[2]底泥の粒径割合
底泥の粒度分布測定結果より、粗砂以上割合、細砂割合、シルト以下割合をそれぞれ指標として、ヨシ茎個体数密度との関係を図4.2.9に、粒径別ヨシ存在コドラート数の頻度分布を図4.2.10に示す。
図4.2.9 粒径割合とヨシ茎個体数密度の関係
図4.2.10 粒径割合別ヨシ存在コドラート数
これによると、粗砂以上(粒径0.42mm以上)の粒子の割合に対するヨシ茎個体数密度の分布は大きくばらついているが、強いて言えばこの割合が低すぎても、逆に高すぎても密度は低下する傾向が見られる。この割合別のヨシ存在コドラート数は、粗砂以上割合80〜90%のものが最も多いが、その大半は密度の低いヨシである。これに次ぐ頻度は割合20〜30%と70〜80%が同数で高く、ともに「高多」を2コドラートずつ含むが、これらに挟まる割合(30〜70%)の出現頻度が少ないことによって、粗砂以上割合が50%よりも多い場合と少ない場合の双方にピークをもつ概ねシンメトリーのヒストグラムを呈した。
次に、細砂(粒径0.074〜0.42mm)の割合についてみると、データはかなりばらついており、細砂割合とヨシ密度の間に一定の傾向は認められない。ただ、細砂割合別のコドラート数の頻度分布は、特定の割合への顕著な集中はないものの、全体的にはやや細砂割合の低い方がややコドラート数が多くなる傾向がある。細砂割合が30%未満のコドラート数は全体の約5割(17/32)を占め、50%未満で約7割(23/32)、70%未満まででは約9割(28/32)となっている。
一方、シルト以下(粒径0.074mm以下)の割合で見ると、密度の高いヨシから低いヨシまでを含めて明らかに分布の主体はシルト以下の割合の少ないコドラートに集中しており、割合が5%以下のコドラートが全体の6割以上を占めている。密度100本/m2を超えるコドラートがシルト以下割合25〜30%に1カ所と割合40〜45%に2カ所存在するが、全体的な分布傾向からすれば稀であり、やや特異的なデータである。ヨシの生育している場所でシルト分55%以上の所は見られない。
これらのことから、調査対象としたヨシの現状の立地は砂分が多くシルト分以下が少ない所が大半を占めることが明らかとなり、数値的には
の条件下の生育の最も多いことが判った。ただ、粗砂以上の粗い粒子の占める割合が高すぎても低すぎてもヨシ個体数密度がやや低下する傾向が見られたことから、粗砂ばかりの砂分、あるいは細砂ばかりの砂分という条件もあまり好ましいとは言えない可能性がある。
一方、前節の1元配置分散分析で粒径割合とヨシの生育指標との関係を検定した結果からは、粗砂以上割合が平均茎個体数密度に対して5%有意、細砂割合が茎径に対して10%有意、シルト以下が乾重量に対して10%有意であった以外は、有意な関係が認められていない。このため、ヨシの生育特性値が必ずしも粒径割合に連動していると、今回の調査結果のみから言及するには、統計的根拠が不足している。しかし、上記の結果はヨシが砂質を好むと言われる既存の知見と整合しており、数値的対応関係にはかなりのばらつきがあるものの、細砂以上の土壌がヨシの生育に有利である点は確かと思われる。
1元配置分散分析の結果からは粗砂以上割合が、また、ヨシ生育立地条件の出現・集中に係る定性的な見方からは細砂割合とシルト以下割合が、ヨシの生育と関わりを有する指標として抽出される可能性があると考えられる。