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「VTOL輸送機の新型エンジン」  飯久保 郁弥
 
 VTOL輸送機はコア分離型ターボファン・エンジンと呼ぶ新しい形式のエンジンを搭載することにより、(このエンジンの開発を前提として)航空機のイメージを変え新たな進歩を遂げようとしているのではないかと思われます。
 コア分離型ターボファン・エンジンとは、コア・エンジンとターボファンエンジンとが分離された型式であり、タービンエンジン(圧縮機、燃焼機、タービン)で構成した部分(コア・エンジン)と、コア・エンジンから分離独立した、駆動部分(エンジンであるが圧縮機はなく、燃焼機とタービンのみ)及びフアン(減速ギアー付き)で構成されており、この駆動部分とフアン機構が、それぞれの働き、即ちリフト(リフトエンジンとリフトフアン)と、クルーズ(クルーズエンジンとクルーズフアン)とに独立した働きを受け持つ機能を持ち備えたものである。コア・エンジンと各々のリフト、及びクルーズエンジンとの間は高圧空気を供給する高圧ダクトのみで接続されている機構で、言い換えれば、コア・エンジンから、リフトエンジン、及びクルーズエンジンに高圧ダクトで繋がっているだけのことである。
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図2 エンジン・システムの構成
 エンジンの作動原理は簡単であり、コア・エンジンの燃焼により、タービンと同軸である圧縮機が高回転されると高圧縮空気が発生する、その高圧空気を圧縮機出口で二分して、高圧ダクトを通してリフト、及びクルーズ、それぞれのエンジンの燃焼室に導き、そこで、燃料と混合させて燃焼さす、そのガス圧力にて、ガスタービンを回転させて減速機を介して効率の良い回転にし、リフト、及びクルーズフアンを回して、離着陸、又は前進飛行をするのである。
 コア分離型エンジンは次世代の高亜音速機用のエンジンとなる減速ギア付き可変ピッチフアンを用いる超高バイパス比ターボファン・エンジンの作動を確実にするために考えられたもので、この特徴を生かして考えられたエンジンであり、その為に圧縮機の圧力比が高く、熱効率が良いとされている。それに高圧空気を供給するダクトをきわめて細くできる。その他フアン部分を薄くすることが可能であり又回転が低い為、静止推力の大きな、そして低騒音に出来る為、大型エンジンには最適と言われるのではないか。
 外見はこれまでのエンジンと異なるが、構成要素の大部分は従来型エンジンより単純で無理がなく、機能的にも適化され、多くの点で従来型エンジンより優れている。特にコア・エンジンの作動がフアンの作動状態に影響されないため、安定性、レスポンス、整備性が良いので安全性の高いエンジンと言えるのではないかと期待されている。
 なんと言っても一基のコア・エンジンで複数のフアンを駆動できるなど動力としての柔軟性が格段に増える為、これからのVTOL輸送機用として設計、開発するには、何基かのコア・エンジンを取り付けることが考えられ、これにより更なる安全性が高まる、それに、次世代航空機として運用するには、在来型機と同じ降着装置にすれば、操作しだいで、(CTOL機)(STOL機)(VT OL機)としての運用も可能になり、これからの時代にふさわしい高速輸送機として大いに期待して良いのではないか。
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図6 ■ VTOL輸送機の概念(T尾翼型)








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