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日本民藝協会事務局長 井上逸郎氏から中西眞一郎氏に
退任の御挨拶
井上逸郎
 新緑の季節となりました。皆々様にはますますご清祥のことと、お喜び申し上げます。
 さて、この度昭和六十三年来勤務しておりました日本民藝館・日本民藝協会を退職し、籠居することとなりました。
 在職中の様々な場面を振り返ってみますと、数々の失策が思い出され、汗顔の至りです。このような小生が十四年もの長きにわたって仕事を続けることができましたのも、偏に皆様方のご厚意の賜物と、衷心より感謝申し上げます。
 日本民藝協会は財政再建のため特別協力金制度を設けてより十四年になりますが、お蔭様で赤字体質を改修募金にも多数の方々から御賛同をいただき有難うございます。
 その他全国大会・夏期学校・民藝品調査・手仕事の日本展及び民藝運動を推進する会等多彩な行事があり、関係者に御苦労をかけておりますが、今後ともよろしくお願い申し上げます。
新任の御挨拶
中西 眞一郎
 四月より、日本民藝協会と日本民藝館の事務長を勤めさせて頂いております。
 これまで四十年間、損害保険会社の仕事をしてきました私にとって、全く新しい分野の仕事でございます。
 今のところ、「民藝の趣旨」等を読んだり、民藝館や民藝協会の方々のお話を聞きながら基礎的なことを勉強中でございますが、新しい知識を得ながらいくらかでも皆様のお役に立てるよう努める所存でございます。
 クアラ・ルンプールで三年間、現地保険会社の経営に携わり、この間にマレーシア国内を見て回りました。
 マレーシアといえば、錫工芸品やバティック(南国の強い太陽を利用したろうけつ染)や藤細工が有名ですが、いずれも作成された土地ごとの独自性や特色が希薄なように私には思われました。
 柳宗悦先生は「手仕事の日本」の中で、日本は自然地理の条件からも各地に様々な生活様式が生れ、これによって、固有の文化が成熟し、地方色豊かな民藝品が生まれてきたと言う意味のことを書かれています。一年中が暑くて四季の変化がなく、のんびりした生活が文化の背景となっているマレーシアとは異なって、日本には、気候や風土を背景とした土地ごとの多様な文化が脈々続いてきたのだと再発見した次第です。
 歴史ある民藝運動と民藝館の運営に微力を尽くしたく存じます。
 皆様のご指導とご鞭燵をお願い申し上げます。
 また、民藝館にお越しの節は事務局にも是非お立ち寄り下さい。








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