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日本民藝館たより
 国際交流基金の助成を得てブラジルから「日本における今日の民芸運動と職人の技術」について研究のため来日する(二ヶ月間)シルヴィア・ササオカ女史をお迎えする。彼女にはかなり過密な日程が既に作成されてあり三月二十八・九日の民藝館訪問の後、北海道から奄美大島まで十七日間で十四ヶ所を訪ねることになっている。「ブラジルでは職人による工芸文化が豊かであるのにその評価が低い。柳宗悦氏の「アンノン・クラフツマン」に記されている「美の王国」について実験的に確かめたい。」というシルヴィア女史の研究に民藝館として最大の協力をするつもりでいる。それにしても飛行機を乗り継いで二十六時間もかかってブラジルから来館した彼女に敬意を表したい。
 次は残念なニュースをお知らせしなければなりません。ピーター・フォルコス氏がワークショップのためオハイオ州に出張中、本年二月十六日に亡くなられたという訃報を受けた。彼は一九二四年モンタナ州でギリシャ系移民を両親として誕生。モンタナ大学卒業後、あの有名な一九五二年にモンタナ州アーチプレイで行われた柳・浜田・リーチによる講演とワークショップに参加(上写真・当時二十八歳)その時の強烈なインパクトは彼の七十八歳の生涯を通して影響を与え続け、セラミック・アーティストとして大きな業績を残すこととなった。柳宗悦を知るアメリカの大事な人物をまた一人失うこととなった。
(内海・記)
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左から柳、リーチ、ルディー・オーディオ、ピーター・フォルコス、浜田の各氏
 長岡歴史博物館主催による「北越雪譜の世界を探る」のバスツアーに参加させて頂き、三月初め、越後上布の雪晒しを見学して来ました、鈴木牧之の名著「北越雪詣」に、「雪中に糸となし、雪中に織り、雪水にすすぎ、雪上に晒す、雪ありて縮あり……」とうたわれた千年を優に越す伝統の織物です。塩沢織物会館で、苧麻を裂き結ぶ糸作りから地機で織り上げるまての行程を一貫して見学した後、車て数分の雪晒し場へ移動。雄大な八海山を正面に望む広々とした雪原に色とりどりの反物が二十反程並べられていました。越後上布は織り上げた後、湯で採み洗いし、天気の良い日の日中一週間前後雪上に晒します。雪の水分と太陽のオゾンとで布を白くし、また布をしなやかにする効果があるそうです。紺地の布は太陽の熱で四センチも沈んでいました。体が機の一部にもなる地機での織りは、食事さえ機に座ったままとるといいます。同じく苧麻を織る沖縄八重山では、真夏でも乾燥を避けるために扇風機も回さずに織ると聞きましたいかにも涼しげに織りあがった上布は何も語りませんが。
(石井・記)
 日本民藝館では、これまでにも百名以上にのぼる実習生を受け入れてまいりましたが、本年度も左記の日程で博物館実習を受け入れます。
 大学の学芸員課程で学芸員資格を取得中の方で、「博物館実習」(三単位)の習得を希望される方は、五月十日までに実習担当(杉山)までお問い合わせ下さい。
 必要書類を提出していただき、面接選考のうえ、実習受入の諾否を決定いたします。
一. 講義
   六月二十七日(木)〜六月三十日(日)
二. 館務実習
   夏期 七月一日(火)〜七月七日(日)
   秋期 九月二十五日(水)〜九月二十九日(日)
   冬期 十二月二十一日(土)〜十二月二十六日(木)
*実習期間は、講義(四日間)と館務実習(三期より選択)を合わせ十日間以上となります。
(杉山・記)
 日本民藝館平成改修工事の完成を記念した展示「日本民藝館名品展東洋編」が、六月三十日(日)まで開催されています。創立者柳宗悦の優れた審美眼によって蒐集された当館のコレクションから東洋(日本・韓国・中国)の工芸美を紹介するものです。
 日本が生んだ陶磁・染織・絵画・木漆工の優品をはじめ、朝鮮李朝時代の工芸品(陶磁・木漆工・他)、さらに古染付(中国明朝末期の焼物)を加えた逸品約四〇〇点が展示されています。 今回の改修で、本館の壁面が全て葛布張りになりました。創立当初により近づいた空間で、柳宗悦がみた東洋の美の世界をどうぞ御覧下さい。
(白土・記)
 今民藝館は大忙しです。三月二十日に改修工事が一応終了し、二十八日から久しぶりの開館を目ざして展示を始めたからです。
 それだけなら何ということもないのですが、今回は改修竣工を記念したパーティーを開くのです。そのためにスタッフは何時もと違って、三つも四つもパーティー準備の仕事を抱えました。展示は出来上がった状態を見ると、何でもなく見えますが、実際はミリ単位の品物の移動をさせながら、館全体が美しい調和を見せるよう神経をはりめぐらしてあるのです。従ってスタッフは、何時も展示期間の六日間は、大げさではなく、クタクタになります。
 それに今回は、パーティーの案内やら、祝辞の依頼、催事の依頼、茶菓や食事のための諸々の準備などが加わり、更に、改修募金の業務も、平成十五年三月末日まで継続中です……。
 そんなわけで、館は今大忙しです。でも、四月九日のオープンには、何時もと変らない静けさで、一般観覧者の方々を、お迎えしているでしょう。ましてや、これをお読みになる五月初めには、「やはり民藝館は落ち着いた美しい館だ」との、何時もの多くの声を聞いているでしょう。
 とりとめもなく、近頃の館の様子をお知らせしましたが、募金のことも含め、今後とも日本民藝館をよろしくお願いいたします。
(尾久・記)








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