日本財団 図書館


8月10日(金)
本日のスケジュール・内容
1) CapasII保健所支部(BHS)見学
2) CapasII保健所(RHU)見学
3) Tarlac Provincial Hospital訪問
4) Anao Municipal訪問
5) フィルムショーに参加
 
 Capas町へ向かうバスの中で、柴田さんに本日のポイントを5つ挙げていただいた。
*Midwifeはどんな訓練を受けているのか?
 ・地方医務局(RHO)、州保健局(PHO)どちらかの特別プログラムで訓練を受けている
*母親たちはprenatal checkやunder five clinicのことをどう思っているのか?
 ・すごく必要なもので、助かっている
*地方分権はうまくいっているのか?
 ・給料や機材のサポートをうまく続けられるかがポイントで、実際はregionごとで交通費が出たり出なかったりと統一性はないものの、うまくいっている
*助産婦の仕事はどうか?
 ・1日8時間が基本で、夜中に呼び出されれば出て行く
*リファー(第1次医療、2次、3次)システムの様子
 ・Midwifeの地位は高く、紹介状を書く権利があるとのこと
 ・1次、2次、3次と進むに従って高度な医療になっているが、多くの人は家に近いところを選ぶので、人によっては初めから病院に行く
 
1) CapasII保健所支部(BHS)見学
 二つのグループ(Sta.LuciaとO'donnellI)に分かれてBHSを見学した。
 a) Sta.Lucia
 b) O'donnellI
 
 a) Sta.Lucia
 MidwifeのMrs.Frida Manalotoから説明を受けた。
 母親たちはunder five clinic flow line (具体的にはO'donnell I の欄参照)に従って診察を受けていた。自発的にカルテを棚から取り出し、乳幼児の体重も自分で量っていた。人手が少ないせいもあるだろうが、BHSがうまく機能していることを実感した。また、壁には  “ENVIRONMENTAL SANITATION”や “LEPROSY CONTROL PROGRAM” 、薬草(これのみタガログ語)などについてのポスターが貼られていた。
(担当:山田祐介)
 
 b) O'donnell I
 O'donnell I には医師1名、看護婦1名、助産婦2名、ヘルスワーカー8名が働いており全員が女性だった。このスタッフで人口約5,000人を見ていることになる。O'donnell I へ行った我々の班は、最初にmidwifeであるMagdelena Simbulanさんよりunder five clinic projectについて説明を受けた。Under five clinic projectとは0〜59ヶ月、つまり5才未満の乳幼児を対象としたプログラムで、mortality, mobility, malnutritionの向上を目的とし、O'donnell I では具体的に以下の8つの項目に添って行われている(under five clinic flow line)。
 
 Registration
 ↓
 Growth monitoring
 ↓
 Anemia defection
 ↓
 Assessment
 ↓
 Nutrition
 ↓
 Family planning
 ↓
 Immunization
 ↓
 Consultation
 
 
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Under Five Clinic Flow Line ポスター
 
 
 私たちが訪問した日は、一ヶ月に一度のimmunizationを受けられる日ということもあり沢山の母子が来ていた。母子は、まずは屋外の机でregistrationを行う。子供一人一人のchild numberが登録されており、“Mother&Child Health Record  Book”と呼ばれる、日本で言うところの母子手帳を見せることによりスムーズに行われる。次に屋内に移り、体重を量り、母子手帳に記載されている標準的成長曲線や過去の記録と比べることにより、growth monitoringが行われる。体重増加が低い場合にはnutritionの指導を受けることになる。次に医師のところに行き、anemia detectionや現在の健康状態の最終的なassessmentを医師が行う。最後に年齢に応じて、BCG, Hepatitis B, DPT, Polio, Measles, Tetanus toxoid (母親に対しての)のimmunizationを受ける。我々学生もPolioの経口投与をさせてもらった。これらのデータがすべて一冊の母子手帳に記録として残すことができ、乳幼児の健康を把握する上で大変役に立っていることを実感した。
 この施設では、主に母親を対象にした避妊指導などのfamily planningの講習や、母子保健に対するconsultationを行っており、under five clinic projectが効率よく機能しており、スタッフの方々もここを訪れている母親たちも、このprojectに満足している様子であった。
(担当:佐藤弘之)
 
2) Capas II保健所(RHU)見学
 2班ともRHUで合流し、見学させてもらった。
 庭に薬草が植えられており、建物もBHSよりもかなり大きく、明らかな差が感じられた。建物内には、laboratoryやdental clinicがあり、壁のポスターも“Impact Program of the DOH”として“National Tuberculosis”や“Maternal & Child Care”など、より多くのことが書かれていたり、“Health Education in the Under 5 Clinic”として月に一度の母親を対象とした講習の予定表など、BHSにはなかったものが多く見られた。
(担当:山田祐介)
 
 
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RHU 裏庭にて
 
 
3) Tarlac Provincial Hospital (TPH)
 訪問(第3次医療施設)
 Dr. Jannetの案内で、TPHの小児科や手術室を中心に見学した。TPHは約200床の病院であり、一年を通して80%前後の病床率を保っているTarlac Provinceにおける中核病院である。
 病棟は主にService WardとPay Wardに分かれてる。Service Wardでは、医療サービス(入院費用や医師のサービス)が無料であり、それらを支払う能力が無い人々に対して提供されている(しかし、検査や薬などの費用はかかるそうである)。もう一つのPay Wardは、患者は自費で利用している。あるPay Wardの患者さんの母親が、「この病室は一日600ペソである。」と言っていたが、全てが少人数部屋でもなく、クーラーは完備されてはいたが、見た目だけでは両者の環境の差は若干であった。
 小児科の病棟では、感染症の患者が中心であるそうだ。最近では、デング病の患者が増え、治療法も無いために対症療法として発熱を抑えることしか出来ないらしい。手術部では月に400件ほどの手術が行われているそうだ。しかし、手術の件数も場所もフィリピン大学付属病院に比べると圧倒的に少ないらしく、対処しきれなければ協力し合いながら行っているとのことだった。分娩室もNICUも備え付けられており、一日に約15の分娩が行われているそうだ。JICAから寄贈された超音波等の機械も見せてもらい、日本政府がフィリピンヘ医療援助での貢献をしっかりとしていると感じた。
 
4) Anao Municipal訪問
 次に私達は、州立病院を出発しAnao Municipalへ向かった。
 フィリピンの行政単位は、大きく分けて、Province (州)、Municipal (町)、Barangay(地域)から成り立っている。以前のAnao Municipalは、Tarlac Province の中でも貧しい町であった。しかし、町ではイランイランという花が収穫でき、経済向上プロジェクトとしてその花からエッセンシャルオイル・コロン・石鹸・育毛剤などを作り、今では大きな収入源となっているそうだ。
 Anao Municipalは18のBarangayにより構成されている。Anao Municipalの中をグループに別れ、見学させてもらった。私達が訪れたPoblacion Barangayでは、人口約500人、74家族と町の中でも小規模の地域であった。
 フィリピンでは各地域ごとに、Botika Binhiといわれる、日本でいう薬局を設置しており、私達はそこを見学した。Botika Binhiとは薬の生活協同組合のことである。市場にある薬は、フィリピンの庶民にとっては高価なものである。そこからこのプログラムが始まり、国産の薬を中心に市場よりも安く仕入れ、各地域(村を中心)に蓄えておく。薬局の経営や薬に関する住民への教育など、各地域によりやり方が多少異なっている。薬剤師以外の人により薬が処方されていたり、薬の種類は少ないといった問題もあるが、村人たちにとって緊急時に薬がすぐ手に入るという安心感は、大きな心の支えになっているに違いない。
 
 
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Botika Binhiのスタッフと共に
 
 
 Poblasion BarangayでのBotika Binhiは5,000ペソで設立されて以来、年々規模も拡大し、今では黒字経営をしている。会員になると薬が、10%〜20%割引きになるそうで、ここでは74家族中67家族が会員なっている。会員になるための入会金は約10ペソ〜20ペソらしいが自主性であり、月会費も無い。経営が安定している証拠であると思った。利益があるかないかによって会費制度が決められたり、薬以外のものの販売や、地域に根差したサービス活動を行ったりと、各Botika Binhiにより差はあるが、住民にとってさらに便利な施設となるように、努力しているのだと感じた。
 
5) フィルムショーに参加
 住民組織プログラムは、JICAとDOHが推進している母子保健プロジェクトの一つである。その活動の一環として、フィルムショーや人形劇を行うことで、地方の住民にもデング熱や下痢症についての基本知識を与え、保健分野における住民活動の強化を図るのが目標である。
 上映はバスケットボールコートのある村の集会場で行われた。子供からお年寄りまで300人以上はいたかと思われる。私たちが子供たちと遊んでいると、突然 Mr.Beanのフィルムの放映が始まり、スクリーン前の特等席を取ることに必死で、子供があっという間に自分の周りからいなくなってしまったのには驚いた。集客能力向上の為に、TVコメディなど人気のあるフィルムを始めに流しているそうだが、画面に釘付けのあの姿を見る限り効果は抜群であった。途中でフィルムを切ると、続いて私たちが紹介され、あいさつ代わりに沖縄民謡と歌を披露すると、村人たちも歌とダンスを披露してくれた。
 その後ようやく、デング熱についてのフィルムショーが始まった。内容としては、蚊に刺された登場人物が受診する過程において、デング熱の発症した際の症状と対処方法を伝え、蚊が生息しにくい環境を整えることが大切というものであった。アニメーションを使い、子供にはもちろんのこと言葉のわからない私たちにも理解できる構成であり楽しめた。
 フィルムショーの後、Anao Municipalの保健所スタッフの方々と共に夜遅くまで食事が続けられた。明るい人達ばかりで話が尽きなかった。現地で実際に働く人達とお話が出来たことは、私達の視野を広げてくれるきっかけとなり、すごく良い経験になった。
(担当:飯田哲平)
 
 
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スタッフの方々と
 
 
8月10日 今日の一言 〜フィリピンの医療システム〜
飯 田: 各地域で、妊婦さんへの教育指導がしっかりしていたことが、意外だった。
五十嵐: 妊婦の検診、デング熱の患者に出会えたことはいい経験になった。
植 木: 一度に大勢の妊婦さんを見たのは初めてだった。保健所は妊婦でにぎわっていた。保健所の活動は一見したところ、うまくいっているように思われた。三次医療に当たる病院の中は蒸し暑く、古めかしかった。日本の何年前なのだろう。技術と心はどの程度なのだろうか。
 岸 : 一次医療の大切さを痛感した。ボランティアスタッフの自分の仕事へのプライド、これが地域全体を明るくしているのね。
後 藤: 病気を診ずして病人を診よ...高度先進医療に頼らないheartfulな医療があった。
佐々木: 地域の人々とJICAの保健医療分野の専門家、柴田さんとの共同作業の成功を知って、まさに“Give a man a fish and you feed him for a day;Teach a man to fish and you feed him for a lifetime.”なんだろうと恩いました。
佐 藤: システムがうまくいくには社会の安定が必要。フィリピン政府に期待!
清 水: バランガイヘルスステーションは、地域に根ざした活動をしていて、活気のあるところだった。かなり惹かれました。
高 岡: 強い雨。地球、地域。生物、人間。答えはまだでない。
田 村: フィリピンの一次医療を見て、医療の本質において最も重要なことは高度なテクノロジーではなく、他人に対する思いやりの心と、聴診器と自分の手だけで診断できる生きた技術であると思った。
豊 川: 子を愛する心、病める者に対する心に国境はない。愛のあるところに学問はあり...心から行動がうまれる。
橋 口: 共同の薬屋さんの成功に希望の光が見えた気がしました。
橋 本: 心が体が安心しました。
山 田: シンプル。淡々と仕事をしている。でも楽しそう。








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