4.6 初期値
ANEMOSは初期値として、気象庁などが発行している全球、あるいは領域モデルの数値予報結果やある条件を満たした定常大気を指定することができる。また、ANEMOSの結果を細かいメッシュサイズにネスティングする場合は、ANEMOSの大領域の計算結果そのものが初期値になる。
初期場作成において、入力データは計算メッシュサイズに適合するように、時間
的・空間的に直線的に内挿される。ただし、風速及び比湿については

面上で、温位についてはできるだけ不自然な浮力が生じないようにZ面上で行う(斉藤・猪川、1992)。この内挿で湿度が100%を超える格子ボックスが現れた場合、その格子ボックスの比湿は湿度が100%になるように減じる。
4.7 地表面境界条件
地表面では

座標系での鉛直風速

はゼロである。その他の変数の境界条件は、鉛直フラックスで与える。有限の大きさの格子内には特性の異なる複数の土地利用形態が存在する。地表面状態を水面、裸地、草地、水田、果樹園、森林、住宅地および都市と8つのカテゴリーに分類し、それぞれのカテゴリーごとにMonin-Obukhovの相似則からフラックスを計算する。格子平均のフラックスは、カテゴリーごとのフラックスをその面積比率で加重平均して求められる。ただし、TKEのフラックスはゼロとする。土地利用形態の分布は国土地理院発行の国土数値情報から得た。なお、粗度長

は水面を除いて

と仮定する。
水面を除く土地利用カテゴリーごとの地表面温度

は、地表面でのエネルギーバラ
ンス方程式から土壌ヒートフラックスを求めた後、強制復元法(Force restore)により予報する。
 |
: 太陽放射 |
 |
: 長波下向き、上向き放射 |
 |
: 潜熱 |
 |
: 顕熱 |
 |
: 土壌深部の温度 |
 |
: 土壌熱伝導率 |
 |
: 土壌の比熱 |
土壌深部の温度

は、Musson-Genon(1987)に従い、初期値データの地上気温予報値
の日平均値とした。係数

は土壌湿潤度WG

によって
と与える。ただし水面では

とした。
一方、海面水温は気象庁から提供されているNorth-East Asian Regional Globa1 Ocean Observing System(NEAR-GOOS)の客観解析値で与える。
土地利用カテゴリーごとの地表面比湿 ★ は、方程式
で計算する。ここで添え字

および1はそれぞれ地上および第1層の格子を意味する。蒸発散効率

は土壌湿潤度

の関数で、

と与える。

は Tetensの式から求められる飽和比湿である。
表4.7.1 土地利用別地表面パラメーター
土地利用 |
キャノピー 層高度 (m) |
粗土長 (m) |
土壌湿潤度
 |
アルベド |
水面 |
0.0 |
0.016 |
1.00 |
0.06 |
裸地 |
0.0 |
0.05 |
0.10 |
0.20 |
草地 |
0.3 |
0.10 |
0.15 |
0.20 |
水田 |
0.5 |
0.10 |
0.30 |
0.15 |
果樹園 |
1.0 |
0.30 |
0.20 |
0.20 |
森林 |
2.0 |
0.55 |
0.15 |
0.10 |
宅地 |
2.0 |
0.65 |
0.01 |
0.15 |
都市 |
2.6 |
1.00 |
0.01 |
0.10 |

: 摩擦速度