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I章.啓発活動の意義
1.啓発活動とは
1)啓発活動の内容
 啓発活動とは、辞書的にいうと、これまで知らなかったことに対して知識をもってもらうこと、すなわち、知ってもらうことを目指す活動のことです。そのため、何らかの情報を広く行き渡らせる広報活動をその基盤としています。
 しかし、たとえ人が何かについて知っている、あるいは、聞いたことがあるとしても、その理解の仕方が偏っていたり、非常に狭い捉え方になっている場合もありますし、さらには、もっと詳しく知ってもらったり理解してもらうことが望ましい場合もあります。そのため、啓発活動は、広報活動よりもさらに広い内容を含み、ただ情報を広く伝えるだけにとどまらず、その情報についての捉え方や理解の仕方を場合によっては修正したり、あるいは、もっと深めてもらうといったことをも目指しています。
 
2)三つの活動
 したがって、強いてわけると、啓発活動には三つの活動が含まれていることになります。
 
[1]教育的な広報活動
 一つは、あることについて、まったくあるいはほとんど知らない場合に、一定の基本的な知識や情報をわかりやすく提供すること。すなわち教育的な広報活動です。
 
[2]自己学習のサポート
 また、二つ目は、あることについて、一定の知識をもち、理解の仕方もとりわけ偏っているわけではないけれど、さらにその知識を拡げ、理解を深めてもらうことです。この活動は、基本的に本人の自主性に基づいて継続的に行われるもので、自己学習をサポートする活動ということになります。
 
[3]偏見の除去・軽減
 三つ目は、あることについて、本人は知っていると思いこんでいるのだけれど、それが偏っていたり、間違っている場合に、それらを修正していくことです。
 あとでふれますが、おそらく、啓発活動の重要性と困難さは、この三つ目の活動にあります。
 
3)三つの活動の留意点
 啓発活動に含まれるこうした三つの活動について、その留意点をあらかじめ整理しておきましょう。
 
[1]教育的広報活動の場合
 まず、一つ目の広報活動については、情報や知識をできるだけわかりやすく伝える工夫が最も重要ですが、そのためには、対象者をどのように限定していくのかといったことを事前に検討しておく必要があります。しかし、一般的にいって、知らないことについての情報や知識は、それがわかりやすいものであれば、それほどの抵抗もなくスッと伝えることができます。したがって、間違った情報や偏った知識を持つ前に広報活動を展開した方が効果的であるということになります。今後は、中学や高校での教育場面における啓発活動ついても検討が必要となるでしよう。
 
[2]自己学習サポート活動の場合
 また、二つ目の自己学習サポート活動については、関心を持ち続けてくれる人々が対象となりますから、その範囲はいくらか限定されますし、その人のもつ関心の所在によって内容を柔軟に変えていく必要があります。そのため、この活動を一般化して論じることは容易ではありませんが、ただ言えることは、関心を持ってくれる人々がいつでも参加できるような開かれた場を可能な限り用意しておくことが大切だということです。あとは、一人一人の自主性を尊重し、その人の関心に応じて個別的に対応していく柔軟性も必要とされることになるでしょう。
 
[3]偏見の修正活動の場合
 さらに、三つ目の思いこみを修正する活動ですが、たとえそれが間違っていても、偏っていても、一旦本人が知っているものと思いこんだ場合に、それを修正することはなかなか容易ではありません。本人が知っていると思いこんでおり、しかも、それが偏っている場合に、その偏りを修正することはゼロから知識や情報を伝達するよりもはるかにむずかしいものです。そして、こうした偏った思い込みやものの見方、それを偏見と呼びます。したがって、啓発活動の三つ目の活動は、偏見を除去あるいは軽減させることを目指した活動であるということになります。
 
4)三つの活動の関連
 このように、広い意味での啓発活動には、情報や知識を伝えていく広報活動、自己学習をサポートしていく活動、偏見の除去や軽減を目指す活動が含まれています。もちろん、実際には、ある活動がこれら三つのどれに分類されるのかを厳密に確定することは困難で、それぞれが少しずつあるいは大きく重なり合っているものです。たとえば、知識の提供は偏見の軽減につながるでしょうし、偏見が除去されることによって、自己学習の意欲が増大することにもなるからです。三つの活動はそれぞれ相互に密接なつながりをもっているのだといえます。
 
5)偏見の除去・軽減活動の重要性
 とはいえ、三つ目にあげた偏見の除去・軽減こそが啓発活動の根本であると位置づけてかまいません。というのも、そもそも啓発活動とは、多く人々が偏見をいだくような事柄に対してこそ行われるものだからです。そういう意味では、広報活動や自己学習サポート活動も偏見の形成をあらかじめ防いだり、継続的に修正していく機会を作り出す活動と位置づけ直すこともできます。
 いずれにせよ、啓発活動が目標として見定めているのは、人々がいだく偏見です。偏見の除去が啓発活動の最終目標となります。では、その偏見とは一体どのようなものなのでしょうか。








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