「ドクターヘリが全国へ」 飯久保 郁弥
一刻も早く、脳卒中や心筋梗塞、交通事故などの救急患者を治療するため、医師が同乗して、人工呼吸器や、心電図、医薬品などが搭載されたドクターヘリコプター、アメリカやドイツでは盛んに活用され、一九七〇年ごろからドクターヘリを導入したドイツでは年間六万件の出動があり、アウトバーンの高速自動車事故の死者を劇的に減少させたという。
この一九七〇年頃日本では、日本列島改造ブームで高速道の整備が進みつつあり、この道路のインターチェンジに、日本リースという企業が(今は例産)このドクターヘリにちかい空の救急ヘリを全国五〇カ所に一機ずつ配置して運航しようという膨大な構想をもち、プロジェクトチームまでつくり一年以上検討していたのである。当時のヘリの性能と乗員(操縦士、整備士)の確保、航空法とのかねあいで実現不可能となり断念したのであるが、(バブル経済初期で資金は一〇〇億用意されたとのこと)このようにドクターヘリに関しては早くから日本でも感心はあり、その後も大手ヘリ各社はいくたびか検討はかさねてきたのであるが、バブル崩壊と経費の関係で、立ち遅れてしまったのである。一九九五年阪神大震災時、民間ヘリの活躍もあり、この頃から国内でも体制整備の必要性が叫ばれ、国内では、東海大病院(神奈川県伊勢原市)と川崎医科大付属病院(岡山県倉敷市)が民間航空会社からヘリコプターをチャーターして(操縦士、整備士、含む)試験的に運航し東海大、川崎医大併せと四五〇人以上を運び死者を五〇人、後遣症患者を九〇人程度減らしたという(平成一三年四月末まで)推定結果が報告された。この報告により腰の重い政府も「有用性が証明された」として、東海大と川崎医科大のほか、すでに民間ベースで試行を始めている病院などを中心に(七カ所)本格運用を始めるとの考えで、それまで各一億円の予算をつけていたのを(一時中断したい考え)そのまま続けることにして、これからは本格導入をすると決め、今年度の予算から一カ所当たりの補助も増額するとの案が決定されたのである。そして将来はこれ以上に拡大する計画案が示され、いよいよドクターヘリの到来が全国的に展開される時代がきたとの気配が感じられたのである。このようにヘリコプター業界に明るい話題を提供されたのは喜ばしいことで関係者から大歓迎されたのが新世紀早々のことである。
これに伴い、ヘリコプター各社はこの事業にしのぎを削り、参入競争をするのであろうが、いちがいに喜んでばかりいられないのではないか?
一刻を争う人命を預かるこの事業においては、昼、夜をとわずいつでも運航できる状態でなければならないし、又事故を起こしてはならない。それに加え、誰にでも気軽に利用できるような運航経費、指定された病院には完備されたヘリポートの設置、それと各地方、地区、においていつでも使える臨時ヘリポートが必要になる。このような体制を一日も早く作らなければ今後の発展は望めないだろうが、これは一企業だけの力では出来なく、国民的課題であり、航空法の規制の見直し、(場外着陸地、フライトプラン)国あるいは、地方自治体の補助金の増額、地域住民の騒音に対する理解、等々、諸問題は山積されているのであり、今後、このような問題を地道に解決していかなければなりません。人命を守るドクターヘリコプターを、欧米並みに普及させるためには、ぜひとも赤十字飛行隊でボランティア活動に従事し、人命のさを身にしみて感じ、人命救助を実践している皆様方に、認識してもらい、さらなる御理解が必要であると思い、本紙面をお借り致し、私の所見を述べてみました。宜しく御協力の程を御願いいたします。
ドクターヘリを愛する男