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「ボナンザは安全な飛行機か?」  和泉 久
 
 米国自家用操縦士協会(AOPA)が運営する航空安全財団(ASF)は八月二十二日、ビーチクラフト・ボナンザ及びデボネアについての「安全ハイライト」を発行した。この印刷物は合衆国航空機保険グループがスポンサーとなってまとめたもので、これまでの同型機の事故について詳細に分析、同様なクラスの軽飛行機と事故傾向を比較している。ちょっと、興味深い資料なので、概略を紹介する。
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 ボナンザは五十年間にわたって生産された単発引込脚機で、一九八三年から九九年の間にモデル三三、三五、三六が合計一万二千機以上、FAAに登録されている。これらのボナンザにより千百四十三件の事故が発生している。この間、ボナンザは約二千二十万時間飛行しているので、十万飛行時間当たりの事故率は五・六六件となる。このうち、通常の尾翼配置を採用しているモデル三三/三六の事故率は四・六五件、V尾翼を採用したモデル三五は六・七二件と事故率が高い。一方ボナンザと同クラスの軽飛行機(セスナ一八二RG、二一〇、ムーニーM二〇、パイパー・コマンチ、サラトガ、ロックウェル一一二、一一四)の事故率は、さらに高い七・四六件だ。この数字が示す通り、ボナンザは安全性の高い軽飛行機ということになる。
 ただし、事故のうち、機体が大破するような深刻な事故と、危険を伴わない軽微な事故の割合を調べてみると、深刻な事故の割合がモデル三三/三六で四四・一%、モデル三五で四一・九%、同クラス機は三七・三%となっている。つまり、一旦、事故が発生するとボナンザは、深刻な事故となる割合がいくぶん高いことになる。
 事故原因をパイロットミス、機械的なトラブル、その他に分類すると、パイロットミスはモデル三三/三六が八○・四%と高く、次いで同クラス機の七〇・八%、モデル三五の六九・一%となっており、不思議と三三/三六が多い。一方、機械的なトラブルは、同クラス機が一九・二%であるのに対して、モデル三五が一九・一%、モデル三三/三六が一一・一%となっている。
 この安全ハイライトでは、ボナンザのウエイト&バランスや自動操縦装置、燃料システム、着陸装置、エンジンなどについて、事故の傾向を分析、具体的な注意点を挙げている。
 例えば、八四年以前に製造されたモデル三三と三六では、フラップ・レバーと脚レバーの位置が左右逆に配置されているので勘違いしないこと、真空ポンプは五百〜七百時間で故障することがあるので、五百時間前に交換すること、給油口のOリングが劣化して燃料タンクに水が浸入するので、Oリングは二〜三年毎に交換すること、といった実用的な注意点が指摘されている。
 また、着陸装置などのトラブルは少ないが、燃料システムに関するトラブルは同クラス機よりも多い、としている。
 なお、Vボナンザのモデル三五については、降下時や高速飛行時のテール・フラッタについても指摘している。さらに、計器飛行状態、着氷、夜間飛行、風の影響、飛行状態毎の事故分析なども書かれている。
 このほか、最後の方にはボナンザに関する知識を試すテストやトレーニングコースの概要などもまとめられているので、参考になるだろう。
 ボナンザを操縦するパイロットには、ぜひ、一読をお勧めする資料だ。このビーチ・ボナンザの「安全ハイライト」はwww.aopa.org/asfから無料でダウンロードすることができる。








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