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「E・M・T」
Emergency Maneuver Training
Rich StowellのEMT (Emergency Maneuver Training) No.9
鐘 尾 みや子
 
第3章ロール、ヨー、ピッチ(その4)
【2次ヨー】
 Pファクターによるもの:
 Pファクターはプロペラ推力の不均衡により生じ、大きなパワー設定と低い速度のときに現れます。これを説明するために、無風の日に機体を静止させ、エンジンを1,000回転でアイドリングさせていると仮定してみましょう。プロペラはそれ自体が小さな翼なので、それぞれのブレードにはプロペラの回転により反対方向の相対風が働いています。垂直方向に動くブレードを見ると、どちらも同量の揚力を発生させています。これらの揚力は、実際は推力を構成する要素で、もしブレーキを踏んでいなかったら、機体を前方に押し出す力となります。
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図3−6 前進運動なしと仮定した時の推力の発生
 
 ここで、水平巡航中の様子を見てみましょう。これまでと違うのは、機体が空気中を進むことによって水平な相対風の成分が加えられていることです。プロペラの回転と機体の前進により合わさった相対風は、少しだけ傾いてそれぞれのブレードに当たりますが、その大きさは同じであるため、それぞれのブレードは同量の揚力を発生させ、Pファクターはまだ存在しません。
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図3−7 水平巡航中、回転するプロペラに加えられる相対風の要素
 
 次に、一定の高度で速度をおとして行くときの様子を3段階に分けて見てみましょう。プロペラの回転と機体の前進によりそれぞれのブレードに相対風が働いていることには変わりがないのですが、これらの相対風がそれぞれのブレードに対して今や等しい角度では作用しなくなっています。機体が大きな迎え角になるに従い、効果的な空気の流れは下に向かうブレードにより多く作用し、反対に上に向かうブレードにはより少なく作用します。
 
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図3−8 水平飛行から迎え角を増加させてゆく
 
 2つのブレードの作り出す揚力が同量のとき、推力はプロペラの中心部分に働きます。しかし大きな迎え角での飛行中においては揚力の不均衡が生まれ、この合成力はもはやプロペラの中心部分には働かず、中心からはずれて下に向かうブレード側に移行します。この中心を外れた力が、CG位置を基点として左方向へのヨーモーメントを生みます。これがPファクターです。したがって、右ラダーを踏んでこのPファクターをうち消さなければなりません。
 
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図3−9 迎え角が大きい時の推力の発生
 
【2次ヨーのまとめ】
 2次ヨーは、エルロン(アドバースヨー)、エレベーター(ジャイロ効果)、スロットル(トルク、プロペラ後流、Pファクター、機体装備)の位置を変化させるときに必ず発生します。従って三軸にわたる操作系を変化させるときは、それに見合う量のラダーを使わなければなりません。使う量はわずかでも、ラダーは大きな力学的変化を生む操舵面です。しかし残念なことに、有効に使われることの最も少ない操舵面でもあります。
 ラダーの主要な機能は、飛行中に発生するさまざまな2次ヨーを適切にキャンセルし、バランスのとれた飛行をすることです。具体的にいえば、行うべき操作は次のようにまとめられます。上昇には右ラダーを、降下には左ラダーを操作します。左エルロン操作には左ラダー、右エルロン操作には右ラダーです。さらに、スロットル位置を変えるときにも、それに見合った量のラダーを操作しなければなりません。飛行中においては、私たちは足を忙しく動かさねばならないのです。特に、迎え角が臨界に近くなるにつれて、ラダーによるヨーの適切なコントロールはますます重要になってくるのです。
(以下次号)








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