日本財団 図書館


(4)底泥の化学的特性に係る調査結果
 各測線において、ヨシ群落の陸域、ヨシ群落の沖域、ヨシ群落外部の原則3カ所で採取した底泥試料(計50試料)について、泥温、含水率、pH、強熱減量(IL)、全窒素(N)、全リン(P)、硫化物、酸化還元電位の分析を行った。
 分析結果の全体集計値を表3.3.12に示す。これによれば、泥温は平均26.7℃でありデータの変動が非常に小さい。pHは平均がほぼ中性付近の値であり変動も比較的小さいが、一部にアルカリ寄り(最大8.3)、酸性寄り(最小5.0)のデータも見られた。強熱減量、全窒素、硫化物、酸化還元電位などは、平均値に比しデータの変動が大きい結果となった。
表3.3.12 底質分析結果の全体集計結果
  泥温
(℃)
含水率
(%)
pH 強熱減量 (%) 全窒素 (mg/g・dry) 全リン (mg/g・dry) 硫化物(mg/g・dry) 酸化還元電位ORP
(mV)
IL/N
総平均 26.7 24.1 6.7 2.9 0.57 0.213 0.10 83 6.6
最大値 29.0 56.6 8.3 14.1 3.90 0.530 1.20 383 14.0
最小値 24.5 4.2 5.0 0.5 0.05 0.050 0.01 -188 3.0
標準偏差 0.9 10.5 0.7 3.1 0.82 0.130 0.18 156 2.4
 
 地区別のデータ集計結果を表3.3.13に、またこれをグラフ化したものを図3.3.14に示す。泥温、は地区ごとの差が小さく地区内での変動も小さい傾向が見られた。pHはA地区とE地区がほぼ中性、B、C、D地区はこれよりやや低めの値を示した。強熱減量と全窒素はD、E地区が高く、この2地区が平均値を上回り、かつデータ変動の大きい結果が示された。C地区は概ね平均値程度、A及びB地区は平均値以下であった。全リンと硫化物はE地区が特に高く、C及びD地区は平均値程度、A及びB地区ではこれらの項目も平均値を大きく下回った。酸化還元電位は、E地区、次いでB地区が高く、D地区が最小となった。IL/N比(強熱減量/全窒素)はA→B→C→D→E地区の順に低くなる傾向が見られた。
表3.3.13 底質分析結果の地区別集計結果
  泥温
(℃)
含水率
(%)
pH 強熱減量
(%)
全窒素
(mg/g・dry)
全リン
(mg/g・dry)
硫化物
(mg/g・dry)
酸化還元
電位ORP
(mV)
IL/N
平均値 A地区 26.8 21.7 2.5 2.5 0.32 0.131 0.06 74 8.4
B地区 26.9 20.4 6.5 1.6 0.22 0.097 0.07 107 8.1
C地区 26.8 24.6 6.6 3.0 0.48 0.218 0.10 62 6.0
D地区 26.5 29.8 6.5 3.9 0.89 0.215 0.11 15 5.8
E地区 26.4 25.0 6.8 3.8 1.01 0.417 0.18 153 4.1
標準偏差 A地区 0.8 7.3 0.7 1.6 0.28 0.041 0.05 158 2.1
B地区 0.7 9.9 0.5 1.1 0.13 0.038 0.05 186 2.4
C地区 0.3 6.7 0.5 2.0 0.30 0.066 0.10 68 0.7
D地区 1.4 11.6 0.5 4.8 1.19 0.106 0.10 164 2.2
E地区 0.9 13.4 0.7 4.2 1.19 0.064 0.35 141 0.6
 
(拡大画面: 134 KB)
z1082_02.jpg
図3.3.14 底質分析結果の地区別平均値等の比較
 測線別のデータの集計結果を表3.3.14に示す。含水率はD−2、D−3測線等で高く、B−3、A−3測線等で低い値を示した。強熱減量も同じくD−2、D−3測線等で高いが、低い値を示したのはA−4、D−1、B−3測線等であった。全窒素、全リンもD−2、D−3測線で高い傾向があり、加えてE地区でも高い値を示した。D−2、D−3測線及びE地区の各測線にはいずれも消波柵が設置されている。さらに、酸化還元電位はD−2、D−3測線でマイナスを呈した。
表3.3.14 底質分析結果の測線別集計結果
自生植栽 消波施設 測線 泥温
(℃)
含水率
(%)
pH 強熱減量
(%)
全窒素
(mg/g・dry)
全リン
(mg/g・dry)
硫化物
(mg/g・dry)
酸化還元
電位ORP
(mV)
IL/N
A-1 26.5 26.0 7.0 3.5 0.53 0.130 0.07 163 8.5
A-2 27.0 21.8 7.1 3.5 0.38 0.180 0.02 46 9.4
A-3 27.3 16.4 6.5 1.8 0.21 0.113 0.06 115 8.2
A-4 26.3 20.8 7.3 0.8 0.12 0.107 0.06 32 7.7
B-1 26.6 26.0 6.8 1.8 0.23 0.090 0.10 59 7.8
B-2 26.7 21.9 6.2 2.1 0.27 0.113 0.08 73 7.4
B-3 27.5 13.4 6.4 1.0 0.15 0.087 0.04 189 9.0
C-1 26.5 24.2 6.5 3.0 0.48 0.213 0.04 46 5.7
C-2 26.8 19.6 6.7 1.8 0.30 0.233 0.19 56 6.2
C-3 27.0 30.0 6.4 4.0 0.65 0.207 0.05 85 6.2
D-1 27.0 24.9 6.4 0.9 0.17 0.105 0.05 163 6.0
D-2 27.2 32.9 6.5 5.3 1.20 0.230 0.13 -94 5.9
D-3 25.3 31.8 6.6 5.6 1.32 0.310 0.14 -24 5.4
E-1 26.3 19.9 7.1 1.8 0.48 0.440 0.02 28 3.8
E-2 26.7 28.0 6.7 5.0 1.22 0.393 0.04 141 4.3
E-3 26.3 26.7 6.8 4.5 1.25 0.418 0.40 256 4.1
 
 陸域・沖域・ヨシ外部別、自生・植栽別、消波施設有無別の集計結果を表3.3.15に示す。これを見ると、含水率はヨシ群落内部が約20%であるのに対して外部は30%と高い傾向を示した。自生群落が植栽群落に比べて1.4%高く、消波施設有りが無しに比べて3.8%高い結果となった。消波施設有りで強熱減量、全窒素、全リン、硫化物が高い値を示した。消波施設は、土壌の有機成分を高く保つ傾向にあるものと思われる。酸化還元電位は陸域→沖域→植生帯外部の順に値が顕著に低下し、外部の平均値はマイナスを示した。また、自生と植栽の比較では自生群落が植栽群落に比べて30高い値を示した。
表3.3.15 底質分析結果の陸域・沖域・外部別、自生・植栽別、消波施設有無別の集計結果
  泥温
(℃)
含水率
(%)
pH 強熱減量
(%)
全窒素
(mg/g・dry)
全リン
(mg/g・dry)
硫化物
(mg/g・dry)
酸化還元
電位ORP
(mV)
IL/N
陸域 26.4 21.6 6.4 2.9 0.71 0.188 0.08 209 5.5
沖域 26.7 20.8 6.8 1.8 0.28 0.204 0.08 49 7.2
外部 26.9 30.3 6.9 4.2 0.77 0.246 0.15 -4 6.8
自生 26.6 24.9 6.8 2.7 0.53 0.230 0.05 102 6.1
植栽 26.7 23.5 6.6 3.0 0.58 0.199 0.12 72 6.9
消波有 26.4 26.5 6.7 4.0 0.98 0.342 0.17 71 4.9
消波無 26.8 22.7 6.7 2.3 0.32 0.134 0.06 91 7.6
 
 以上の結果より、底質に関しては、消波施設の有無が変動要因として関与している傾向がうかがえた。








日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION