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(2)ヨシ生育特性の調査結果
[1]全体集計結果
 ヨシの生育特性として各ヨシ存在コドラートにおいて計測した形状特性値の全体集計結果を表3.3.2に示す。
表3.3.2 ヨシ存在コドラートにおけるヨシの形状特性に係る全体集計結果
地区・測線 コドラート数 ヨシ茎
個体数
(本)
ヨシ平均
茎個体数
密度
(本/m2)
ヨシ
平均
茎高
(cm)
ヨシ
平均
草丈
(cm)
ヨシ
平均
茎径
(mm)
ヨシ湿重量(g) ヨシ乾重量(g)
設置
総数
ヨシ
存在
点数
1m2
あたり
1本
あたり
1m2
あたり
1本
あたり
A地区 64 40 953 49.2 176.8 204.4 4.7 1250 26.1 645 13.1
(52.2)
B地区 57 39 666 47.9 203.2 233.1 7.4 2076 41.5 743 14.1
(40.4)
C地区 48 19 856 67.2 156.4 182.7 6.4 1522 21.0 732 9.3
(74.4)
D地区 44 24 466 42.2 155.1 179.7 5.9 1049 26.3 459 11.4
(36.5)
E地区 22 20 659 56.2 170.5 200.5 5.8 1440 27.3 736 14.2
(56.1)
全地区 235 142 3600 51.6
(50.9)
172.9 200.6 6.0 1506 29.9 665 12.7
(注)ヨシ平均茎個体数密度の上段の数値は、ヨシ存在コドラートの個体数密度の算術平均値。
下段( )内の数値は、個体総数を測線または地区のヨシ存在コドラート総面積で除して求めた値。
a)生育密度
 調査した全235のコドラートのうち、ヨシが存在したのは142コドラートであり、そのヨシ総存在数は3,600本であった。
 ヨシ存在コドラートのヨシ茎個体数密度の全体平均値は51.6本/m2(最大312、標準偏差σ=47.0本/m2)である。
 ヨシの茎個体数密度の算出の方法としては、上記のようにコドラートの値を算術平均する方法と、もうひとつには全体のヨシ茎総個体数を調査したコドラートの総面積で除して求める方法がある。前者は個々のコドラートの値を独立性のある個別データとして扱った場合のもの、後者は地区全体をコドラートサンプルデータの集合による総体として捉えた場合のものである。本調査では、次章の分析(解析)において生育特性と環境条件との関係を、主としてコドラートごとの値に基づいて検討することから、前者の算出方法を基本とするが、対象とする地区全体をひとまとまりとして、他の地区と比較する場合には後者の見方による方が妥当な場合もある。このため、表3.3.2には参考として後者の方法により算出した平均密度も( )で表示した。これによる平均ヨシ茎個体数密度は50.9本/m2であり、先の値よりも若干低めの値となった。
b)茎高・草丈・茎径
 平均形状は、茎高(第一葉始点までの高さ)が172.9cm(最大402.0、σ=81.5cm)、草丈(ヨシ最高点高さ)が200.6cm(最大435.0、σ=87.8cm)であり、茎径は6.0mm(最大13.2、σ=2.3mm)であった。
c)重量
 ヨシの湿重量の全体平均は、1m2あたりでは1506g/m2、ヨシ茎1本あたりでは29.9g/本であった。
 同様に乾重量は、1m2あたりでは665g/m2、ヨシ茎1本あたりでは12.7g/本であった。
d)既存データとの比較
 本調査に類似した調査例として、1982年に滋賀県琵琶湖研究所が行ったヨシ群落の調査が挙げられる。この調査は、琵琶湖周辺の13地点の水ヨシ(水深10cm〜50cm)を対象に、1982年7月下旬に行われた。これらの結果を本調査結果と比較し、表3.3.3に示す。
 2001年に実施した本調査結果では、1982年に比べ平均茎個体数密度は+5.3%(1982年を100%とする)、平均草丈は+3.4%、茎径は−6.8%、1m2あたりの乾燥重量は−9.0%となった。
表3.3.3 1982年と2001年(本調査)のヨシの形状比較
区分 茎固体数密度(本/m2) 草丈(cm) 茎径(mm) 乾重量(g/m2)
1982年 2001年 1982年 2001年 1982年 2001年 1982年 2001年
平均値 49.0 51.6 194.0 200.6 6.4 6.0 731.0 665.0
*:湖岸システムの機能とその評価に関する総合研究報告書、1987年3月 滋賀県琵琶湖研究所
[2]調査地区の比較
 調査地区ごとのヨシの形状に関するデータの集計結果を図3.3.3に示す。
図3.3.3 地区別のヨシの平均形状の比較
 平均茎個体数密度は、C地区が最も高く、67.2本/m2、D地区が最も低い42.2本/m2であった。
 茎高と草丈は、ともにB地区が最も高く、茎径もB地区が最も太い結果となった。B地区には、背が高く茎も太い形状の大きなヨシが比較的低密度で生育している結果となった。
 同様の観点で見ると、A地区は背丈が平均的であるものの茎の細いヨシが比較的低密度で、C地区は背丈は低いが茎径は平均的なヨシが高密度で、D地区は背丈は低いが茎径は平均的なヨシが低密度で生育し、E地区は形状も密度も平均的なヨシが生育している結果となった。
 1m2当たりのヨシの重量を図3.3.4に、ヨシ1本当たりの重量を図3.3.5に示す。1m2当たりの重量ではB地区の湿重量が最も高く平均で2076g/m2、次いでC地区の1522g/m2であったが、乾重量ではA、B、C、Eの4地区で大きな差の見られない結果となった。B地区のヨシは比較的低密度であるものの、背が高く茎が太かったことが影響している。湿重量、乾重量ともに最も小さい値を示したのはD地区であり、背丈が低く密度も低いことが影響したと思われる。一方、ヨシ1本あたりの重量でも、上記の理由によりB地区の湿重量が最大を示し、41.5g/本であった。A、D、E地区は湿重量、乾重量ともに大きな差はなく、C地区が最小(湿重量21.0、乾重量9.3g/本)となった。
 
図3.3.4 地区別の1m2当たりのヨシの重量
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図3.3.5 地区別のヨシ1本当たりの重量
 地区別の調査結果が、過去の報告値に比べて、どのような位置にあるのかを検討するために、琵琶湖研究所が1982年7月に実施した調査結果を表3.3.4に、調査地点を図3.3.6に示す。
表3.3.4 琵琶湖周辺におけるヨシの形状平均
  調 査
地区名
調査地
コード
平均茎密度
(本/m2)
平均草丈
(cm)
平均茎径
(mm)
本調査 南山田 A 52.2 204.4 4.7
北山田 B 40.4 233.1 7.4
木浜 C 74.4 182.7 6.4
近江八幡 D 36.5 179.7 5.9
今津 E 56.1 200.5 5.8
琵琶湖研究所調査 長命寺 1 33.0 250.0 8.8
新海 2 77.0 135.0 4.8
南浜 3 41.0 242.0 5.6
早崎 4 63.0 126.0 5.3
塩津西 5 49.0 206.0 6.2
大浦 6 101.0 58.0 4.4
浜分 7 51.0 200.0 5.8
外ヶ浜 8 32.0 182.0 6.9
萩の浜 9 45.0 197.0 5.6
わに浜 10 50.0 174.0 6.7
雄琴 11 27.0 253.0 6.8
津田江 12 38.0 223.0 7.9
北山田 13 60.0 227.0 6.9
*:湖岸システムの機能とその評価に関する総合研究報告書
1987年3月、滋賀県琵琶湖研究所
A〜Eは本調査、1〜13は1982年に琵琶湖研究所が実施した調査地点である。
 
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図3.3.6 1982年琵琶湖研究所による調査地点及び本調査地点
 図表に示されるように、1982年の調査は北湖で10地点、南湖で3地点の計13地点で実施されたものである。この既往調査によるヨシの茎個体数密度は大浦地区(コード6)で最大(101.0本/m2)であり、最小は雄琴地区(27.0本/m2、コード11)であった。大浦地区の平均草丈は58.0cmと低く、小さなヨシが密集して生えていたものと思われる。
 地区ごとの平均茎個体数密度と平均草丈との関係を示したのが図3.3.7である。本調査の対象となったA〜E地区の平均値は、1982年の既往調査のばらつき内に収まっていることが読み取れる。
 
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*:湖岸システムの機能とその評価に関する総合研究報告書1987年3月、滋賀県琵琶湖研究所
図3.3.7 調査地区のヨシの形状特性(個体数密度及び草高)








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