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(1)A地区(南山田)
 A地区のヨシ茎個体総数は953本であり、平均茎個体数密度はコドラート平均で49.2本/m2であった。平均形状は、茎高が176.8cm、草丈が204.4cm、茎径は4.7mmであった。茎個体数密度及び茎径の値がA〜E全地区の総平均値(51.6本/m2、6.0mm)に比べて2.4本/m2、1.3mm低かったが、草丈はほぼ総平均値(200.6cm)と同値であった。
 1m2あたりの平均湿重量は1250g、乾重量は645gであり総平均値(1506g、665g)を下回った。ヨシ1本あたりの平均湿重量は26.1g、乾重量は13.1gであり総平均値(29.9g、12.7g)程度の値であった。
 図3.4.1より、A−2測線の茎密度が16測線中2番目に高いことが解る。また、A−1、A−3測線は茎密度が比較的小さい結果となった。A−1、A−4測線は自生ヨシ群落であり、A−1測線沖部では少し株立が確認された。A−4測線は帰帆島北橋付近にあり、水路の入り口付近にあるためか、株立は認められなかった。A−2測線では沖方向に良好なヨシ群落が認められたが、A−3測線では、陸域でアレチウリなどの侵入によりヨシの衰退が見られた。
 
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図3.4.1 A地区のヨシの形状特性(茎密度と草丈)

  表3.4.2にはA地区における測線別の地形・土質の概況を示した。
表3.4.1 A地区における測線別のヨシ平均形状特性
地区・測線 コドラート数 ヨシ茎個体数
(本)
ヨシ平均茎個体数密度
(本/m2)
ヨシ平均茎高
(cm)
ヨシ平均草丈
(cm)
ヨシ平均茎径
(mm)
ヨシ湿重量 (g) ヨシ乾重量 (g)
設置総数 ヨシ存在点数 1m2
あたり
1本
あたり
1m2
あたり
1本
あたり
A地区 A-1 15 10 126 30.6
(26.5)
188.8 212.2 7.2 1095 32.2 452 13.4
A-2 18 11 458 79.0
(91.6)
150.3 177.8 3.2 1327 18.8 652 8.5
A-3 16 10 115 36.1
(28.8)
179.1 213.6 5.5 1134 28.9 696 17.6
A-4 15 9 254 56.2
(56.4)
217.6 244.5 5.9 1457 25.1 795 13.4
A地区全体 64 40 953 49.2
(52.2)
176.8 204.4 4.7 1250 26.1 645 13.1
(注)ヨシ平均茎個体数密度の上段の数値は、ヨシ存在コドラートの個体数密度の算術平均値。
下段( )内の数値は、個体総数を測線または地区のヨシ存在コドラート総面積で除して求めた値。
表3.4.2 A地区における測線別の湖底地形及び土質の概況
地 点 A-1 A-2 A-3 A-4
湖底地形 縦断面形状 凹形斜面
(18m地点に局所的微凹地)
平坦面→直線斜面 直線斜面 凸形凹形複合斜面
(全体的には、凹形斜面)
傾斜変換点 遷緩点 (26m地点) 遷急点 (20m地点) 遷急点 (10,22m地点)
遷緩点 (12,24m地点)
勾配 (度) 4.3→0.7 概ね水平→5.7 2.9 2.5
土質 表 層 砂質シルト 礫混り砂 砂 (18〜23m間は砂質シルト)
下 層 砂質シルト、シルト 砂質シルト、シルト 砂、砂質シルト、シルト 砂質シルト、シルト

測線A−1 南山田駐車場南 
自生群落(消波なし)
ヨシの形状特性等
 ヨシ茎個体総数は126本であり、平均茎個体数密度はコドラート平均で30.6本/m2であった。平均形状は、平均茎高が188.8cm、平均草丈が212.2cm、平均茎径が7.2mmであった。茎個体数密度は総平均(51.6本/m2)を大幅に下回ったが、形状は総平均値(茎高172.9cm、草丈200.6 cm,茎径6.0mm)を上回った。
 1m2あたりの平均湿重量は1095g、乾重量は452gであり、総平均値(1506g、665g)をかなり下回るとともに、A地区内においても最小であったが、ヨシ1本あたりでみると、平均湿重量は32.2g、乾重量は13.4gであり、総平均値(29.9g、12.7g)を若干上回る値であった。
 測線の断面変化では、ヨシの生育するコドラートは基点から5〜25mの間に存在した。その間、茎個体数密度は全般的に25本/m2前後のところが多いが、22.9m地点のコドラートは120本/m2と、高密度が計測された。これは株立ち状の茎が密集状態にあるヨシが計測されたものである。草丈、茎径ともに11.5m地点で最も高くなり、その後16.2m地点まで一旦減少し、再び増加する傾向が見られた。
植生の概況
 岸は石畳でヨモギ・シロネ等の刈取草地となっており、帰化植物のアレチウリの侵入が顕著であった。岸から沖へ向けて、ヨシの密度は低くなり、中央部にはマコモが優占する区間も出現した。マコモ帯では少々株立ち状のヨシも見られた。ヨシ群落内の混生種は少なかった。
地形・土質の概況
 基点杭から5.1mまでが石畳である。汀線は西に向いており、湖底地形の縦断面形状は凹形斜面で、基点から18m地点に局所的微凹地が存在した。
 遷緩点は26m付近にあり、この点を境にして、湖底の勾配は4.3°→0.7°に変化している。
 湖底堆積物の土質は、岸から沖合に向かって一様で、「砂十シルト」である。
 湖底堆積物の硬さは、表層(深度0〜0.2m)では「軟らかい〜中位の」、下層(深度0.2〜1.0m)では「中位の〜硬い」であり、11.6m地点において確認されたヨシの根域は、深度0.03〜0.45m、土質「砂+シルト」、’硬さ「軟らかい〜硬い」に該当した。
底質・粒度の概況
 ヨシ帯内では陸から沖に向けて全窒素および全リン等が減少傾向を示した。一般に炭素、窒素、リンを含む有機物は生物由来である場合が多いことから、陸側では生物由来の有機物の供給が相対的に盛んであると考えられる。また、有機物分解の程度に係る相対的指標として用いる炭素窒素比(C/N)の代わりに、IL(強熱減量)/N比を求め。分解(無機化)の状況を考察すると、本測線では陸側におけるIL/Nが相対的に低い状態であり、陸側において有機物の無機化が進行していると考えられた。また、酸化還元電位(ORP)からみる底質の状態は、嫌気的ではないと考えられた。また、粒度分布では陸側と沖側で明確な違いは見られなかった。
 群落外沖合の調査地点における化学的性状は、概ねヨシ帯内沖側の地点と類似した傾向を示しており、粒度分布では、ヨシ帯内に比べてシルト質の割合が若干高くなっていたが全体としてヨシ帯内と明確な差異は無かった。これらのことより、沖合調査地点の底質環境は、ヨシ帯内の底質環境と大きな違いが無いと考えられた。
 これらのことより、本測線の底質の状況について相対的に比較すると、ヨシ帯内陸側においては、有機物の供給と分解が好気的環境において盛んに行われているが、結果的に有機物が堆積しやすい環境であること、ヨシ帯内沖側および沖合の底質環境は類似していることが推測される。
 
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図3.4.2 A−1測線の植生・地質断面及びヨシの形状特性
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図3.4.3 A−1測線の底質及び粒度
〈備考〉横軸は基点からの距離(m)








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