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「物件投下」  飯久保 郁弥
 
 物件投下、これらは赤十字飛行隊の十八番、皆様方はこの日のために日夜訓練に(日夜とは少し大げさかな)励んでいることと思います。災害はいつ起こるか解らないので、いざ鎌倉に成果がなければこんな無様なことはありません。このような事のないように今後も安全第一として訓練に精励してほしいと念じています。
 この物件投下(空中投下)、空爆も含めて今回ほど地球上でのメディアをにぎわし、驚いた事に私の孫(小学生)までが話題にしていた事でした。米、英の軍隊がアフガニスタンの実効支配勢力タリバンの軍事施設などを対象に空爆と並行してアフガン国民向けに食料を空中から投下しているという今までにない異例な行動であり、この展開にはいささか驚かされました。
 通常、戦争に伴う人道援助は戦争が終わり戦災地の復興が始まった段階で行われるのでありこれが今までの考え方なので大勢の方が首を傾げるのもうなずけます。
 メディア等で、軍事問題に詳しい専門家や、識者なども「ある国の政府を倒そうとしている最中に、そこの国民に食料を供給しようとする作戦など聞いたことがない」と言い、また、アメリカでもこの作戦には異論があり、これを決めるまでには紆余曲折したようであるが、最終的には「アメとムチ」の作戦に大統領がサインしたようである。
 米国、英国がここまで、食料投下にこだわるのは、アフガニスタンの不安定な政情で二十年間以上の内戦が続き、又、三年間の干ばつ続きで危機的な状況にあり、テロ事件が発生する前から、世界食料計画の一環としてアフガニスタンの難民に援助していたいきさつもあり、ここで中止したら人道上で非難されることの心配もあるが、それより「人道」より「心理戦」の要素が強いようで、食料投下は人道援助より、タリバンから人心を離反させるための心理戦の道具という方が本音であると思われます。
 このように戦争にはその時々の駆け引きは当たり前で、このことの良し悪しにより戦果は決まるものであり、この記事が掲載される時期には決着しているであろうとおもいますが、又してほしいと願ってやまない。
 さて、爆弾やミサイル投下と違い、GPSやレーダーの助けもなく、難民の所在する場所にかってない高高度から正確に投下する作戦、この任務を遂行した乗員達の卓越した技量には真に敬服します。
 作戦を指揮した空軍大佐が帰還したドイツの空軍基地でのインタービューでテレビ画面に向かっての第一声が「とても地味な作戦で困難な任務であり、参加した兵士に感謝したい」との言葉、いまでも脳裏に残っています。
 しかし、品物がはたして難民に行き届いているかとの確認は今現在ではなされていなく、国連の難民支援のスタッフは懸命に情報収集に努めているようであるが、噂ではタリバンの兵士が毒入りと宣伝して焼いたとか、兵士達が奪い食べているとか、あまり難民に対しての効果が無いようにもかんじられることはまことに残念なことで、苦難を乗り越えた末の投下作戦に参加した兵士達の士気が低下せぬかと心配せずにいられません。
 この種のテロはどこにも潜在しており、我々のすぐ近くにもいるかもしれず、恐ろしい世の中になったことは、実に嘆かわしいことである。
 平和呆けに慣らされた我々日本人には、これらの危機意識に疎いため今回は良い薬になるとよいのであるが、政府も今回は国内警戒態勢の強化を素早く起こし、各方面に指示し、航空機に関しては空港の保安体制強化が叫ばれ、皆様にも何らかの指示があったことと思います。愛機がテロに取られ何らかの凶器に使われないよう常日頃の管理には気をつけて下さい。
 物作投下は戦時でなく、自然災害時にのみに活動するもの、この自然災害もいつ襲うかも解りません、この日の為にも「心身共に健全であれ」源田実初代隊長の残した精神を受け継いで物件投下訓練に励んでください。
 いざ鎌倉に遅れをとらぬように








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