6.精神保健福祉啓発活動とは
1)精神障害に関する偏見の要因
精神保健福祉啓発活動とは、心の病気や精神障害、あるいは、精神障害者と呼ばれている方たちに対する偏見を除去・軽減するための啓発活動です。その詳細な方法論については、次章で具体的に述べることとして、ここでは、上に示した精神障害にまつわる偏見の特異性をふまえながら、それを揺さぶるための方向性について、最小限の確認をしておきましょう。
先に述べたように、精神障害にまつわる偏見を作り出している最大の要因は、つまるところ、精神障害が見えないことです。見えないからこそ、世代を越えた遺物のような偏見であるにもかかわらず、いまだに形を変えることなくそのまま再生産されざるをえないという状況がまずあります。そして、通常は見えないにもかかわらず、たまに浮かび上がってくるのが事件報道などを通じたショッキングな情報に偏っているため、実状にそぐわない偏見であっても強化されこそすれ変容を被ることはないというわけです。
2)基本的な方向性
とすれば、精神保健福祉啓発活動の基本的な方向は、いかにして精神障害を見えるものにしていくかということになりますが、精神障害が見えないというのは、二つの意味を持っています。一つは、精神障害というカテゴリーの属性が見えない。すなわち、精神障害とはどういうことを指しているのかがよくわからないということです。そして、もう一つは、精神障害をかかえている人々の個別具体的な姿が見えない。精神障害をかかえている人々とは一体どういう人なのかがわからないということです。こうした見えない状況の中で事件だけがクローズアップされた結果、こういう事件を起こすような人を精神障害者と呼ぶんだ、だから、精神障害者と呼ばれる人たちもまたこういう人と一緒なんだといった不当な一般化が行われているわけです。
3)精神保健福祉啓発活動の基本的な戦略
そのため、このような社会状況を揺さぶるべく啓発活動のとるべき戦略は、まず、精神障害とは何なのかということをわかりやすく提示することであり、その上で、精神障害をかかえている人々と直に触れあってもらう場を作っていくことになります。
本章の最初にふれましたが、啓発活動は、大きく三つの活動から成り立っています。教育的な広報活動、自己学習のサポート活動、偏見の除去・軽減を目指す活動です。その際にも述べたように、これら三つの活動は相互に密接なつながりをもっていますが、強いて対応させるとすれば、精神障害のカテゴリー属性を明示することは広報活動や偏見の軽減を目指す活動で主として取り扱われ、直接触れあってもらうことが自己学習のサポートや同じく偏見の除去につながるものといえます。