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測線A−4 矢橋帰帆島北 
自生群落(消波なし)
ヨシの形状特性等
 ヨシ茎個体総数は254本であり、平均茎個体数密度はコドラート平均で56.2本/m2であった。平均形状は、平均茎高が217.6cm、平均草丈が244.5cm、平均茎径が5.9mmであった。茎個体数密度は全地区総平均(51.6本/m2)よりやや多く、形状は草丈で40cmほど高かった。1m2あたりの平均湿重量は1457g、乾重量は795g、ヨシ1本あたりの平均湿重量は25.1g、乾重量は13.4gであり、概ね総平均程度と言える。
 測線の断面変化を見ると、茎個体数密度は11.4m地点の124本/m2をピークに、基点から2.7m〜23.5mの区間に比較的密度の高い、形状の揃ったヨシの生育が見られた。
植生の概況
 岸は石畳であり、セイタカアワダチソウ・メヒシバ・ヨモギ等が繁茂していた。岸から沖へ向けて、石組み上の無植生帯、ヨシ、ヒメガマ、チクゴスズメノヒエ優占区間と続く。ヨシ優占区間は植生高が比較的一定している。ヨシ群落内の混生種はシロネが顕著であった。
地形・土質の概況
 基点杭から2.2mまでは石畳である。汀線は南南西に向いており、湖底地形の縦断面形状は凸型凹形複合斜面(巨視的には直線斜面に近い凹形斜面)、湖底の勾配は2.5°であった。すなわち、沖合に向かって局所的な凹凸を繰り返しながら、緩やかに傾斜している斜面である。
 湖底堆積物の土質は、「砂」「砂+シルト」「シルト」の各層が不連続に入り交じっており、堆積環境の複雑さを示唆している。すなわち、本地点は琵琶湖に流入する水路(矢橋帰帆島の中間水路)に面しており、定常時・出水時における流況の変化か大きいことが推察される。
 湖底堆積物の硬さは、「砂」層では「中位の〜硬い」、「砂+シルト」層では「中位の〜硬い」、「シルト」層では「非常に軟らかい〜中位の」であった。
 7.7m地点において確認されたヨシの根域は、深度0.10〜0.20m、土質「砂」、硬さ「中位の〜硬い」であり、18.8m地点において確認されたヨシの根域は、深度0.10〜0.20m、土質「砂+シルト」、硬さ「中位の〜硬い」であった。
底質・粒度の概況
 ヨシ帯内では陸から沖に向けて、強熱減量と全窒素及びIL/N比が沖に向けてやや高くなる傾向がみられたが、この変化はわずかであり、有機物の堆積状況はほぼ一定であると考えられた。酸化還元電位(ORP)からみる底質の状態は、陸側では好気的(+132mV)であるが、沖側では大きく低下(+17mV)しており、硫化物濃度も沖側で高くなる傾向がみられた。このことにより、沖側において嫌気的な環境になりやすいことが示唆された。また、粒度分布は粒径幅が比較的小さい傾向があり、陸〜沖間の明確な差異は見られなかった。
 群落外沖合の地点における化学的性状は、強熱減量、全窒素及び全リンがヨシ帯沖側より低濃度であり、IL/N比がヨシ帯内より高かった。このことより、ヨシ帯沖では、有機物の供給速度も分解速度も遅い可能性が示唆された。粒度分布は、ヨシ帯内と明確な差異は見られなかった。
 本測線の底質の状況について相対的に比較すると、陸側から沖に向けて有機物の堆積が若干多くなる傾向がみられたが、この傾向は沖合まで連続しておらず、沖合では有機物堆積が少ない状況であった。沖合での有機物堆積が少ない原因としては、本調査地点が琵琶湖に流入する水路(矢橋帰帆島の中間水路)に面しており、出水時の水流により底質上の堆積物が流失しやすい可能性があると推察される。
 
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図3.4.8 A−4測線の植生・地質断面及びヨシの形状特性
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図3.4.9 A−4測線の底質及び粒度
〈備考〉横軸は基点からの距離(m)








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