「パイロットの年齢制限」 飯久保 郁弥
ICAO条約付属書の「標準、勧告」により、商業航空(ライン)のパイロットの年齢制限は60歳未満とされています。従って60歳以上の場合、国際線定期、不定期の有償飛行の業務はできず、副操縦業務もつくべきでないとされています。
但し、(国内線に関してはこの規定の適用は受けず、各々の同にて特別に定めているようである)このため、各国はこの、ICAOの「標準、勧告」に基づいてきましたが、一九八○年代になって欧州主要国や日本において、国内法令、通達の改正により、条件つきで年齢用件の延伸が認められ、この結果、航空会社はパイロット不足の解消と彼らが持っている豊富な経験と、知識を有効に活用できるようになり、それに二〇〇〇年二月の航空法改正に基づく受給調整規則(地域航空)の摘発によって、コミューター航空にも事業拡大の活路がひらかれ、定期航空に位置ずけられたこの種の会社でも、自社養成以外から大手国際線のリタイヤされたパイロットを確保できるようになり、何とか間に合うようになったようである。
しかし、定期航空に位置ずけられたコミューター航空は従来にもまして運航の安全確保にむけて不断の努力をおこなうことが強く求められることとなり、それに、搭乗可能数が少ない機材による運航によって単位当たりの運航経費が高いため、経営基盤が弱いこれらの会社は予備の乗員の確保には余裕がないようである。
元々座席数の少ない小型機に、大型機と同様2名のパイロットが必要なため、乗員のコストの適正化を図られなければこれから生き残れないのではないか。
今後の航空界の展望においては、今までのような経営手腕では大手航空会社も生き残りは難しく、乗員のコストの適正化を考えなければならないであろう。その為にも更に規制緩和をおこない、国際線は63歳、国内線は65歳と年齢制限の延長を提言したい。国際線はICAO条約があるので今すぐとはいかないが、国内線の65歳は規制緩和のみであり、早急に実現可能と思われるが?
日本におけるパイロットの年齢制限は現在63歳未満で、殆どの人が60歳で大手航空会社を定年退職して、コミューター航空に移籍(現役時と異なる給与水準)し運航の安全性の確保に多大の効果をもたらしているようである。しかしながら機種移行などの訓練の為、1年程度を要してしまうため実働可能期は、2年間程度になり、延長されたメリットが生かされている状況とはいえません。
最近ではICAOに(60歳未満)とされた当時と比べると、平均寿命も健康状態も格段に改善されているので、加齢乗員に不可検査の実施を義務づけて、年齢の延長をしてはと、ユーロ圏からの展望が強くなされているので期待できる。
主要国のパイロット年齢制限についての現状を調べてみよう。
米国
60歳未満であるが、早い時期に年齢制限の緩和の動きあり、連邦航空局で検討中ですが全米乗員組合が反対してるため、今後の展開に注目。
英国
65歳未満、一九八一年に20トン以下の小型機を操縦する場合、65歳未満に延長。しかし加齢者は250時間以上の乗務経験の副操縦士を伴い、機材はターボプロップ機に限定されるため、その後改訂され機種にかかわらず65歳未満に。
ドイツ
65歳未満で大まかには英国と同じようである。
フランス
60歳未満、細かいことはEU規制に準じているようですが、いずれ65歳未満に延長される。
カナダ
米国と同じであるが、やはり延長に前向きであり、65歳未満を検討している。
以上のとおり主要国の年齢制限は延長の方向に向かっているようですが、いずれにしてもパイロット個人の自己健康管理がなされていないことにはいくら延長されても意味が有りませんので、皆様も健康には注意して下さい。