8月6日(月)
本日のスケジュール・内容
1) WHO西太平洋地域事務局訪問、講義
2) 学生主催懇親会
1) WHO西太平洋地域事務局訪問、講義
ホテルから歩いてすぐの場所に、世界保健機関(World Health Organization:WHO)の西太平洋地域事務局(Regional Office for the Western Pacific:WPRO)があった。
8時40分から午後3時過ぎまで、お昼休みをはさんで講義を受けた。多少予定の変更があったのは、尾身先生とのディスカッションで予定を上回って2時間も時間をとってお話下さった。午後の講義の1つ(Dr.Aviva Ron:Health Sector Reform)は省略された。
8:40〜9:00 Orientation and Guideline
Dr.Kaname Kanai
Medical Officer, Programme on Technology Transfer
フィリピン滞在中の安全の注意と、水への注意を呼びかけられた後、WH0とWPROの概略を説明して下さった。WHOが、6つの支部に分かれていること、WHOの活動は途上国べ一スで行われていることなど、基本的な知識をここで得ることが出来た。また、先生から、質問者は(1)自己紹介をすること、(2)スピーカーへの感謝の意を表すことが礼儀であると教えていただいた。たくさんの知識と同時に、公式な場でのマナーについて学ぶことができ、フィリピン研修中に多いに役立った。
WPRO 金井先生と共に
9:00〜9:30 Mechanism of WHO/WPRO and its Role in the Improvement of Public Health
Dr.Richard Nesbit
Director, Programme Management
WHOの概略をさらに詳しくお話しいただいた。地域的区分や、本部の役割等の話に加え、WHOでは各国間のパートナーシップが大事であること、世界的規模で全人口の健康を確立する事を目的としていることも強調された。また、WPROで公衆衛生活動の促進が必要な項目として、以下の4点をあげられた。(1)保健政策の改善、(2)疫病の移り変わり(3)人口統計の移り変わり(4)経済格差の改善。これらは、公衆衛生というマクロからの健康分野へのアプローチの重要性についての話で、肉体的、精神的、そして社会的に良好な状態であることが健康であるという理念を具体的にしたものであった。
9:30〜10:00 Expanded Programme on Immunization
Dr.Yoshikuni Sato
Medical Officer / Scientist, Expanded Programme on Immunization
WHOが進めている予防医療、特にポリオ根絶計画についてのお話があった。最初は、人々にポリオワクチンを受けに来させていたが、後には確実に全国一斉投与(NID)する為に、航空写真などで生活者を見つけては、船舶、車を使ってワクチンを配布する方式に変更し、成功に導いたそうだ。隣国同士には、ほぼ同じ日にワクチン投与を実施してもらうことや、戦争のあるところは停戦させることなど、政治的問題もクリアしていった。また、日本がワクチン費用の4割を負担した貢献度は高く、1988年には京都会議が開催され、2000年にはWPR0地域はポリオ根絶が認定された。
10:00〜12:00 WPRO Focuses and Policies
Dr. Shigeru Omi
Regional Director
尾身先生の講義は、私達の質問に順に答えていく形式の講義だった。挙げられた質問事項のうち、尾身先生はその日の講義内容としての優先順位をつけて、解答して下さった。まずは、WH0/WPROに関する質問にお答え下さり、その後、長い時間を割いて、国際人として、人間としての我々のあり方についてお話し下さった。以下に、概要を記す。
Q:WHOを評価するのは誰か?
A:誰かに評価されないということは、今の民主主義の世の中ではない。各加盟国が評価をする。いわば株主のようなもの。また、年に一度の地域委員会もある。
Q:WHOと他の機関の違いは?
A:WHOには、国際保健において唯一のauthorityがあり、たとえばモルヒネの量、タバコに関する枠組みの基準作りなどが出来る。従って、結核、ポリオ、AIDSへの取り組みは、UNICEF や JICA 等の他の機関も協力はしているが、実権はWHOにある。
Q:国際協力をなぜするのか?
A:感染症等は国境を越えた問題である。また例えば、健康にダメージを与えるタバコの製造会社が多くの国々に影響を及ぼしている。そのため、これらの問題に一つの国だけでは対処できないので、多国間協議の必要性がある。
Q:WHOでの日本の役割は?
A:ポリオ根絶や病院建築などで期待されているが、日本の弱さとして、議論、調整の出来る人材が不足しており、あくまで技術者になってしまっているところが指摘された。
Q:WHOで扱う問題の優先順位のつけ方は?
A:Evidence based。 DALI指数で計る。
Q:マイノリティー問題は?
A:民族よりも社会的・経済的マイノリティーを救済することで、マイノリティーの問題に対処している。
Q:どのような人格が、国際社会で求められるのか?
A:自分のことを自分で主張できる人(語学・外交性)、語るべきものがある人(技術・知識)、成熟した心を持つ人(多角的な視点で物を見られること)。
Q:英語の学び方は?
A:“継続は力なり”。英字新聞等を毎日読むなど1日1回英語に触れる。英語辞典を使う。
その他に、尾身先生がWPROに来た理由や先生の人生史などのお話も伺った。また、私達一人一人に医者としての哲学が必要であるということを、熱弁して下さった。今が自分と向き合う時であり、それぞれが持って生まれた向き不向きを考えてみること、また、responsibility(無限の可能性のもと、どれを選ぶかは個人の責任であり、状況をきちんと判断する力を持つこと)が私達に求められること、人間は他者との協力があって生かし生かされていること、などを語って下さった。
人間としての哲学を持つことの重要性を学んだ。自分と、そして、自分の周りと常に向き合う必要性を感じた。そして、それらを深く考えることから国際保健は始まっているのだろう。
(担当:岸暁子)
13:00〜13:30 Maternal and Child Health
Dr.J.M.Trias
Medical Officer, Child and Adolescent Health and Development
WPROにおける母子保健の概論を説明していただいた。特にIMCIについて、母乳育児について、また栄養療法についての話が主であった。IFMSA (International Federation of Medical Students’Associations)という学生団体を通してヨーロッパの学生がこのプロジェクトを見学、研修しにくるという案内もあり、興味を示す学生も見受けられた。
13:30〜14:00 Stop TB and Leprosy Elimination
Dr.Dong Il-Ahn
Regional Adviser in Stop TB and Leprosy Elimination
結核の話が主であった。各エリア別罹患率の変移、そして、DOTS (Directly Observed Treatment,Short-Course)のアウトライン、プラン、問題点、現状等についてお話して下さった。結核、殊にDOTSに関しては8月3日の国内研修において下内先生のお話を伺っていたため、よく理解できた。ハンセン病については、統計上90年でprevalence rateとMDT (Multidrug Therapy) coverageが交差したことを示して頂いた。
14:00〜14:30 Emergency and Humanitarian Action
Dr.Y.Takashima
Technical Officer, Emergency and Humanitarian Action
緊急人道援助についてのお話だった。私見であるが、WHOは保健医療分野の国連専門機関として「各国の保健プログラムに対して、技術的支援を行うこと」を自らの中心的役割として定めているため、「緊急人道援助」という分野では動き辛い面があるのではないかと思う。
14:30〜15:00 Adolescent Health including Mental Health Problem
Ms. Sharifah Tahir
Technical Officer,Child Health Development
1O代の不健康について分かりやすく、また明るくレクチャーをしていただいた。Adolescentというと10〜19歳であるが、統計上10〜24歳の30%が一見健康に見えるが、何らかしらの問題を抱えているとのことである。知識のなさや思い込みによって、心の病、性病、妊娠/中絶、麻薬、拒食症等、数々の問題点が浮かび上がってくる。彼らと接する際の注意点として、「判断しないこと」、「理解を示すこと」、「友達として接すること」を強調された。
15:00〜15:30 Healthy Cities and Healthy Islands
Dr. Hisashi Ogawa
Director, Building Healthy Communities and Populations
特に人口1,000万人以上のmega city(東京、大阪等)におけるHealth Serviceについてのお話であった。都市人口の増加が著しい昨今、都市における医療サービスの不均等、環境汚染、安全性の問題、不健康な生活習慣等、問題は山積している。解決策として、様々なセクターが共同でHealthy City の方針を作っていくことが挙げられた。第一に政府であるが、他産業や輸送業、建築業等の分野においても同様である。Healthy Islandsにおいてもセクター間との協調が大事である。前日にパヤタスのゴミ山を見学してきたことが記億に新しかった私は、このことを先生に質問した。WPROでは地域保健省と共に基準を作ったり、その他のエリアでデモンストレーションを企画しているとのことだった。
(担当:高岡志帆)
WPROにて講義の様子
2) 学生主催懇親会
学生主催の懇親会のために、私達は国内研修の時から豊川君の演奏する三線(琉球の楽器)を中心に沖縄の踊りと唄を練習し、そして、植木さんが日本の最近のヒット曲を歌うことも決めていた。しかし、その他プログラムの詳細や司会進行の流れに関しては、前日まで全く不準備であった。前日になって、素晴らしいゲストを迎えて、私達がホストをさせてもらえるという、またとない機会を頂いているのだという事の重大さや、不慣れさに気付き、司会や踊り、歌などの準備をみんなで前日深夜まで一生懸命行った。
懇親会はグループリーダーである豊川君の挨拶から始まり、来賓の方々を代表してDr. Nesbitから乾杯のご挨拶を頂き、スタートした。タ食を食べながらの歓談の時間はとても楽しそうであったが、私(田村)や岸さんは二人でMCをしていたので、なかなか皆さまとお話することが出来なかったのが残念だった。この間にも、徐々にフィリピン大学の学生などが会場に到着して、全員がそろって宴もたけなわの頃、いよいよ私達の出し物の出番だった。漫才あり、歌あり、踊りありで、来賓の方々には楽しんで頂けたと思う。会場が盛り上がった頃には来賓の方々も一緒になって踊って下さり、“幸せなら手をたたこう”を多国籍語で一緒になって歌い、私達も多いに楽しんだ。それが終わると、フィリピン大学の学生の方々が、校歌や美しいハーモニーで歌を披露して下さった。そして、Dr. OmiとDr. Florante Trinidadらに御挨拶を頂き、暫くして惜しまれつつ会は幕を閉じた。
(田村寿英、岸暁子)
懇親会にて踊る参加者一同
8月6日 今日の二言 〜WHO研修〜
飯 田: |
Dr,0miの話にずっと釘付けだった。 |
五十嵐: |
満足、満足! |
植 木: |
尾身先生の話が最も印象的でした。学生の一生を思い、情熱的に話して下さいました。私にとって有り難かったです。 |
岸 : |
大理石調のトイレに驚いた。前の日とのギャップにしばらく複雑な気持ちだった。レクチャーは、すばらしくどれも心に残るものだった。私も自分自身をきちんと見つめなおさなければ! |
後 藤: |
自分の夢に、一歩でも近付けるような気がしてきました。 |
佐々木: |
適度な緊張感のもと、 「なぜ国際保健が必要なのか」を必死に考えた時間でした。 |
佐 藤: |
Dr. Omiの2時間のlectureに感謝!自分の一番やりたいことを素直になって探します。 |
清 水: |
Dr. Omiの講議は最高だった。頑張るぞ! |
高 岡: |
看板を背負うということ。 |
田 村: |
Omi先生の考えをお聞きして、今まで自分が抱いていた考えと驚くほど同じだったので興奮して何度も質問してしまった。もっと一緒にお酒を飲みながらお話したかった。 |
豊 川: |
世界と取り組むということの気概を垣間見ることができた。また、人として生きる上での大きな啓発を受けることができた。 |
橋 口: |
「自分を知ることが実は一番難しかったりする」と思いました。 |
橋 本: |
Omi先生の大きさは限りないです。 |
山 田: |
Ms. Sharifah Tahir の講議を聞いて初めて国際保健の魅力を感じた。ウレシかった。 |
8月6日 今日の二言 〜懇親会〜
飯 田: |
今どき、「オッハー」はないだろうと思った。しかも、夜だし。フィリピン大学医学生はノリいいねー!鼻の骨、一発芸でならしたかった... |
五十嵐: |
みんなで練習したレセプションがゲストに喜ばれて嬉しかった。あと、フィリピン大学生、JlCAの人、WHOの人、保健省の人、いろんな人と話すので、アクセクした。 |
植 木: |
フィリピン大の学生が、私が一番好きな歌を偶然歌ってくれてうれしかった。 |
岸 : |
MCをさせてもらえて、たいへん貴重な経験になった。Polite Englishの難しさを感じた。 |
後 藤: |
沢山の人と今日この時を共有できたこと、一生の思い出です。 |
佐々木: |
尾身局長と、直接1対1で話すというすばらしく幸運な機会に巡り合えました。私の人生の中で、最も重大な出会いでありました。 |
佐 藤: |
色々な人と話をしたことが御馳走だった。でも終わって腹が減った。 |
清 水: |
レセプションではいやという程、英語力のなさを改めて感じた。 |
高 岡: |
guestをもてなす練習であったはずが、普通に楽しんでしまった。実はみんなで沖縄民謡を踊った時間が一番楽しかった。 |
田 村: |
Master of Ceremonyをやらせてもらった。仕事が忙しくてゆっくりと多くの方々とお話ができなかったのが残念だった。でも充実していて、とても楽しかった。 |
豊 川: |
Hostということで、もてなす側の役割を経験させていただいた。またHostをこなすだけで精一杯だったが多くの出合い、経験を手にすることができた。 |
橋 口: |
相変わらず踊りがずれてしまった。皆ごめんね。WPR0の人々ともお話できて嬉しかった。 |
橋 本: |
JICAの方がとてもやさしかった。その優しさに背中を押して頂きました。 |
山 田: |
レセプションで哲平と「オッハー」で挨拶した。WHOは予想以上の手強さだった...。日本に帰ったら英語だ、英語。 |