第23回作曲賞入選作品
岡島 礼
Aya Okajima
1978年 |
大阪府生まれ |
1997年 |
東京芸術大学音楽学部附属音楽高等学校卒業。 |
2000年 |
学内にて長谷川賞受賞。 |
2001年 |
東京芸術大学音楽学部作曲科卒業。
学内にてアカンサス音楽賞受賞。 |
現在、同大学院作曲専攻に在学中。
これまでに作曲を野田暉行、川井學、理論を尾高惇忠、ソルフェージュを野平一郎の各氏に師事。 |
Prelude for Orchestra
(管弦楽のための前奏曲)
この作品では、オーケストラの様々な表現の可能性と自分の音楽が乖離しないように心がけました。従って、オーケストラの音響的な興味よりも、音色や音量・音域を、主題の展開、再現といった形式との関連のなかでとらえることによって、曲全体が構成されるように考えました。
曲は、オーボエによって奏される緩やかで抒情的な主題を、弦楽器がなぞりながら立ち上がっていきます。そして、主題が第一ヴァイオリンによって奏されたとき、中心音である「A」に対して、「D」をもった副次的な旋律が低音部に現れます。主題との均衡を保ちながら展開していく中間部は、やがてクライマックスをむかえ、再び主題を導き出します。再現部では、中心音「A」に対して、常に「D」が持続されており、この「D」が、冒頭と同一の「A」を含む和音と融和したとき、曲は終結します。
ひとつの作品を書き終えると、次作に向けての新たな課題が生まれてきます。そして、実際にその作品が演奏されると、より客観的に作品と接することができ、具体的な数多くの問題点を発見することができます。今日まで私を導いて下さった先生方、そして、今回このような機会を与えてくださった財団と演奏者の皆様に、心より厚く御礼申し上げます。
清水 昭夫
Akio Shimizu
1973年 |
5月6日生まれ |
1995年 |
東京芸術大学在学中、ヴァイオリン協奏曲「刹那の春」が学内で初演され、同時に長谷川賞受賞。 |
1996年 |
東京芸術大学音楽学部作曲科卒業 |
1997年 |
フルート協奏曲「赤い花」が日本交響楽振興財団第19回作曲賞に入選し、初演される。 |
1998年 |
同大学院音楽研究科修了 |
これまで作曲を鈴木一行、佐藤眞、小林秀雄、林光の各氏に師事。
現在、東京芸術大学非常勤講師。 |
不死鳥の舞
〜5弦コントラバスとオーケストラのための〜
The Dance of the Phoenix
〜For Double bass with 5 strings, and Orchestra〜
この作品は5弦コントラバスとオーケストラのための作品、すなわちコントラバス協奏曲である。
一般的に協奏曲に適する楽器はピアノやヴァイオリンのように敏捷性に優れ、音量感があり、聴こえやすい音域を持つことが重要だが、コントラバスはそれらの点で優れているとはいえない。歴史上著名なコントラバス協奏曲ではディッタースドルフ、ドラゴネッティ、クーセビツキー等の作品が挙げられるが、やはり数が少ない。
しかし、近年の現代音楽作品の中にはコントラバスを用いるものもよく聴かれるようになり、コントラバス奏者への技術的要求が高まりつつある。また、5弦コントラバスもオーケストラにすでに定着している。そういった中、協奏曲という概念で新たな可能性を見出せるのではないかというのが作曲の大きな動機であり目的であった。
4年前、このコンクールに応募して入選した作品はフルート協奏曲、学生の時分に演奏されたのはヴァイオリン協奏曲、そして今回のコントラバス協奏曲と、経歴の上で協奏曲ばかり目立ってしまった。協奏曲以外のオーケストラ作品も書いているのだが、幸か不幸か、まったくヒットしないのである。ただ私は協奏曲という分野が心より好きであることに違いない。
私の作品にはたいてい標題がある。今回は「不死鳥の舞」と仰々しい標題をつけたが、公にすべきような理由は無い。作曲中に何故かつぶやいた言葉、「不死鳥」を用いたかったのである。しかし作品で表現したい情景があった。それは「力に満ち溢れた復活」である。不死鳥という言葉はその情景に適しているのではないだろうか。作品では「復活」を「再現」として扱った。
山内 雅弘
Masahiro Yamauchi
1960年 |
11月23日生まれ |
1983年 |
ミュージック・フロム・ジャパン演奏会(於ニューヨークカーネギーホール)で「中棹三味線と管弦楽のための相響」を世界初演 |
1984年 |
第1回日仏現代音楽作曲コンクール入選 |
1986年 |
東京芸術大学大学院音楽研究科作曲専攻修了 |
1990年 |
クルーズ国際ピアノ会議作曲コンクール第1位 |
1991年 |
シルクロード管弦楽作曲コンクール入賞 |
1995年 |
日本交響楽振興財団第17回作曲賞入選 |
2000年 |
第11回朝日作曲賞佳作入選(合唱組曲) |
2001年 |
文化庁舞台芸術創作奨励賞(合唱曲) |
作曲を本間雅夫、北村昭、八村義夫、南弘明、松村禎三、黛敏郎の各氏に師事。
現在、東京学芸大学助教授、ヤマハ音楽振興会講師、日本現代音楽協会、日本作曲家協議会、深新会各会員 |
チェロ協奏曲
(Cello Concerto)
2000年の7月から9月にかけて作曲しましたが、構想自体は、1998年に作曲し「オーケストラ・プロジェクト'98」で初演された「風の糸−ヴァイオリンとオーケストラのための」とほぼ同時期に着想しており、この2つの曲には連作的な近親性が多分にあります。
曲は、前半でチェロとオーケストラが色々な形で対話、協調して行きますが、後半ではオーケストラが次第に抗し難い力となりチェロを抑えてクライマックスを形成、終結に向かって両者は再び融和して行きます。このような構図の背景にはかなり明確なストーリー的イメージがありましたが、それが故に、逆説的ではありますが文学的な曲名を避け、「チェロ協奏曲」とすることにしました。
私は1995年にもこの作曲賞に入選しており、今度で2度目の入選となります。その時には再び応募することはないだろうと思っていました。しかし、その後2つの協奏曲の構想を得、1曲は前述のように「オーケストラ・プロジェクト」で初演したのですが、自主発表ということで多額の費用を必要としました。そこで、続けてこの曲を完成するにあたり、何とか音にすることが出来ればと思い、再応募することにした訳です。管弦楽曲の発表の場の少ない現状では、このような管弦楽曲の作曲コンクールは、その名誉以上に演奏されることに大きな意義があると思います。このような機会を与えて下さった関係者の皆様、本日指揮をして下さる小松先生、チェロの向山さん、東京フィルハーモニー交響楽団の皆様に心から感謝申し上げます。
第24回作曲賞作品募集要領
オーケストラ作品を下記の要領で募集しています。
[1]資格 |
日本国籍を有すること。 |
[2]申込手続 |
所定の申込用紙に該当事項を記入し、作品に申込料20,000円を添えて申し込む。
(申込用紙は80円切手を同封の上、財団に請求のこと) |
[3]申込期限 |
平成13年9月28日(金)午後3時 |
[4]表彰 |
応募作品のうち、原則として5曲を選び、それぞれに日本交響楽振興財団奨励賞として20万円を贈る。さらにその中から、原則として3曲の入選作品を決定する。入選作品は「現代日本のオーケストラ音楽」演奏会にて初演する。
入選作品のうち特に優秀作品と認められるものに対し、作曲賞50万円を贈る。さらに、日本財団より作曲賞受賞者に日本財団賞80万円(作曲委嘱料として)が、また作曲賞受賞者のいない場合は、最上位入選作品1名に対して日本財団特別奨励賞として20万円が贈られることが予想される。(現時点では未定) |
[5]その他 |
(1) 未発表作品に限る。
(2) オーケストラは3管の通常編成以内とし、打楽器奏者は5人までとする。その他の制限は特に設けない。
(3) 演奏時間は20分程度以内。 |