日本財団 図書館


第8章 まとめ 
8.1 研究成果
 今年度の研究による成果を以下に列挙する。
・局地気象モデルANEMOSを用いて晴霧・雨霧の計算を行ったが、晴霧は定性的に十分再現できることが示された。(第6章)
・ネスティングによって解像度の高い格子による計算を行ったが、領域は少なくとも300km×300km以上が必要であることが分かった。また、水平分解能をあげると低分解能では霧の発生していない地域にも、霧の発生が予報されることが示された。
・海霧の予報には海面水温分布が重要であり、解像度の高い海面水温(NOAA)を使った場合に海霧予測の精度が上がることが示された。 
8.2 今後の課題
 今年度は、霧発生の機構から雨霧、晴霧に焦点を当てて計算を行った。典型的な事例として数例計算を行った(視程データなど検証データが少ないなどの問題があり、本報告書に掲載したのは2事例)。今年度の計算において課題として残ったことと、来年度必要と考えられる計算についてまとめる。
 本報告書の結果から、局地気象モデルANEMOSによって晴霧の予報は、可能であると考えられるが、瀬戸内海は複雑な地形をしているため、霧の細かい分布を再現するには、2.5kmメッシュの計算では十分ではない。しかし、1kmメッシュなど格子間隔を細かくすると現在の計算資源では領域を狭めざるを得ず、南からの水蒸気の移流などを表現することができないため瀬戸大橋付近などの霧発生を予報することはできなかった。
 雨霧の予報は、前線などの構造を表現することが重要であるが、ANEMOSは局地気象モデルであるため、総観規模の擾乱を予報することはできない。したがって、初期値あるいは境界値に使うデータが非常に重要である。本報告書では約20kmの解像度のGPVを初期値として使っているが、現在発表されている10kmの解像度のあるMSMを初期値として使うことによって、予報精度の向上が期待される。また、本報告書では予報対象日の前々日のGPVを初期値として使っているが、MSMは短時間予報サイクルであるため初期時刻を予報対象時刻に近い時間に設定でき、より精度の高い予報ができる可能性がある。
 また、雨霧の予報には降雨過程や降雨後の地表面過程が非常に重要であるが、ANEMOSには以下の問題がある。
1.暖かい雨のみ考慮されているため降雨量に誤差が生じる。
2.土壌湿潤度をパラメータで与えているため、降雨後の地表面過程に誤差が生じる。
 以上から来年度に実行すべき課題は以下である。
1.細かいメッシュによる広い領域の計算
2.初期値にMSMを使用した計算
3.降雨過程と地表面過程の変更
 今年度は、検証を衛星画像に頼っていたため、検証を行うことができる事例も限られており、焦点をかなり絞って計算を行った。来年度は、本州四国連絡橋のデータを入手する予定であり、全域が雲に覆われている事例でも十分な検証を行うことができると考えられる。したがって、2000年、2001年春に発生した霧について計算を行い、本州四国連絡橋の地点による検証を行う予定である。この検証によってANEMOSによる霧予報がどの程度可能であるかが分かるはずである。








日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION