第5章 検証用データ
5.1 地点データ
固定点のデータとして、AMeDAS地点における風速・風向・雨・気温のデータ、高松気象官署月報の異常気象と気象災害記録を使用した。
5.2 衛星データ・気象庁レーダー解析雨量データ・雲解析情報図
総観規模の現象を把握するため、*GMS雲画像(可視画像、赤外画像)と*気象庁レーダー解析雨量データ、*雲解析情報図を使用した。ただし、GMS雲画像は0,3,6,9,12,15,18,21時については水平1kmの解像度、それ以外の時間は水平5kmの解像度である。
*GMS(Geostationary Meteorological Satellite)雲画像
GMS雲画像とは静止気象衛星(GMS)ひまわりが、地球表面からの放射の強度を波長帯別に測定し、その分布を画像化したものである。おおよその分解能は可視域1.25km、赤外域5kmである。赤外画像は波長10.5〜12.5μmの大気の吸収による減衰が小さい波長帯において測定された放射強度で、表面温度の4乗に比例する。赤外画像では、輝度の高いところ(白く見えるところ)は気温が低いことを表す。したがって、層雲や霧のように雲頂が低い雲の場合は海面水温との温度差が小さいため、現在のひまわりの性能ではその存在を判別できないことも多い。一方、可視画像は、日中しか得ることができないが、太陽からの可視光が地球表面で反射されたものを測定するので、宇宙からの目視と同等な画像となり、分解能も良いことから層雲や霧もはっきり判別できる。
*レーダー・アメダス解析雨量
気象レーダを用いて測定した降水量を、アメダスで観測した降水量で補正して正確できめ細かい降水量を求めたものであり、定量的に信頼性が高い。水平解像度は2.5kmである。気象レーダは電波を発射し、降水粒子からの反射(後方散乱)波を受信し、その信号の強さによって降雨強度を測定する測器で、レーダで受信される電力Prはレーダ方程式で表される。
ここで、
C:レーダ定数(レーダの送信電力・波長・アンテナの大きさなどで決まる)
r:目標(降水粒子)までの距離
Z:レーダ反射因子
雨滴の大きさと数の関係が一定ではないため、Zからすぐには雨の強さはわからないが、Z(レーダ反射因子)とR(降雨強度:mm・hr-1)の間には統計的な関係があるとして、レーダ反射因子から降雨強度を求める。その時、Z-Rの関係は
として雨量強度を求める。B及びβは、上記の式に用いる定数。
*雲解析情報図(TSFE)
GMS雲画像*で観測されたデータから得られる大気中の雲の鉛直、水平分布に関する情報、雲の時間変化から測定された風速の情報と、天気変化に関連した大気環境および総観規模からメソスケールの気象擾乱に関する解析情報。センサーの特性や数値予報資料を利用して、雲型を判別している。高度によって霧と判定される雲もある。
5.3 気象台・飛行場データ
霧の分布状況を示すデータとして、由良(淡路島)(神戸気象台)、男木島(高松気象台)、安居島(アイジマ、松山気象台)の視程データを使用した。また、瀬戸内海近辺における飛行場(関西航空地方気象台、広島空港測候所、松山空港出張所、高松空港出張所)のデータを使用した。各地点の分布を図5.3.1に示す。
空港のデータは卓越視程、気象庁からいただいているデータは最短視程である。
卓越視程:測定地点周囲360度の内、180度以上の範囲(切れ切れでも良い)で、この距離以上が見える。
最短視程:測定地点周囲360度の内、物が見える距離の中で最短距離。
5.4 海水温データ
瀬戸内海の複雑な海水温分布を表現するためにNOAAの衛星データとその他の定点観測やフェリーによる観測値などを使用した。(詳細は7.2)
5.5 本州四国連絡橋視程データ
本州四国連絡橋の下津井瀬戸大橋や南北備讃瀬戸大橋にはそれぞれ高度別に気象観測装置が設置されている。それぞれ海面10mと57.5m、11.5mと91.5mに設置されており、地点における霧の立体構造を把握するためには非常に有用である。しかし、今年度は気象データを入手することができなかった。
図5.3.1 観測地点地図