(3)ヨシ生育と地質・底質環境との関係の検討
前項において、ヨシ生育に影響を及ぼす地質・底質指標が選定された。本項では、分散分析により有意な関係が示された均等係数、全リンなどの指標別に、ヨシ生育関連指標との関係を検討した。なお、1元配置を行う際、偶然性のもとに範囲を区分できるよう、対象とする地質・底質指標の大小の順に対応するヨシ生育関連指標データを並び替え、値の小さい方から4等分に区分した(全32サンプル/4=1区分8サンプル)。この区分ごとに生育特性値の平均値を算出し、相対的な違いを比較した。
[1]均等係数
検定の対象となった全19種類の地質指標の中で、もっともヨシの生育に影響を及ぼした要因が均等係数であった。均等係数とは粒径加積曲線の傾度を表すもので、大きくなるほど粒度分布が広いことを示す。分散分析において有意な関係を示したヨシ生育関連指標と、均等係数との関係を図4.1.4に示す。
図4.1.4 ヨシ生育関連指標と均等係数との関係
均等係数1.71〜3.16における平均茎個体数密度は19.6本/m2と小さく、以降、均等係数3.17〜7.45で44.5本/m2、同8.38〜14.00で54.3本/m2、同15.26〜120.37で62.4本/m2と、均等係数が増すにつれて平均茎個体数密度も大きくなった。
一方、平均草丈及び平均茎径では、均等係数1.71〜3.16において草丈は203.2cm(茎径6.3mm)、以降、均等係数3.17〜7.45で243.2cm(7.2mm)、8.38〜14.00で168.1cm(5.8mm)、15.26〜120.37で194.3cm(5.2mm)となり、両指標とも均等係数3.17〜7.45で大きな値となった。
1本あたりの湿重量、乾重量でも同様の傾向がうかがえ、均等係数1.71〜3.16において湿重量31.8g(乾重量10.9g)、以降、均等係数3.17〜7.45で45.8g(21.6g)、8.38〜14.0で21.7g(11.3g)、15.26〜120.37で22.0g(11.5g)となった。
以上より、ヨシ茎の形状及び重量に対しては、均等係数3.17〜7.45の粒度分布の土壌が、最も良好に寄与することが推察された。また、粒度分布が揃いすぎることは、茎個体数密度に負の影響を与える傾向も示唆された。