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(2)B地区(北山田)
 B地区のヨシ茎個体総数は666本であり、平均茎個体数密度はコドラート平均で47.9本/m2であった。平均形状は、茎高が203.2cm、草丈が233.1cm、茎径が7.4mmであった。茎個体数密度は全地区総平均(51.6本/m2)に比べて3.7本少ないが、茎の平均形状は5地区の中で最大であった。
 1m2あたりの平均湿重量は2076g、乾重量は743g、ヨシ1本あたりの平均湿重量は41.5g、乾重量は14.1gであり、A〜E地区のほぼ最大であった。
 図3.4.10より、各測線とも、平均草丈は高いが、茎密度は比較的低いことが分かる。B地区はすべて植栽群落であり、B−1測線は沖域に砂地が広がり良好なヨシ群落であると確認されたが、B−2測線は沖域にヨシが点々と分布し株立ちが進行していた。B−3測線は、B−2測線付近に位置するが、沖域のヨシが流され砂浜が広がる状況となっていた。B−3測線では、波浪などの環境条件が影響していると思われる。
 
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図3.4.10 B地区のヨシの形状特性(茎密度と草丈)
 表3.4.4にはB地区における測線別の地形・土質の概況を示した。
表3.4.3 B地区における測線別のヨシ平均形状特性
地区・測線 コドラート数 ヨシ茎個体数
(本)
ヨシ平均茎個体数密度
(本/m2)
ヨシ平均茎高
(cm)
ヨシ平均草丈
(cm)
ヨシ平均茎径
(mm)
ヨシ湿重量 (g) ヨシ乾重量 (g)
設置総数 ヨシ存在点数 1m2
あたり
1本
あたり
1m2
あたり
1本
あたり
B地区 B-1 19 17 258 48.5
(39.7)
200.7 233.4 7.4 2478 49.8 632 12.8
B-2 20 16 332 54.3
(53.1)
208.4 238.1 7.4 2081 35.7 1039 17.3
B-3 18 6 76 29.2
(20.3)
189.0 210.5 7.1 925 33.4 268 9.3
B地区全体 57 39 666 47.9
(40.4)
203.2 233.1 7.4 2076 41.5 743 14.1
(注)ヨシ平均茎個体数密度の上段の数値は、ヨシ存在コドラートの個体数密度の算術平均値。
下段( )内の数値は、個体総数を測線または地区のヨシ存在コドラート総面積で除して求めた値。
表3.4.4 B地区における測線別の湖底地形及び土質の概況
地 点 B-1 B-2 B-3
湖底
地形
縦断面形状 凹形斜面 平坦面→凹形斜面
(15m地点に微凹地、
 22m地点に微高地)
平坦面→凹形斜面
(12m地点に微凹地)
傾斜変換点 遷緩点 (18m地点) 遷急点 (22m地点)
遷緩点 (37m地点)
遷急点 (22m地点)
遷緩点 (29m地点)
勾配 (度) 7.1→1.3 概ね水平→4.8→1.4 概ね水平→4.8→2.1
土質 表 層
下 層 砂、砂質シルト、シルト 砂、砂質シルト、シルト 砂、シルト

測線B−1 草津川南 
淡海財団植栽群落(消波なし)
ヨシの形状特性等
 ヨシ茎個体総数は258本であり、平均茎個体数密度はコドラート平均で48.5本/m2であった。平均形状は、茎高が200.7cm、草丈が233.4cm、茎径が7.4mmであった。茎個体数密度は、全地区総平均(51.6本/m2)より小さいがB地区では平均的であった。平均形状は総平均値に比べて大きい。1m2あたりの平均湿重量は2478g、乾重量は632g、ヨシ1本あたりの平均湿重量は49.8g、乾重量は12.8gであり、湿重量は全地区総平均(1506g/m2、29.9g/本)を大幅に上回ったが、乾重量はほぼ平均的であった。
 測線の断面変化をみると、基点から4.2〜34.6mの区間のコドラートにヨシの存在が認められた。過去にヨシが植栽されたのは概ね5〜10mの区間であることから、それ以外のヨシは、植栽後に自然的に分布を拡大したものと推察される。特に10〜15m区間のヨシは形状はあまり大きくないものの、密度の高い傾向が見られた。
植生の概況
 岸は石畳であり、メマツヨイグサ・イシミカワ・イヌゴマ等が見られた。岸から沖へ向けて、ヨシ、メヒシバ、ヨシの順で優占種が交代している。メヒシバ優占区間は硬い砂質地盤である。ヨシ群落内の混生種はメヒシバ・アメリカセンダングサ・タカサブロウ等が顕著であった。ヨシ群落内の混生種はカサスゲ・シロバナサクラタデ・オオオナモミ等、多様であった。
地形・土質の概況
 基点杭から4.2mまでは石畳である。汀線は南南西に向いており、湖底地形の縦断面形状は凹形斜面であった。
 遷緩点は18m付近にあり、この点を境にして湖底の勾配は7.1°→1.3°に変化した。湖底堆積物の土質は、36m付近までは表層が「砂」、下層が「砂+シルト」、それより沖合は「砂+シルト」であった。
 湖底堆積物の硬さは、36m付近までの「砂」層では「軟らかい〜硬い」、「砂+シルト」層では「中位の〜硬い」であり、それより沖合の「砂+シルト」層では「中位の」であった。湖底堆積物の厚さは、沖合に向かって厚くなる傾向がある。
 8.3m地点において確認されたヨシの根域は、深度0.30〜0.50m、土質「砂」、硬さ「硬い」であり、30.9m地点において確認されたヨシの根域は、深度0.10〜0.30m、土質「砂」、硬さ「中位の」であった。
底質・粒度の概況
 ヨシ帯内では陸から沖に向けて、強熱減量、全窒素及び全リンが増加傾向を示しており、沖側では有機物の供給が相対的に盛んであると考えられた。また、IL/N比はヨシ帯内では陸〜沖間の差異が見られず、本測線では沖側において有機物の無機化状況は同程度であると考えられた。また、酸化還元電位(ORP)からみる底質の状態は、陸側では好気的(+269mV)であるが、沖側では−78mVと、陸側に比べやや嫌気的な傾向であり、硫化物濃度も沖側で高くなる傾向がみられた。このことにより、沖側において嫌気的な環境になりやすいことが示唆された。また、粒度分布では沖側において粒径が小さくなる傾向が見られた。
 群落外沖合の地点における化学的性状は、全体としてヨシ帯沖側と類似した傾向を示しており、ヨシ帯内の底質環境と大きな違いが無いと考えられた。これは、ヨシ帯内沖側の調査地点と沖合の調査地点が地理的に近い(距離4.1m、地盤高0.04m差)状況であったことに由来すると思われる。
 本測線の底質の状況について相対的に比較すると、陸側から沖に向けて有機物が堆積しやすい傾向がみられ、この傾向は沖合まで連続していると推察された。
 
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図3.4.11 B−1測線の植生・地質断面及びヨシの形状特性
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図3.4.12 B−1測線の底質及び粒度
〈備考〉横軸は基点からの距離(m)








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