日本財団 図書館


「FADEC付きXL−2が登場」  和泉 久
 
 米国自作機協会が主催するエアベンチャー二〇〇一に、リベルリィーXL−2と呼ばれる二座席軽飛行機が出展され、注目を集めた。この低翼の軽飛行機には、ピストン・エンジン用シングル・レバー制御装置として、初めて米国連邦航空局から許可された全自動デジタル電子制御装置(FADEC)付きのテレダイン・コンチネンタルIO−240エンジンを装置している。
z0009_01.jpg
 XL−2は、コロラド州マウントローザにあるリベルティー・エアロスペース社が開発した軽飛行機。元々、同社は欧州でヨーロッパと呼ばれる自作機を三十カ国へ七百五十機も製造したヨーロッパ・アビエーション社が起源で、米国にて軽飛行機作りを始めたベンチャー企業だ。また、XL−2には、従来、百馬力のロータック・エンジンが装備されていたが、新に百二十馬力のFADEC付きコンチネンタル・エンジン・タイプが完成、今回、発表された。
 同機に装備されたパワーリンクと呼ばれるFADECは、シリンダ毎の燃焼状態をモニタリングして、燃料の供給量や混合比、プラグの発火タイミングなどを小型マイクロプロセッサにて全自動で制御する装置。
 パイロットはパワーレバー一本でエンジンを操作でき、しかも離陸時や上昇時、高速巡航フライト時には、エンジン出力が限度一杯に最適値となるようセットし、巡航フライトではシリダンヘッド温度を注意しながら、経済的なフライトが可能になるよう自動的にエンジン設定を行う。
 また、機内に持ち込んだラップトップ・パソコンでエンジンの状況を詳細に見ることも可能なデータポートを持っているため、整備や保守点検にも便利だ。
 このFADECを使うことにより、燃料消費を一〇〜一五%程度まで節約できるほか、エンジン寿命も延ばす。
 XL−2は新設計のサイド・バイ・サイドの二座席機で、四十八インチ幅のコックピットを持ち、べイロードは六百ポンド、百二十ノットで巡航飛行ができ、航続距離は五百マイルとなっている。
 標準価格はロータック・エンジン付きで九万七千五百ドル、最初の五十機については八万五千ドルの割引販売を行ったが、既に販売済みとなっている。ただし、パワーリンクFADEC装備のIO−240付きは十万五千ドルとなっており、これにジェミニ製のGPS/無線機、ILSなどの計器飛行装置(IFRデラックス・オプション)を加えると、約十四万ドル(約千六百八十万円)となる。同社の計画によればだ今年末に型式証明を取得、納入を開始する。
 FADECは小型タービン機でも数多く取り付けられている装置なので、将来の軽飛行機は必須と言われている。ただし、これまでは価格の高いタービン機にしか適用されていなかったが、最近は数社がレシプロ機用も開発している。
 同機に装備されたパワーリンクFADECは、XL−2のほか、ビーチのバロンやボナンザ、セスナ単発機シリーズなど広範囲な軽飛行機に今年より搭載しているライカミングIOF−360(百八十馬力)及びコンチネンタルIOF−240、IOF−550シリーズのエンジンに装備することができると発表されている(FはFADEC装備が可能)。
 なお、パワーリンクFADECの詳細についてはホームページwww.fadec.comを、リペルティーについては、www.libertyaircraft.comを、それぞれ参照されたし。








日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION