[3]地盤高別の集計
ヨシ茎個体数密度、コドラートの占める面積、草丈、茎径の地盤高別平均値の分布を図3.3.8に示す。
図3.3.8 地盤高別のヨシの平均値分布
本調査において、ヨシの分布は地盤高がB.S.L.(琵琶湖標準水位)−130cm〜+40cmで確認できた。
ヨシの生育が確認されたコドラートの総面積は70.75m2であり、うち85%がB.S.L.−80cm〜+20cmの地盤高に存在した。
平均茎個体数密度(対象地盤高のヨシ存在コドラートの平均)についてみると、B.S.L.−90cm及び−70cm〜−30cmの地盤高において、平均値(51.6本/m2)を上回る密度となった。また、沖方向、陸方向に進むにつれて低密度となる傾向を示した。
ヨシの平均草丈は、全般的にみて地盤高が高くなるにつれて高くなる傾向を示した。
逆に、平均茎径は地盤高が高くなるにつれて小さくなる傾向がややみられた。
[4]自生・植栽別の集計
ヨシ茎個体数密度、草丈、茎径の自生・植栽別の平均値を表3.3.5に示す。現在生育しているヨシについて、過去に植栽されたものが継承されているのか、それとも自生に置き換わったものかの判断は困難であることから、ここでは便宜上、過去の植栽帯の幅の中に位置するコドラートのヨシを植栽ヨシ、そこから派生的に拡がったものも含めてそれ以外のコドラートのヨシを自生ヨシとして区分した。
表3.3.5 自生・植栽別のヨシの特性値の比較
区分 |
自生ヨシ |
植栽ヨシ |
茎固体数密度(本/m2) |
草丈
(cm) |
茎径
(mm) |
茎固体数密度(本/m2) |
草丈
(cm) |
茎径
(mm) |
コドラード 平均 |
総茎数/面積 |
コドラード 平均 |
総茎数/面積 |
平均値 |
49.8 |
50.4 |
200 |
5.7 |
54.2 |
51.5 |
201 |
6.2 |
最大 |
224 |
|
423 |
13.0 |
312 |
|
435 |
13.2 |
最小 |
4 |
|
5 |
0.1 |
2 |
|
10 |
0.1 |
標準偏差 |
40.4 |
|
90 |
2.3 |
55.3 |
|
85 |
2.3 |
備考 |
コドラード数
n=85 |
コドラード面積
38.50m2 |
ヨシ総茎数
n=1939 |
コドラード数
n=57 |
コドラード面積
32.25m2 |
ヨシ総茎数
n=1661 |
この結果、自生ヨシのサンプル数は85コドラートでヨシ数1939本、対象面積(コドラート面積計)は38.50m2であり、植栽ヨシのサンプル数は57コドラートでヨシ数1661本、対象面積は32.25m2であった。
ヨシ茎個体数密度は、自生ヨシがコドラート平均値で49.8本/m2、植栽ヨシが54.2本/m2となり、植栽ヨシが自生ヨシを平均5本ほど上回る結果となった。
平均草丈も植栽ヨシが自生ヨシを1cm上回り、平均茎径も植栽ヨシの方0.5mm大きい値を示した。
また、草丈のばらつきは自生ヨシにおいて大きいが、茎径のばらつきは自生と植栽とで差は見られなかった。
自生・植栽別にヨシ茎個体数密度、草丈、茎径の地盤高別の平均値を求め、その分布を図3.3.9に示した。この図より次のことが読みとれる。
(拡大画面: 75 KB)
図3.3.9 自生・植栽別の地盤高別ヨシの平均値分布
(a)ヨシ茎個体数密度
自生ヨシは地盤高B.S.L.−130cmまで分布しているのに対して、植栽ヨシはB.S.L.−100cm以深では生育が確認されていない。自生ヨシの分布の特徴としては、B.S.L.−40cm〜−30cm付近で密度が高く、B.S.L.−20cm〜+10cm付近の密度が相対的に低いことが挙げられる。一方で、植栽ヨシではB.S.L.−90cmに特異的に高い密度が見られるが、これはB−2測線39.4m地点の密度が300本/m2を超える値を示したことによる。これは当該測線のヨシ群落外縁部において、局所的に高密度を呈する株立ち状のヨシが計測されたことによるものである。これ以外の特徴としては、植栽ヨシではB.S.L.−70cmにピークがあり、それ以高のB.S.L.−60cm〜0cmの密度は比較的なだらかで変化が少ない。また、B.S.L.±20cmの間の植栽ヨシの密度は自生ヨシを上回った。
(b)ヨシ草丈
草丈ではB.S.L.−80cm〜10cmの間で自生ヨシの方が植栽ヨシよりも平均的に20cmほど高い傾向が見られた。自生、植栽とも、地盤高が高くなるにつれて草丈の増加が認められた。
(c)ヨシ茎径
自生と植栽で顕著な差は見られないが、植栽帯の存在しないB.S.L.−100cm以深において、自生ヨシの茎径が増加する傾向が認められた。
[5]消波施設の有無別の集計
ヨシ茎個体数密度、草高、茎径の消波施設有無別の平均値を表3.3.6に示す。ここに、消波施設有りのデータは消波施設の設置されている測線(C−1、C−2、D−2、D−3、E−1、E−2、E−3)のコドラート、消波施設無しのデータはそれ以外のコドラートのデータとした。
表3.3.6 消波施設有無別のヨシの特性値の比較
区分 |
消波施設無し |
消波施設有り |
茎個体数密度(本/m2) |
草丈
(cm) |
茎径
(mm) |
茎個体数密度(本/m2) |
草丈
(cm) |
茎径
(mm) |
コドラート 平均 |
総茎数/面積 |
コドラート 平均 |
総茎数/面積 |
平均値 |
50.3 |
49.0 |
212 |
6.0 |
54.6 |
54.5 |
184 |
5.9 |
最大 |
312 |
|
435 |
13.2 |
276 |
|
392 |
12.4 |
最小 |
2 |
|
5 |
0.1 |
7 |
|
7 |
0.4 |
標準偏差 |
47.2 |
|
89 |
2.5 |
46.5 |
|
83 |
2.1 |
備考 |
コドラート数
n=100 |
コドラート面積
46.75m2 |
ヨシ総茎数
n=2292 |
コドラート数
n=42 |
コドラート面積
24.00m2 |
ヨシ総茎数
n=1308 |
消波施設無しの測線に生育するヨシのサンプル数は100コドラートでヨシ数2292本、対象面積は46.75m2であり、消波施設有りの群落に生育するヨシのサンプル数は42コドラートでヨシ数1308本、対象面積は24.00m2であった。
ヨシ茎個体数密度は、コドラート平均値で消波施設無しのヨシが50.3本/m2、消波施設有りヨシが54.6本/m2となり、消波施設有りの方が4.3本/m2高い結果となった。
一方、平均草丈は28cm消波施設無しのヨシが高く、平均茎径も0.1mm消波施設無しのヨシが太い結果となった。
ヨシ茎個体数密度、草丈、茎径の消波施設の有無別の地盤高別平均値を求め、図3.3.10に示した。これより次のことが読みとれる。
(拡大画面: 74 KB)
図3.3.10 消波施設の有無別の地盤高別ヨシの平均値分布
(a)ヨシ茎個体数密度
消波施設有りのヨシは、地盤高B.S.L.−80cm〜+10cmの範囲に分布し、消波施設無しのヨシはB.S.L.−130cm〜+40cmに分布している。B.S.L.−40cm〜−20cmの間では消波施設無しの方が消波施設有りのヨシ密度を上回った。
(b)ヨシ草丈
B.S.L.−80cm〜−10cmにおいて、消波施設無しのヨシの草丈の方が消波施設有りの草丈よりも30cm〜50cm程度高い結果となった。この分類の場合も、前記の自生・植栽別の場合と同様、地盤高の上昇に伴う草丈の増加が認められた。
(c)ヨシ茎径
茎径に関しては、消波施設の有無による差があまり認められない結果となった。