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■ドヴォルザーク
交響曲第9番ホ短調 新世界より 作品95
 ドヴォルザークは、ボヘミア(今のチェコスロバキア)の一寒村に1841年9月8日生まれました。家は旅篭屋でしたが、いつとはなしに芽生えた楽才と熱心な態度は、その父をして子どもの音楽志願を許すようになりました。小学校の教師にヴァイオリンと唱歌の手ほどきを受け、後、プラハに出てオルガン学校に入学、苦学を重ねました。彼はまた、有名なスメタナの感化を受け、32歳の時、愛国的題材を扱った交声曲をつくってから、すっかり地歩を固めることができました。1891年彼の作品がブラームスによって一等の刻印を付せられ、ケンブリッヂ大学から音楽博士の称号を贈られてからは、いやが上にもその名声は高まりました。1893年招かれてアメリカに渡り、ニューヨークの国立音楽院長に就任、1895年まで在任しました。このアメリカ滞在中に彼はアメリカの音楽を研究し、これによる幾多の名曲を遺したのです。
 初演の時に不評判で後に名曲となったものもあれば、初演の時は馬鹿当りをしながら、いつしか忘れ去られるという曲もあります。しかしながらこの新世界交響曲は初演以来今日まで、拍手喝采を浴びてきました。独創性に富むこの曲には、新大陸アメリカの姿があり、新精神が脈うっています。ニューヨークでひどいホーム・シックにかかった彼は、一時故郷ボヘミアにそっくりのアイオワ州スピルビルで療養生活を送りました。こんな時に完成したのがこの曲で、1893年12月ニューヨークで初演されています。
第1楽章 アダージョ・アレグロモルト
第2楽章 ラルゴ
第3楽章 スケルツォ・モルトヴィヴァーチェ
第4楽章 アレグロコンフォコ
 いずれの楽章も民族的色彩が濃厚ですが、彼は民謡をなまのまま主題に使うことはせず、その精神を曲の中に盛りこもうとしました。黒人霊歌をあるいはボヘミア民謡を思わせるが、それよりも新大陸やボヘミアの心に耳を傾けましょう。








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