと目標:
近隣住民が主なターゲットになることが多いようです。そのため、地域の学校など教育機関を通じての配布は、効果的・効率的です。
何を使って伝えるか?:
独自の「広報資料」では、チラシ(各戸配布、学校など教育機関、公民館など公的機関)やポスターが中心となります。このほか、地区町村の「広報資料・紙」など、公的機関の広報物に取り上げてもらうことも有効です。
どのような表現で伝えるか?:
まずは来場の動機づけが重要。「広報資料」は、接触体験に導くための「橋渡し」と割り切った方がよいようです。たとえば、第III章にあげた「くるしまフリーマーケット」では、イベントを始めた年には、告知資料に精神に関する啓発情報を出しませんでした。まずは、イベントに集客し、そこで少数であっても接触体験を持ってもらうことを目指します。
 
(2)施設コンフリクト(施設摩擦)の解消
ターゲットと目標:
近隣住民が主なターゲットになります。作業所など施設に対して、人は「何をしているか分からない」ものに対しては、不信感を抱きます。全家連の調査でも、作業所が「何をしているか分からない」と答えた人は、「こわい」「近寄りがたい」「できれば近所にないほうがよい」と考えていることが分かりました。そこで、継続的に活動内容をお知らせし、それを理解してもらうことが目標となります。
何を使って伝えるか?:
継続的に施設の活動内容を伝えるためには、ニュースレター(新聞形式や電子メール、FAXなど)が適切なようです。
どのような表現で伝えるか?:
施設の活動内容、施設で働く人、関係する人がどのような人かなどを、読者が興味を持って読める仕方で伝えます。継続して読んでもらうためには、連載企画を持つこともよい考えです。また、常に新しい「ニュース」、つまり、読者にとって新しいことで知りたいことが含まれていることも大切です。
 
(3)精神障害(者)に対する理解形成
ターゲットと目標:
全家連の調査では、パンフレットを作業所近隣の住民宅に配布した場合、精神障害について強くネガティブな態度を持つ人は、パンフレットに気づかず、気づいても十分には読まないことがわかりました。逆にいえば、精神障害(者)に対する理解形成の広報資料は、偏見の強くない人をターゲットにすることが適当といえます。
何を使って伝えるか?:
パンフレットやチラシなどで「直接に」理解促進を目指す場合と、バザーやフリーマーケットなどへの来場を訴え、そこでの接触体験を促して、「間接的に」理解促進を目指す場合とがあるでしょう。
どのような表現で伝えるか?:
「直接的」な理解促進を目指す場合には、相手の警戒を解き、興味・関心を引き出すことがまず必要です。「精神障害」に関する広報資料は、「心」の問題を扱っています。そこで、残念ながら、読者から「怪しい」と見られてしまう危険があります。そこでまず、警戒心を解く必要があります。さらに、内容に興味・関心を持ってもらわなくてはなりません。私たちが、新聞や雑誌を読むときにも、「この記事を読んで何か役に立つことがあるのか」「この記事は面白そうか」などを、見出しやリード文、図や写真で判断してから本文を読みます。広報資料も、読者が「読んでみよう」と思わせる工夫が必要です。
 たとえば、全家連の啓発事業では、著名な作家にエッセイをお願いしたり、「マンガ」や、心の問題に関する「自己診断票」を使用したりという工夫をしました。著名な作家の記事が載っていることで警戒心を解き、「マンガ」や「自己診断票」を使って興味・関心を喚起しています。








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