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(9)植栽後のヨシの前進・後退
 各測線のヨシの生育状況の断面変化を概観すると現状でヨシの生育している範囲が概ね過去にヨシ植栽を施した領域となっている測線(B−2、C−2、E−3など)と、過去の植栽帯よりもヨシのエリアが沖寄りに前進・拡大している測線(A−2、B−1、E−2など)、逆に過去の植栽帯と比べてヨシの前線が陸側に後退・縮小あるいは植栽帯内でのヨシの消失・減少が著しい測線(B−3、A−3など)が見られる。
 そこで次に、ヨシが前進・後退している代表的な測線を抽出し、それぞれの環境条件特性に違いが見られるかどうか、データを比較してみた。
 ここに、同一地区内同士の比較が可能なように、A地区とB地区の中からそれぞれ
前進:A−2測線  後退:A−3測線
前進:B−1測線  後退:B−3測線
を選び、前進群落については植栽帯内のコドラートデータ平均値と植栽帯外(沖側)のヨシ存在コドラートデータ平均値を、後退群落については植栽帯内のコドラートデータ平均値を求め、表4.2.5に示すとともに、図4.2.36にこれをグラフ表示した。
表4.2.5 植栽後のヨシの前進測線と後退測線の比較
地区 測線 領域 ヨシ平均 茎個体数 密度   (本/m2 ヨシ平均 草丈 (cm)  ヨシ平均 茎径 (cm)  底泥の粒度特性
粗砂以上    (%) 細砂    (%) シルト以下   (%) 中心粒径 (mm) 10%粒径 (mm) 均等 係数 曲率 係数
A A-2
(前進)
71.0 168.3 2.4 36.4 40.8 22.8 0.27 0.010 36.4 5.1
79.8 174.5 4.3 34.4 23.5 42.1 0.18 0.003 120.4 0.3
A-3
(後退)
11.5 96.0 3.4 72.0 26.2 1.8 0.54 0.320 1.9 1.0
B B-1
(前進)
17.8 345.2 9.6 84.6 13.3 2.1 1.60 0.345 6.2 0.7
54.6 178.6 6.6 22.1 73.2 4.7 0.28 0.110 2.9 0.9
B-3
(後退)
5.07 195.2 7.0 88.5 7.1 4.4 1.03 0.395 3.2 1.0

地区 測線 領域 底沼表層平均硬度 混生植物 平均地形勾配 底沼の科学的特性
平均種数 平均被度 pH 強熱減量
(%)
全窒素
(mg/g・dry)
全リン
(mg/g・dry)
硫化物
(mg/g・dry)
酸化還元電位(mV)
A A-2
(前進)
685 3.0 4.5 -0.02 6.6 2.3 0.25 0.130 0.02 377
637 1.1 1.8 -0.04 7.4 3.6 0.50 0.180 0.02 -116
A-3
(後退)
531 3.5 5.5 -0.02 5.0 0.8 0.10 0.100 0.01 379
B B-1
(前進)
388 2.8 5.0 -0.11 6.7 1.1 0.15 0.050 0.05 269
397 0.6 1.0 -0.05 7.0 2.3 0.30 0.120 0.15 -78
B-2
(後退)
381 2.5 4.3 -0.03 5.7 0.7 0.05 0.080 0.02 383
注)内:ヨシ植栽帯内のコドラートか対象。 外:ヨシ植栽帯の外(沖側)のヨシ存在コドラートが対象
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図4.2.36 植栽後のヨシの前進測線と後退測線の比較
 なお、どの測線とも消波施設は設置されていない。
 また、A−3測線は幅8mほどの植栽帯内におけるヨシの著しい減少が見られることから選定したものであるが、植栽帯の際から外側(沖側)35mほどの範囲にはヨシの生育がある。このヨシが植栽以前より存在した自生ヨシであるのか、あるいは植栽帯のヨシから派生して沖側に拡がったものであるのかは不明である。もしも後者であるならば、A−3測線は前進との見方もできるが、ここでは植栽帯内でのヨシの消失・減少のみに着目し、後退として扱った。
 図表より明らかなように、前進群落と後退群落とではヨシの平均形状、特に密度と草丈において、前者が高く後者が低いという明らかな違いが見られる。
 これに対し、前進群落に共通、あるいは後退群落に共通の傾向が表れた環境項目としては、
 ◇底泥のpH
 前進群落(6.6〜7.4)>後退群落(5.0〜5.7)
 ◇底泥の強熱減量(%)
 前進群落(1.1〜3.6)>後退群落(0.7〜0.8)
 ◇底泥の全窒素(mg/g・dry)
 前進群落(0.15〜0.5)>後退群落(0.05〜0.1)
が挙げられるほか、底泥の均等係数において、A地区、B地区とも、前進群落の方が後退群落よりも相対的に高いといった傾向が見られる。しかしながら、他の項目も含め、総合的な観点から、前進・後退の違いを明確に説明し得る傾向的特徴が表れたとは必ずしも言えない結果となった。








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