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測線D−3 近江八幡市牧 
県水産課植栽群落(消波あり)
ヨシの形状特性等
 ヨシ茎個体総数は252本であり、平均茎個体数密度はコドラート平均で56.5本/m2、平均形状は、茎高121.9cm、草丈145.8cm、茎径5.3mmであった。茎密度は全地区総平均(51.6本/m2)を上回ったが、背丈、茎径の小さいヨシが多く存在した。1m2あたりの平均湿重量は885g、乾重量501g、ヨシ1本あたりの平均湿重量は19.2g、乾重量は10.8gであり、いずれも総平均値(各1506g/m2、665g/m2、29.9g/本、12.7g/本)をかなり下回った。
 測線の断面変化では、ヨシは基点から15m付近〜75m付近まで存在したが、沖側では株立ちが目立ち、まばらであった。47.5m地点の茎密度276本/m2は株立ち状の塊が計測されたものである。全般的に差が低く、茎も細いヨシが多く、ヨシの形状の平均値は比較的変動の少ない状況にあった。
植生の概況
 陸域を含めて長大なルートであり、この陸域には、オギとヨシが交代で密度の高い優占群落を呈する。岸近くからは段差のある立地に見られるクズ・セイタカアワダチソウ優占区間を経てヨシが出現するが、その密度は下層のチクゴスズメノヒエとともにモザイク状に複雑に変化していた。沖のヨシは株立ち状である。ヨシ群落内の混生種はチクゴスズメノヒエがほとんどであった。
地形・土質の概況
 汀線は北北西を向いている。湖底地形の縦断面形状は、崖地形から平坦面に移行する。崖地形の部分は勾配9.7°の直線斜面であり、20m付近の遷緩点を境にして、勾配はほぼ水平となった。
 湖底堆積物の土質は、70m付近までは、表層が「砂+シルト」「砂」、下層が「シルト」「砂+シルト」であり、そこから消波柵までは「砂+シルト」主体であった。消波柵より沖合では「砂+シルト」である。
 湖底堆積物の硬さは、70m付近までの表層の「砂+シルト」層では「軟らかい〜中位の」、「砂」層では「軟らかい」、下層の「シルト」層では「非常に軟らかい〜中位の」、「砂+シルト」では「中位の〜硬い」であり、消波柵までの「砂+シルト」層は「中位の〜硬い」であった。消波柵より沖合の「砂+シルト」層では「軟らかい〜硬い」であった。
 19.9m地点において確認されたヨシの根域は、深度0.05〜0.20m、土質「砂+シルト」、硬さ「軟らかい」であり、75.4m地点において確認されたヨシの根域は、深度0.05〜0.30km、土質「砂+シルト」、硬さ「中位の」であった。
底質・粒度の概況
 ヨシ帯内では陸から沖に向けて、強熱減量、全窒素及び全リンが減少し、IL/N比が上昇する傾向が見られた。これより、本測線では沖側において有機物の供給速度が少なく、分解速度も遅いことが示唆された。全リン濃度については、沖に向けての減少傾向が強熱減量や全窒素よりも緩やかであり、沖側において、リン酸の難溶化が生じやすい環境であると考えられた。また、酸化還元電位(ORP)を見ると、陸側では好気的(+229mV)であるが、沖側では−188mVであり、陸側に比べると嫌気的な傾向であったが、硫化物は沖側が低く、継続的に嫌気的になるような環境ではないと考えられた。また、粒度分布は沖に向かって粒度構成が大きくなる傾向がみられ、中心粒径でも陸側が0.23mm(細砂)に対し沖側で1.2mm(粗砂)と大きくなっていた。
 群落外沖合の地点における化学的性状は、ヨシ帯内より強熱減量が低く、全窒素が同程度、全リンが大きい値を示した。また、粒度分布はシルト質以下の粒径が占める割合が約40%(ヨシ帯内沖側では約1%)と高くなる傾向が見られた。
 本測線では、ヨシ帯内では陸側が沖側よりも有機物の蓄積しやすい底質環境であり、沖合では、本測線のヨシ帯と沖合の地点間にある防波柵を境に急深となっていたことから、ヨシ帯内と外の底質の連続性は考えにくく、それぞれ異なる性質の底質であると考えられた。
 
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図3.4.29 D−3測線の植生・地質断面及びヨシの形状特性
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図3.4.30 D−3測線の底質及び粒度
〈備考〉横軸は基点からの距離(m)








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