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(4)D地区(近江八幡)
 D地区のヨシ茎個体総数は466本であり、茎個体数密度はコドラート平均で36.5本/m2であった。平均形状は、茎高が155.1cm、草丈が179.7cm、茎径が5.9mmであった。茎径を除く他の指標は、全地区総平均(密度51.6本/m2、茎高172.9cm、草丈200.6cm)に比べて小さい。1m2あたりの平均湿重量は1049g、乾重量は459gであり、A〜E地区の最小であったが、ヨシ1本あたりの平均湿重量は26.3g、乾重量は11.4gであり、総平均値をやや下回る程度であった。
 図3.4.24より、各測線とも比較的低密度であることが分かる。D−1測線は沖域が砂質の良好な自生のヨシ群落であり、陸域にはウキヤガラ群落が広がっていた。D−2測線は消波柵に覆われた植栽群落であり、水の流れがなくチクゴスズメノヒエが優占するとともに、沖域のヨシは株立ち状態であった。D−3測線も消波柵に覆われた植栽群落であったが、消波柵に隙間を設けてあり、水の流れは少し確保されていた。平均草丈は16測線中でD−2測線が最小であり、D−3測線が次に小さな結果であった。
 
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図3.4.24 D地区のヨシの形状特性(茎密度と草丈)
 表3.4.8にはD地区における測線別の地形・土質の概況を示した。
表3.4.7 D地区における測線別のヨシ平均形状特性
地区・測線 コドラート数 ヨシ茎個体数
(本)
ヨシ平均茎個体数密度
(本/m2)
ヨシ平均茎高
(cm)
ヨシ平均草丈
(cm)
ヨシ平均茎径
(mm)
ヨシ湿重量 (g) ヨシ乾重量 (g)
設置総数 ヨシ存在点数 1m2
あたり
1本
あたり
1m2
あたり
1本
あたり
D地区 D-1 10 7 151 38.7
(37.8)
234.2 260.5 7.4 2014 48.7 679 16.3
D-2 16 6 63 20.0
(16.8)
98.1 121.4 4.7 225 13.3 125 6.8
D-3 18 11 252 56.5
(50.4)
121.9 145.8 5.3 885 19.2 501 10.8
D地区全体 44 24 466 42.2
(36.5)
155.1 179.7 5.9 1049 26.3 459 11.4
(注)ヨシ平均茎個体数密度の上段の数値は、ヨシ存在コドラートの個体数密度の算術平均値。
下段( )内の数値は、個体総数を測線または地区のヨシ存在コドラート総面積で除して求めた値。
表3.4.8 D地区における測線別の湖底地形及び土質の概況
地 点 D-1 D-2 D-3
湖底地形 縦断面形状 凸形斜面 崖地形→概ね平坦面 崖地形→概ね平坦面
傾斜変換点 遷急点 (24m地点)
遷緩点 (26m地点)
遷緩点 (18m地点) 遷緩点 (20m地点)
勾配 (度) 1.1→5.7→0.5 8.5→概ね水平 9.7→概ね水平
土質 表 層 礫混り砂 砂、砂質シルト
下 層 砂、砂質シルト、シルト 砂質シルト、シルト

測線D−1 長命寺橋南 
自生群落(消波なし)
ヨシの形状特性等
 ヨシ茎個体総数は151本であり、平均茎個体数密度はコドラート平均で38.7本/m2、平均形状は、茎高234.2cm、草丈260.5cm、茎径7.4mmであった。草丈、茎径ともに16測線最大であった。1m2あたりの平均湿重量は2014g、乾重量679g、ヨシ1本あたりでは平均湿重量48.7g、乾重量は16.3gであり、特に湿重量において高い数値を示した。
 測線の断面変化では、陸側から沖に向けて、茎密度、草高、茎径ともにわずかに増加が見られたが、20mを超えたあたりで再び減少した。
植生の概況
 岸はカサスゲ優占群落であり、ここから、カサスゲ、ウキヤガラ、ヨシ優占区間と続く。このルートでは、陸域から水域への緩やかな環境勾配が認められた。また、陸域にはアカメヤナギの高木が認められたが、沖のヨシは株立ち状である。ヨシ群落内の混生種はシロネが顕著であった。
地形・土質の概況
 汀線は北を向いており、湖底地形の縦断面形状は凸型斜面であった。遷急点か24m付近に存在し、この遷急点を境にして湖底の勾配は1.1°→5.7°に変化した。
 26m付近には遷緩点があり、これより沖合では湖底の勾配が0.5°の緩斜面に推移していた。
 湖底堆積物の土質は、岸から沖合に向かって一様で、「砂」であった。
 湖底堆積物の硬さは、「砂」層の表層(深度0〜0.2m)では「軟らかい〜硬い」、下層(深度0.2〜0.5m)では「中位の〜硬い」である。
 11.4m地点において確認されたヨシの根域は、深度0.10〜0.50m、土質「砂」、硬さ「中位の〜硬い」であり、25.0m地点において確認されたヨシの根域は、深度0.05〜0.46m、土質「砂」、硬さ「中位の〜硬い」であった。
底質・粒度の概況
 ヨシ帯内では陸から沖に向けて、強熱減量と全窒素において若干の減少傾向がみられ、IL/N比が上昇する分布を示した。このことより、本測線では沖側において有機物の供給速度が若干多く、無機化速度が遅いことが示唆された。強熱減量と全窒素の絶対量は他の測線に比べて低い傾向であった。全リンは沖に向けてわずかに増加する傾向がみられ、本測線の底質がリン酸の難溶化を生じやすい可能性(FeやALを多量に含み、pHか酸性やアルカリ性に傾きやすいこと)が示唆された。また、酸化還元電位(ORP)からみる底質の状態は、沖に向けて低下する傾向(陸側+310mV、沖側+76mV)であったが、硫化物は沖側が低く、継続的に嫌気的になるような環境ではないと考えられた。また、粒度分布は陸〜沖間の差異は明確ではなく、ともにほとんどが細砂(0.074〜0.42mm)で構成される粒径の狭い分布であった。
 群落外沖合の地点における化学的性状は、ヨシ帯内より強熱減量と全窒素が小さい値を示しており、有機物の堆積が少ない状況であった。全リンはヨシ帯内より高く、リン酸の難溶化によるリンの蓄積が生じている可能性が示唆された。また、粒度分布はヨシ帯内と類似しており、明確な差異が見られなかった。
 本測線の底質の状況について相対的に比較すると、ヨシ帯内では陸側が沖側よりも有機物が蓄積しやすい底質環境であり、この傾向が沖合まで連続していると推察された。
 
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図3.4.25 D−1測線の植生・地質断面及びヨシの形状特性
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図3.4.26 D−1測線の底質及び粒度
〈備考〉横軸は基点からの距離(m)








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