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3.交流事業による活動
1)啓発交流事業の意義と内容
 前節では、パンフレットなどの情報媒体を利用した啓発活動について述べましたが、本節では交流事業の活動についてお示しします。ここでいう交流事業とは、精神障害者に関する施設や団体が、精神障害者への理解の促進を目的として、地域住民に参加してもらうイベント事業をさします。交流事業は、様々な内容をふくむものですが、主として[1]接触体験の場の提供、[2]関心に合わせた情報の提供、[3]事業を通じた地域社会との関係作り、の3つの要素に大別することができます。以下では、まず、それらの内容がどのような意味で必要なのか、どういったことを目的とするのか、そしてどのようなことに留意する必要があるかを説明します。
 
(1)接触体験の場を作ること
 接触体験の場を作ることとは、精神障害者と一般の市民が、良い状況で情緒的に触れ合える場を提供することです。
 全家連が1997年に行った市民の精神障害者観に関する研究では、精神障害者に対するイメージは、マスコミなどの影響もあるものの、具体的な特定できる誰かを通じて形成されることが多く、また一度抱いたイメージが変化する際には具体的な個人との接触が契機となっていることが最も多いことがわかりました。パンフレットなどを用いた間接的な情報提供だけではなく、精神障害者と情緒的な触れ合いをすることが精神障害者観を改善する上で大きな影響力をもつといえるのです。
 しかし、精神障害者は見た目からすぐに障害者であるとはわからないこと、社会の中で精神障害者と市民が出会う場そのものが少ないことから、平素の日常生活の中で精神障害者と人々が触れあって理解を深めることはむずかしいという現状があります。交流事業を行うことを通じて、そのような精神障害者と触れ合う機会を増やすことは、精神障害者に対する肯定的なイメージを形成し、精神障害者が遠い"彼ら"ではなく、"われわれ"の中の一人であるという認識をもってもらう上で、大変効果的であると考えられます。また、当事者自身についても、交流事業の中で人々と触れ合う機会を増やし、社会参加を促進される中で、QOLや「受け入れられる」という自信が高まっていくことが期待されます。
 こうした接触体験が偏見解消により有効にするためには幾つかのポイントが存在します。第一に、精神障害者と人々が、できるだけ同じ市民としての対等な立場で接することが重要であると考えられています。こうした対等な立場が、同じ「われわれ」としての認識を生むからです。こうした対等な立場で接するためには、一緒にゲームをする、あるいは共同で物を作る、一緒に何かを練習するなど、市民と障害者が協力して何かの目的を達成する「協同作業」を取り入れることが有効であることが知られています。こうした協同による作業は、障害者が、人々とあまり変わらない作業の能力をもっていること、また一緒に作業をやっていく能力があることを人々が感じることが出来るからです。
 第二に、こうした接触は、できるだけ親密で和やかな関係の中で行われると、より効果があると言われています。ビジネスライクな会話よりも、障害者と人々がくだけたおしゃべりをし、情緒的な触れ合いができるようにすることが大切なのです。
 第三に、接触体験を行う際には、人々のステレオタイプから過度にかけ離れた障害者と触れあっても、効果がないという指摘がされています。例えば、過度に能力が高く社会的にも成功している精神障害者と人々が触れあっても、「たまたま、それは例外的な人であって、精神障害者の一般的な姿ではない」という認識を生むだけであるというのです。持続する症状とたたかいながらも地道に生活している姿で、気負わずに触れ合うことが、よい効果を生むのかもしれません。また、こうした体験は勿論、参加者の不安感や恐怖感をあおらない、穏やかな雰囲気の下で行われることも大切です。
 なお、こうした接触体験の場を設ける際には、比較的症状が安定している人であることが、当事者の心理的な負担という面でも大切なことでしょう。
 
(2)こころの健康に対する関心にあわせた情報提供
 近年こころの健康・精神保健福祉に対する関心は、青少年などの問題を高まりつつあり、これらに関する正しい情報の需要が高まっているといえます。しかし一方で、精神障害者に対する理解が必ずしも深まっているわけではなく、偏見や無関心などに繋がっていることも否めません。啓発活動を行っていく際には、一様ではない精神障害者によせる理解や関心の程度に合わせて情報提供を行う必要があるといえるでしょう。そういった点で、交流事業は市民の様々な態度に対応して多様な効果を与える可能性をもっています。
 また、当事者自身が交流事業を通じて情報提供に関与することは、信頼できる正しい情報を提供するという点や、自分たちの希望する情報を自由に流せるという点で、非常に意味深いものです。自ら情報を発信し自己主張することは、社会の中での市民権をえることにも通じます。
 
a.身近な問題だと気づいてもらうきっかけとして
 地域の中には、こころの健康や精神障害に関する問題は自分と縁遠いものであり、あまり関心はないという市民が少なからずいます。そういった市民にいきなり精神障害者への援助や偏見の解消などのメッセージを伝えるのはむずかしいでしょう。しかし交流事業を通じて、地域の中で暮らしている精神障害者の姿を交流事業を通じて見てもらうことによって、障害者は病院などにいるどこか縁遠く疎遠な人々ではなく、ごく普通に身近にいる存在であることに気づいてもらうことはできるでしょう。そのことが偏見や差別の解消の第一歩になると思われます。また、未だ精神障害者に対して具体的なイメージを抱いていない、学校の児童・生徒などの青少年に対して、こころの健康に関する授業や精 神障害者との交流会を行うなども、可能性のある事業であるといえるでしよう。
 
b.まず自分自身の問題から考えてもらう
 こころの健康や病気に対する関心が近年高まっていますが、その関心の多くは、青少年問題や学校精神保健の問題などに代表されるように、自分自身や自分の子供の問題としてのこころの健康への関心であるといえます。このような市民に対しては、他人である精神障害者の差別や偏見を解消しよう・障害者への援助をしようという「他人志向」メッセージよりも、自分自身の問題としてのこころの健康や病気に関する「自分志向」の情報の方が比較的受け入れられやすいと考えられます。
 交流事業において、市民のこころの健康に関する講演会を行うなどして、まず自分自身の問題から考えてもらう場を提供することは、多くの市民に精神の問題に関心をもってもらうための効果的なアプローチであるといえます。またそこで自分の精神の問題について深く考えてもらうことは、ひいては他者である精神障害者を受け入れようという気持ちを高めることにもつながると考えられます。
 
c.関心のある人々には関わりのきっかけとして
 近年、福祉やボランティアに関心をよせる市民も多くなってきました。しかし精神障害者は医療対象であると長年位置づけられていたため、福祉の援助対象としての精神障害という認識が、他障害と比べて十分に広まっていません。また、精神障害者に対して何か福祉的なボランティアをしたいのだけど、どこにいけばわからないし、どんな援助をすればいいのか分からない、という人もいます。
 交流事業の中で、一日ボランティア体験の機会を提供することや、ボランティア養成講座をすること、あるいは交流事業の運営そのものへのボランティアを募集することで、こうした関心のある人々を、具体的な援助者として育成することも、効果的であると思われます。
 
d.悩んでいる人への助けとして
 地域の中には、精神障害にまつわる悩みを抱えているにも関わらず、それが病気であることを本人や家族が知らなかったり、医療機関や保健・福祉機関の存在を知らなかったり、偏見を恐れてどこにも相談できず悩んでいる人々が、まだまだ潜在していると思われます。こうした人々に対して、病気の内容や、医療や保健福祉のサービス機関の存在・窓口の情報を提供していき、悩んでいる人が悩みを一人で抱え込まないような街づくりをしていくことも大切なことでしょう。本ガイドラインは基本的に、偏見にまつわる問題を念頭にして書かれていますが、実際に悩んでいる人を対象にした情報提供も、精神保健福祉に関する地域全体の啓発という観点からは見過ごせない要素といえます。
 
(3)地域の人々との連携・ネットワークづくり
 交流事業は、それを成功させようとすると、実施する中で様々な人々の協力を必要としてくるものです。費用の調達、交流事業の開催を知らせるためのポスターやチラシの配布、ボランティアの募集、会場や資材の供与など、、、、様々な準備を単一の施設だけで行っていくのは大変なことです。むしろ準備・運営段階から、積極的に行政の責任者や市民団体・教育機関・医療機関・町内会・民生委員・ボランティア・近隣の住民など、他の多くの人々を巻き込んでいくことが、より充実した活動を可能にしていくようです。
 まず、そうした地域の人々と顔見知りになることが大切です。直接交流事業を実施する中で協力を依頼することを通じて知り合うのもよいですし、既に存在する地域活動(福祉活動やボランティア)などを通じて顔を知るところから始めてもよいでしよう。
 そして協力を依頼する過程を通じて、交流事業の趣旨を十分説明したり、また精神障害の問題とは何かを学んだり、そして一緒に啓発活動とは何かを考えたりすることを、少しずつ進めていきましょう。交流事業はそれを実施することによって啓発的な効果を狙うものですが、実は、準備や運営段階においてこうした様々な人々と出会い、ネットワークを作っていくことが、既に人々の理解を深める啓発的な活動となっているのです。そして、こうした人の繋がりの輪を、事業を何回も繰り返す中で少しずつ広げるようにしましょう。
 精神障害に関係する施設や、精神障害者同士のコミュニティは、周囲からの偏見や差別などともあいまって、地域社会から孤立しがちです。交流事業を行うことは、それを実施していくまでの活動を通じて、精神障害者の地域社会への参加を促進する意味合いがあるといえるでしよう。
 
 なお、以上のような交流事業の要素の全てを、一つの交流事業だけで必ずしも満たせるものではありません。例えば、関心が高い人の知識の増進を活動の目的としていけば、関心の薄い人は対象外になり、働きかけられる人数の規模は少なくなってしまいます。また、接触体験を優先させれば、その分情報提供がやや乏しくなるかもしれません。とはいえ、もし一度の事業に全ての内容を盛り込もうとすると、プログラムが長くなりすぎて誰も参加しなくなってしまうでしょう。
 必要なことは、広報資料の配布の場合と同様、交流事業の中で、どのような人々をターゲットにしていき、何を目標としていくか、を検討することです。精神障害者に関心をあまり持っていない人に、少しでも関心を持ってもらうことを目的とするのか、関心を持っている人の興味や理解を促進していくのか。対象とするのは、若い人か、それとも成人なのか。活動主体や地域の現状などを踏まえ、何を目的とし、地域の中のどのような人々を対象として選んでいくかによって、優先される要素は決まってくるでしょう。
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2)交流事業の実施方式
 
 交流事業に際して、その主体をどこに置いて実施するかには幾つかの例が考えられます。
 
(1)施設が独自に実施する方式
 施設が独自に場所や人員をすべて用意して行う方式です。メリットとしては、施設に関する情報の提供など、施設や精神障害者そのものに焦点をあわせた事業が可能なので密度の濃い内容にしやすく、施設の深い理解という点で成果を期待できること、自立的な運営ができることなどがあげられます。反面、労力が多くかかる、また交流事業の存在や市民の参加が呼びかけにくく参加者が少なくなる可能性があるなどのデメリットがあります。
 実質的には、単独で実施する際には、出来る限り多くの他の組織(行政や町内会など)などを巻き込んでいき、入念に準備を行うことが交流事業を十分に成功に導くためには必要といえるでしょう。連携のあり方には、物資や人員・場所の提供など間接的な連携があります。また、独力での実施に困難がある場合には、運営委員会を設置し、多機関の人員に委員になってもらい、運営主体として直接的に参加してもらうことも有効でしょう。
 
(2)学校精神保健との連携
 こころの問題への関心の中でも、青少年の学校精神保健への関心は、市民の中でも大きなものとなっています。とくに近年、小・中学校の教育課程には、子どもたちに自ら学び自ら考える力や学び方やものの考え方などを身に付けさせ、よりよく問題を解決する資質や能力などを育むことをねらいとして、新たに「総合的な学習」の時間が組み込まれました。そのため、こころの教育やボランティア活動に関心をよせる学校も多くなっています。こうした学校側のニーズに対して、地域精神保健の施設が積極的に啓発的な取り組みを提供していくことは、双方にとって有意義なことであると考えられます。また人を集めることが必要な場合でも、生徒や父母に直接参加を呼びかけられるため、学校はこころの問題についての影響力のある交流事業を行う場所として大きな可能性を秘めています。
 具体的には、カリキュラムの中にボランティア体験や精神保健に関する授業を取り込んでもらうなど直接的に交流事業を実施してもらうことや、学校を通じて交流事業の開催の報知をしてもらう・会場や人材の提供をしてもらうなど間接的な協力関係を結ぶ、などがあります。
 
(3)地域行事との連携
 自治体の文化祭やフェスティバル・季節の祭など、既にたくさんの人が集まる地域行事がある場合、そのような行事に参加し出し物を催すことで、交流事業を行うという方式もあります。デメリットとして、行事全体に紛れて精神障害者に関連する組織が行っている出し物であるということが認知されにくい、接触する時間が短く、深い交流や理解までに至らない可能性がある、などがあります。しかし、比較的少ない労力とコストで多くの人と接触できることがメリットです。多忙で人員の少ない施設には有効な実施法式だといえます。また、催し物の主体は行政や地元町内会などが多く、すでにそれらとの関係が成立している作業所では、援助や協力をスムーズにうけやすいといったメリットもあるかもしれません。
 
 なお、こうした交流事業の運営上で大切なのは、交流事業の実施を単発で終わらせたり、ルーチンワークにしないことです。最初の数回の試みでは、人が集まらなかったり、偏見解消の十分な手ごたえは得られなかったりするかもしれません。しかし、そこで交流事業を放棄せずに、実施後の反省会・検討会を行い、交流事業をよりよくするプランを練り、長期的・継続的に事業を少しずつ改良・発展させていくことが大切でしょう。
3)実施内容
 ここでは交流事業の具体的な内容について、幾つかの例示をしていきます。しかし、これらの例は、その単一の例だけを実施しただけでは、交流事業として十分ではありません。ここであげる一つ一つの例は、扱える内容・対象となる人の関心の程度・扱える対象者の数に、各々長所と短所があるからです。
 一つの内容だけを実施するのではなく、幾つかの例を複合的に併せて交流事業として実施していくことが望ましいと考えられます。なお、本ガイドラインであげる例のほかにも、募金やコンサートや映画・演劇活動など様々な実施内容が考えられます。
 
a.物品の配布や懸賞
 飲食物なとの物品を無料配布したり、企業の協賛を募り景品を集めて参加賞や懸賞を行うなどします。関心の程度をとわず多くの地域住民を集めることが期待できます。物品に、精神障害や施設に関する内容を掲載したパンフレットやチラシを添えておくなどしてPR効果をねらうことができます。それを内容の主体とするというよりも、交流事業に人を集めたいときに、副次的に使うことが適当といえるでしょう。
 
b.バザーやフリーマーケット、野菜市の開催・自作製品の販売
 最も多く見られるイベント交流の形です。バザーやフリーマーケットの開催や、日頃作っている野菜や果物を市場で販売します。また作業所なと施設の製作物の販売を行います。比較的関心の薄い市民にも集まってもらいやすく、集客効果があることと、売り手と買い手という関係の中で、精神障害者と地域住民に触れ合ってもらいやすいといった面もあるでしょう。物品の販売とともに、施設の活動内容の紹介を行えるといった利点もあります。また、調査によると様々な催しの仲でもバザーは、住民もニーズが高く、参加しやすい行事であることが分かっています。他方、フリーマーケットは多くの出展店舗数を確保することができれば、バザーや施設の製作物の販売よりも多彩な品数を多くそろえられるため、大規模な集客が期待できるようです。野菜市などは生活のニーズに合う、欠かせないものですので良いものを安く提供できれば、更なる集客にも効果が得られます。これらの活動は収益にもつながり、成功すれば一石二鳥といえます。
 
c.スポーツやウォークラリーなどレクリエーション交流
 一般の人が参加しやすいレクリエーションを企画して交流を行うイベントの形の一つです。劇や紙芝居、ボーリングやゴルフ、ウォークラリー、みかん狩りなど精神保健福祉への関心の低い人でも参加しやすいようなものにすることを目指します。準備にコストがかかりますが、プログラムがもつ明るいイメージで、精神障害者に対する肯定的なイメージを抱きやすくするなどの効果が期待できます。
 また、既に述べたように、共に何か作ったり、協同で何かを作業したりすることは偏見解消に高い効果があることが分かっています。精神障害者と市民が協同で作業をするようなゲームを行うなどして、触れ合いを得ることは偏見解消に非常に有意義だといえるでしょう。
 また、季節の行事、臼と杵を使ってついた餅つきや、そうめん流し、夏祭り、キャンプなどは毎年恒例の事業として、町の人に愛される行事でもあります。これらを企画し、準備段階から市民と協力を取り合うことで、対等な立場でふれあう機会が持てるでしょう。のど自慢やコンサートは、出演したい人、見学したい人の両方あるので、幅広く参加を呼びかけることが出来るイベントです。
 
d.ボランティア体験・施設めぐり
 精神障害者への1日ボランティア活動や、施設の見学会やツアー、ボランティア講座などを行います。対象は精神障害(者)に関心が高い人に限定されますが、より深い認識の変化をもたらしたり、地域での援助者を育成することができるでしょう。なお、こうしたボランティアを育成する試みの場合、その後に具体的に活躍の場や仕事の機会を提供する用意をしておくなど、育成したボランティアをどのように活かすか、育成後のフォローアップを計画段階から立てるようにして、「育成しっぱなし」という状態にしないことが非常に大切です。
 
e.講演会の開催
 地域住民の中には逆に、精神保健福祉に関して、より理解を深めたいという人もいるでしょう。そこで、精神保健に関する講演会を行って地域の人々に関心や理解を深めてもらうという事業を行うという手段もあります。講演には精神保健やこころの問題に関する著名人などを起用する方法があります。集客という面では、学校精神保健や子育てに関する内容、高齢化が進んでいる地域では老人精神保健に関する内容などが市民のニーズがあるでしょう。講演の目的と対象層にそって、主題や、日時・場所、広告などを工夫してみましょう。
 
f.陶芸教室や、絵画作品展の日頃の技術を活かした教室
 これまでの例は比較的大型のイベント的な交流事業を想定していますが、日頃行っている生活の中で得られる技術で、陶芸や絵画、工芸の作品を展示したり、または教室を企画することが出来ます。日常の技術を公に見せる場を作ることは、見る側だけでなく、作品を作る側の志気も高められ制作活動の意欲が湧いてきます。技術を一般の人に提供することは、当事者・関係者が「提供する側」としての役割を取ることができるばかりでなく、市民が当事者のポテンシャルを見いだす場にもなります。
 
g.地域の行事に参加する・地域に役立つボランティア活動をする
 地域に密着した事業を行いながら施設の紹介をすることも出来ます。地域の一人暮らし老人向けに弁当の宅配を行ったり、なんでも屋を行う事は収益確保にもつながり、高齢化を見据えた地域還元的な事業の一つです。さらにもっと気軽に住民同士のふれあいを提供する場所として、施設のフリースペースを提供して気軽にたちよってもらい、お茶を飲んでもらうだけでも、施設の紹介ができます。
 しかし、大規模な活動を展開するにはまだパワーが少ない、という施設もあることでしょう。そうした場合には、地域の様々な行事に積極的に参加するようにしましょう。また、地域の清掃活動や高齢者・他障害への援助など、地域にあるボランティア活動に積極的に参加していくことは、地域社会に貢献していくよいチャンスです。施設が地域から遊離するのではなく、地域にとっても施設が必要な存在となるよう心がけることが、地域に施設を根ざすようにするには大切なことです。また地域の人に挨拶をするようにするだけでも、きっと成果のあることでしょう。特別なことではない、こうした地道な活動もまた広い意味での啓発活動なのです。
 
h.学校との交流
 他の交流事業が幅広い年齢層に働きかけるのに対して、学校を対象にした交流は、年齢層が低くまた限られた層に働きかけられるという点に特色があります。小・中学校へ精神障害に関するポスターを公募して作品を呼びかけ、良い作品を町や公民館など協力を得られるところに貼りだす、実際に当事者・家族、関係者が学校へ出かけていってそばうちや踊りを通して交流を行う、などの実例もあるようです。また、これまでe〜gにあげてきた例を、学校と連携して行う、という手段もあるでしょう。偏見が形成される前に偏りのない正しい教育を提供できることは、今後の長期的な視点で見ると大きな効果が期待できるといえるでしょう。
4)交流事業の宣伝
 交流事業を成功させる上では、十分に交流事業を報知することも非常に大切です。地域の人々の中に交流事業へ参加してもよい、と思っている人がいても、交流事業がいつ・どこで行われるかを知らなければ、参加者は十分には集まりません。加えて、全家連の調査では精神障害者小規模作業所で交流事業を行った場合、近隣住民の中で交流事業の実施を知る人の数は1割程度、参加する人は住民全体の2〜3%である、という結果が出ています。出来るだけ多くの人に対して交流事業の存在を魅力的にアピールすること、そして十分な人を集めるには千人単位の人々を対象にして広報活動を行う必要性を示す結果であるといえます。逆にいえば、交流事業の存在を知り参加してくれる人は地域に確かにいるのですから、十分な宣伝活動を広く行っていけば確実に人は集まるということなのです。具体的には以下のような方法が考えられます。
 
・交流事業についてのチラシを作成し、近隣区域の全戸に対し投函配布する。
・自治会の掲示板などにポスターを貼らせてもらうという手もあるでしょう。
・行政やタウン誌に依頼をし、自治体広報やタウン誌に開催を知らせる記事を載せてもらう。広報やタウン誌と共にチラシを配ってもらうことも可能です。
・町内会や地区の子ども会、スーパーなどに協力を頼んで、それらを通じチラシを配布する。
・幼稚園や保育園、小・中学校、医療・福祉系教育機関などを通じて、チラシやポスターを配布する。
※こうしたチラシに景品などの引き換え券をつけておき、人を集めるアイディアもあるでしょう。
・地元の放送局やケーブルテレビ、新聞社などマスメディアに報道支援の依頼文と簡潔な資料を送り、また電話などで重ねて連絡するなどして、報道機関を通じて交流事業の詳細を伝えてもらう
 
 啓発交流事業というと、理念や理想が先行し、集客や報知活動については軽んぜられがちですが、参加してくれる人がいてはじめて啓発活動が成り立つと言えます。交流事業の地道な報知活動も、精神障害者の問題をアピールする啓発活動の一環として考え、積極的に展開しましよう。








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