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(2)1元配置分散分析によるヨシ生育と地質・底質環境との関係の検定
 前項において、ヨシ茎個体数密度に対する地区、測線、地盤高の寄与が認められた。本調査では、各測線ごとに3ヶ所ずつ地質・底質の分析を行っており、内2ヶ所はヨシ群落内に位置する。そこで、全16測線×2ヶ所の計32地点の地質・底質データとヨシ生育関連指標との関係を、1元配置分散分析(4水準)により検定した。
 目的変数は、平均茎個体数密度、平均草丈、平均茎径、1m2あたりのヨシ湿重量・乾重量、ヨシ1本あたりの湿重量・乾重量とした。
 なお、解析に当たっては、各測線を陸域と沖域に分割し、各測線ごとにそれぞれの分割領域に位置するコドラートのヨシ生育関連指標データの平均値を求めた。そして、ヨシ群落内2ヶ所の地質・底質データをそれぞれ陸域と沖域の代表データとみなし、上記平均値と対応させて両者の関係を分析した。
 ここに、各測線ごとの陸域と沖域の境界は、最陸域と最沖域のコドラートの中間点とした。
 この方法により区分した各測線の陸・沖境界の位置とコドラート面積を表4.1.3に示す。陸域が40.75m2、沖域が44.00m2となり、設置したコドラートを平均的に分化できた。ただし、地質・底質調査地点のうち、沖域として設定したB−3測線14.4m地点は、上記の方法によると陸域に分類されることになり、この測線のみ陸域2ヶ所、沖域0ヶ所になる。よって、例外としてB−3測線14.4m地点は沖域に分類し、配分の整合を計ることとした。
 一元配置分散分析の結果に基づく検定結果を表4.1.4に示す。
表4.1.3 各測線の陸域と沖域の境界線及びコドラート占有面積
側線 境界線の位置(m) 陸沖区分 コドラート占有面積(m2) 側線 境界線の位置(m) 陸沖区分 コドラート占有面積(m2)
A-1 17.55 2.75 C-2 12.70 2.25
2.50 1.50
A-2 15.25 1.25 C-3 21.60 2.25
4.25 2.75
A-3 18.70 3.50 D-1 12.55 1.75
2.75 3.00
A-4 14.25 2.25 D-2 28.35 3.50
3.25 2.75
B-1 18.45 4.25 D-3 44.40 5.00
2.50 1.75
B-2 22.85 3.00 E-1 8.65 2.00
4.25 2.25
B-3 17.85* 1.75 E-2 9.55 2.50
4.50 1.75
C-1 12.45 1.25 E-3 10.00 1.50
2.00 2.25
*B−3 14.4m地点は沖域に分類(地質の測定地が陸域に2ヶ所になるため)
表4.1.4 1元配置分散分析による地質・底質条件がヨシ生育に及ぼす影響の検定結果
地質・底質 ヨシ生育指標
平均ヨシ茎個体数密度 ヨシ草丈 ヨシ茎径 湿重
(g/m2)
乾重
(g/m2)
湿重
(g/本)
乾重
(g/本)
p値
p値
p値
p値
p値
p値
p値
粗砂以上 (%) 0.02 ** 0.57   0.14   0.48   0.30   0.28   0.86  
細砂分 (%) 0.28   0.44   0.10 * 0.94   0.81   0.19   0.60  
細砂以上 (%) 0.52   0.64   0.36   0.26   0.24   0.23   0.16  
シルト以下 (%) 0.55   0.35   0.26   0.15   0.20   0.16   0.08 *
中心粒径 (mm) 0.56   0.71   0.58   0.22   0.43   0.39   0.54  
60%粒径 (mm) 0.87   0.94   0.20   0.65   0.64   0.68   0.48  
30%粒径 (mm) 0.59   0.77   0.72   0.40   0.34   0.91   0.74  
10%粒径 (mm) 0.06 * 0.66   0.48   0.89   0.76   0.49   0.89  
均等係数 0.01 *** 0.01 *** 0.03 ** 0.20   0.18   0.01 ** 0.00 ***
曲率係数 0.02 ** 0.37   0.63   0.29   0.31   0.83   1.00  
泥温 0.94   0.16   0.29   0.77   0.92   0.18   0.43  
含水率 0.10 * 0.11   0.23   0.47   0.28   0.37   0.73  
pH 0.30   0.34   0.28   0.32   0.26   0.76   0.81  
強熱減量 (IL) 0.11   0.39   0.69   0.61   0.67   0.23   0.41  
全窒素 (N) 0.24   0.73   0.90   0.99   0.93   0.90   0.95  
全リン 0.24   0.07 * 0.05 ** 0.62   0.75   0.02 ** 0.34  
硫化物 0.99   0.54   0.81   0.91   0.78   0.37   0.35  
酸化還元電位 0.63   0.05 ** 0.27   0.49   0.53   0.67   0.70  
IL/N比 0.59   0.53   0.66   0.46   0.34   0.88   0.38  
***1%有意 **5%有意 *10%有意
 表より、平均茎個体数密度に対しては、粒径区分の粗砂以上割合が5%有意、10%粒径が10%有意、均等係数が1%有意、曲率係数が5%有意を示した。また、土壌の含水率も10%有意を示した。土壌の粒径がヨシの密度に寄与する傾向を示した。
 平均草丈に対しては、均等係数(1%有意)、全リン(10%有意)、酸化還元電位(5%有意)の3要因の寄与が示唆された。平均茎径には、均等係数(5%有意)、全リン(5%有意)に加えて、細砂分割合にも10%有意が認められた。ヨシの個体形状を示すこの2指標に対しては、全リンにおいて有意な関係が認められた。一方、全窒素についてはほとんど明確な関係が見られなかった。
 1m2あたりのヨシの湿重量・乾重量に対しては、地質・底質データは有意な関係を示さなかったが、ヨシ1本あたりの重量に対しては、関係を示す指標もいくつか存在した。湿重量に対しては、均等係数、全リンが5%有意を示し、乾重量に対しては、シルト以下割合が10%有意を、均等係数が1%有意を示した。草丈、茎径などの形状と同様に、1本あたりの重量に関しても均等係数が有意な関係を示した。土質の粒度分布関係では、細砂以上割合、中心粒径、60%粒径、30%粒径が全ての指標で有意な関係を示さず、底質関係では、泥温、pH、強熱減量、全窒素、硫化物、IL/N比において、有意な関係が見られなかった。








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