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「VTOL旅客機の構想」  飯久保 郁弥
 
 最近、地方分散型社会の機運が高まり、政府も重い腰をあげようとしているので、近い将来実現するであろうが、地方分散型社会を築くためには地域間の交通輸送と、情報の格差を解消して、経済、文化、などの格差を少なくせねばならないであろう。情報に関してはITが進み問題はないが、交通輸送の格差解消については何かと残された問題が多く難問であることには誰もが感じていると思う。
 現在の主な文通機関は鉄道、自動車、航空機であるが、新幹線、道路、飛行場、どれをみても地方の主要都市ぐらいが限度であり、これらを今以上に整備するには右肩上がりの時代が過ぎたこれからは無理であろう。そこでVTOL機となるわけであるが、現在、民間用として我が国の企業も参加して開発している小型テイルトローター機、2002年の導入を目ざして準備がすすめられているが、ジェット輸送機に比べて速度が遅く、離着陸の騒音は回転翼式であるため大きく、構造上あまり大型には出来ず、快適性で怠る故、本格的な輸送機としてあまり期待できないではないかと懸念される?
 そこで最近、新たなVTOL輸送機の構想が浮かび、この輸送機は大型高速VTOL機であり、超低騒音という夢のような飛行機であることが注目される。これには新たなエンジンの開発が前提となり、これに搭載するコア分離型の新型式ターボファンエンジンと超低音リフトファンであり、すでに技術的に成立する可能性が高いということが立証され、今後実用化に向けて更に研究して行くようであり、何れ開発に着手されるであろう。
 このVTOL輸送機とは、簡単に説明すると離着陸はホバークラフトと同じでリフトファンで上下して、前進飛行は今のジェット輸送機と同じで、ユニークなのは、機体と翼の取り付け部の下部に何個かの(構想では6から8個)リフトファンを取り付け、これにより垂直に離陸しながら前進飛行に移行するものであり、テイルトローター機より機構が簡単で故障もすくなく、操縦性、整備性、乗り心地もよくそして大型化が可能で、安全であると開発研究者は述べている。
 専用空港は、200メーター四方の発着面があれば充分と予想され、これなら地方の中核都市にも場所、建築費の面からも全国至る所に作ることができて、運航形態は高速性を最大限に発揮できる都市間直行型となり、地方分散型社会への移行にふさわしく、夢のような、しかし技術的にはきわめて現実的な大型高速VTOL機であるということなので、一日も早く実現してほしいものである。
 これにはコア分離型ターボファン・エンジンの開発が急務であり世界中のエンジン製造会社が協力していくしかないと思われるが、欧米に遅れをとっている我が国のエンジン製造会社も名乗りをあげてこれからの航空機産業を飛躍的に拡大してほしいと何人かの識者や、財界人が願っているようであり、革新的なVTOL機の開発は構想で終わることなく、我々航空機に携わる者も声を大にして真正面から応援していきたいと思っている。
 新しい時代に相応しい航空機用のエンジンの誕生が、このVTOL機の開発の要になるのでなんとしても成功してほしいものである。今回は機体、エンジンについてはあまり細かい事は述べていませんので全体のイメージがつかみにくいと思いますが、あしからず、詳しいことは又の機会に致します。
 失礼、(そんなに詳しくないですが)








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