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II. ウェルカム・イン予約センター事業の実施概要
1. 予約斡旋事業
1) 予約斡旋の実施体制
 外国人旅客の経済的旅行ニーズに見合う手頃な料金を提供し、彼等を積極的に受け入れる宿泊施設(ウェルカム・イン予約サービス加盟宿泊施設、以下“加盟宿泊施設”)142軒の登録でスタートし、その後施設数は順調に増加したが、11年目を迎えた平成13年度に初めて減少した。加盟宿泊施設は平成14年3月31日現在で732軒と、昨年度より25軒の減少である。
加盟宿泊施設の種別および地域別構成
     種類
地域
ホテル ビジネス
ホテル
旅館 民宿 ペンション ユースホステル 国民宿舎 その他 合 計
北海道 4 11 5 0 6 8 1 0 35
東北 8 12 14 1 1 7 1 0 44
関東 20 135 44 6 9 3 0 4 190
(内東京都) (7) (75) (28) (1) (0) (1) (0) (2) (115)
                   
北陸・中部 20 36 37 19 22 6 4 0 44
                   
近畿 35 62 64 8 12 6 3 2 192
(内京都府) (18) (17) (42) (6) (9) (2) (0) (2) (96)
(内大阪府) (5) (25) (4) (0) (0) (2) (0) (0) (36)
                   
中国 5 20 8 2 2 8 5 7 57
四国 4 6 5 1 0 3 1 0 20
九州・沖縄 10 13 9 10 1 6 1 0 50
合計 106 263 186 47 53 47 16 13 732
 
 加盟宿泊施設の要件の詳細は、添付資料[1]「ウェルカム・イン予約センターのご案内」の通りであるが、次の3要件が最も基本的なものである。
 
○ 外国人旅客を積極的に受け入れる意欲があること。
○ 旅館業法に基づく営業許可を取得していること。
○ 室料が税、サービス料別建てで、一人利用時で8,000円以下或いは二人利用時で13,000円以下の客室を有すること。季節料金を設定している場合は、8ヶ月以上が上記の規定に合致していること。
 
 予約申込の受付は、当予約センター国内5ヶ所の予約カウンターでの対応と本部でのEメール、ファックス及び手紙による海外からの申込の二つに分けられる。
 5ヶ所の予約カウンターは、外国人旅客向けの総合観光案内所として、長年外国人来訪者に観光情報を提供してきた実績のある、国際観光振興会(JNTO)の東京及び京都ツーリスト・インフォメーション・センター(TIC)並びに当財団が運営を委託されている成田空港(第一ターミナル及び第二ターミナル)及び関西空港ツーリスト・インフォメーション・センター内にそれぞれ設置されている。外国人旅行客の中には、事前に予定を決めないで、来日してから宿を手配する人々が多いことから、旅行客が旅行情報を求めに立ち寄るツーリスト・インフォメーション・センター内に予約カウンターを持ち、サービスを提供することは大変重要である。
 海外からは、従来よりEメール、ファックス及び手紙で受け付けているが、平成13年5月から施設への転送を開始した。当財団のサイトで受け付けた予約のうち、直接外国人旅行者からも予約を受付ることができる施設については、なるべく直接受けていただくよう予約依頼を転送することとしたものである。施設側の受入体制の充実と習熟に加え、来年度より本部の予約業務の効率化を目的に運用開始予定の新しいシステム(インターネットを通じての簡易応答予約システム)の練習ともなり、本部業務も若干軽減された。
2) 予約書類の作成と交付
 外国人旅客による低廉宿泊施設の利用促進に当って、最大の問題は外国語でのやりとりである。円滑な外国人旅客の送客と受け入れのためには、旅客が必要とする基本情報を、予約時点であらかじめ提供しておくことが肝要である。そのために、以下の予約書類を作成し、予約成立時に宿泊客に交付している。
 
○予約確認書(Reservation Confirmation)
 予約成立時に外国人旅客及び加盟宿泊施設それぞれに手渡し或いは送付する。
○加盟宿泊施設情報(Welcome Inn registered property)
 加盟登録時に提出を求めた「ウェルカム・イン予約サービス宿泊施設調査票」に基づき、各加盟宿泊施設毎に作成した英文情報(A4判)で、次の項目を掲載。
・ 名称(日英併記)
・ 住所(日英併記)
・ 電話、ファックス
・ 最寄り駅からの到達手段及び所要時間
・ 使用可能なクレジットカード
・ 旅行小切手の使用の可否
・ チェック・イン/チェック・アウト時間
・ 門限の有無、超過料金
・ キャンセル料
・ 客室料金表
・ 食事料金表
・ 税、その他付帯料金
・ 館内諸設備
・ 周辺環境
・ 建物の様式
○アクセス地図
 最寄り駅あるいはバス停からのアクセス地図。外国人旅客が地元住民に道を尋ねたり、彼等自身が目的地点を確認するために役立つよう日・英文併記で作成。
3) 予約斡旋状況
 予約斡旋状況は下表の通り、申込み受付件数で対前年比13.4%の増加であったが、成立件数では7.9%の減少であった。
 
  平成 1 3 年度 (対前年比) 平成 1 2 年度
予約申込受付件数 1 6 , 0 9 6 件 (+13.4%) 1 4 , 1 9 0 件
予約成立件数 1 1 , 7 9 8 件     (-7.9%) 1 2 , 8 1 9 件
キャンセル等件数    5 1 5 件    (-43.8%) 9 1 7 件
実宿泊件数 1 1 , 3 0 0 件     (-5.1%) 1 1 , 9 0 2 件
*取扱人数 1 6 , 3 9 0 人    (+11.3%) 1 4 , 7 2 7 人
延べ宿泊人泊 3 9 , 7 6 4 人泊 (-3.5%) 4 1 , 2 2 3 人泊
不成立件数 2 , 5 7 4 件 (+87.7%) 1 , 3 7 1 件
成立率 7 3 . 3 % (-18.9%) 9 2 . 2 %
4) 無断キャンセル(ノーショー)について
 ウェルカム・イン予約サービスは、予約金を含む金銭の収受を一切行わないだに、本予約サービスの維持にとって最も懸念される問題は無断キャンセル(ノーシー)の発生である。訪日外国人旅客は一時滞在者であり、国内を周遊するだけに、ノーショーがあっても、連絡を取ることが困難であること、また、予約確認書に彼等の旅券番号や本国の住所を記入させてはいるものの、無断キャンセル料をめぐる国際間のやりとりは、経費的に間尺に合わないこと等が、この問題の解決を困難にしている。
 予約センターでは、無断キャンセルを防止するため、予約窓口で口頭で注意をするのみならず、予約確認書の裏面(添付資料[5])及び英文宣伝印刷物「Directory of Welcome Inns」内で、「無断キャンセルは、予約センター及び外国人旅行者に対する加盟宿泊施設の信頼を失わせ、この善意の予約センターが充分に機能しなくなり、将来予約センターを利用しようとする他の旅行者の迷惑となる」、「無断キャンセの記録のある方からの予約申込は今後一切受け付けない」旨訴えている他、クレジットカード番号等の報告を要求するなどの対策を講じている。
2. 加盟宿泊施設拡大事業
 外国人旅客の利用に適し、彼等の受け入れに積極的な加盟宿泊施設を増やすため、次の諸事業を実施した。
1) 説明・勧誘資料の作成
「予約斡旋状況」リポートの作成
 勧誘対象の宿泊施設経営者に最新の予約斡旋状況を示し、外国人旅客の旺盛な宿泊需要や具体的なプロフィールについての理解を促すとともに、これら経営者の外国人旅客受入れ意欲を喚起するため、「ウエルカム・イン予約センター平成12年度の予約斡旋状況」リポートを作成し、適宜配布した。
2) 国内広報活動
 9月5日に行われた日本観光旅館連盟東京支部研修会等の主に国際観光振興会が関係する催しにおいて、当予約センターのサービスに付いて説明を行った。
3) 加盟希望施設の視察
 ウェルカム・イン加盟要件を満たしていることが証明できる(日本ホテル協会会員等)施設を除き、基本的に視察を行い、その結果に基づいて加盟の可否の決定を下すこととしている。
 今年度は26件の新規加盟申請があり、その内20件の視察を行なった。その結果、14件の加盟を承認し、4件については登録基準を満たしていなかったため登録は見送りとなった。
 因みに、本年度は35軒の施設の登録を取り消した。その主な理由は、休業・廃業、加盟料金基準の変更による料金不適合、営業方針変更による脱退であるが、本年度は廃業が19軒と圧倒的に多かった。
3. 外国人旅客対応力向上事業
1) 加盟施設に関するアンケートを実施
 宿泊客の施設に対する感想、満足度を把握し、その生の声をサービスの改善に生かすべく、昨年度に引き続き加盟施設に関するアンケートを実施した。成田空港、関西空港、東京及び京都の各カウンターで予約を行った客に手渡し、宿泊後に記入の上返送してもらった。調査項目は、「行きやすさ」、「部屋」、「清潔さ」、「接客態度」、 「外国語通用度」、「全体的評価」(以上の項目は5段階評価。5が最高、1が最低。)
及び自由記入欄とした。その結果、3月末日までに280枚を回収した。
 
   回答対象施設数:149

評価 行き易さ 部屋 清潔度 接客態度 会話力 全体評価
5 1 2 0 1 2 5 1 5 5 1 6 7 5 5 1 0 9
4 1 0 3 9 2 7 0 7 8 8 5 1 0 7
3 3 7 4 4 3 8 2 2 6 7 3 6
2 1 2 1 1 1 2 1 0 4 5 1 5
1 1 5 3 1 1 9 2
無回答 2 1 2 1 6 1

   全体的評価の平均:4.72
 
 上記の項目以外にコメントに書かれていた意見を要約すると、重複回答はあるものの、良かったとする意見が115件、苦情は65件あった。その内訳を見ると、
 
良かった点
・接客態度が良かった(44件)
・宿の立地、環境が良い(24件)
・宿の客室や設備が良い(19件)
・部屋が清潔(12件)
・サービスが良い(8件)
 
悪かった点
・宿の客室や設備がよくない(24件)
・接客態度が良くない(10件)
・車や電車等の騒音、清掃不十分(各8件)
・地図が分かりにくかった(8件)
・客室内に英語の案内がない(3件)
 
 良かったとするコメントの中には、漠然と「良かった」とあるだけで、具体性に欠けるものが20件ほどあった。苦情については、清掃不十分とはまた違い、隣の建物との距離がわずかで日光が入らないといった採光の問題から、日本らしい個性がないなどといった客室や設備に関する様々な意見が寄せられた。清掃不十分の問題は相変わらず上位を占めている。冷暖房の不具合は今年はあまり見られないが、騒音がかわって登場した。交通の便の良い宿では、車や電車の騒音はある程度避けられないが、宿のエアコンの音がうるさかった、近所のカラオケの音で眠れなかったなどの意見も寄せられた。地図が分かりにくかったといった意見には、宿側と話し合い、分かりやすい地図へ改善をした。
 このアンケート結果は、優良施設は機関誌上で紹介し、又、各宿泊施設にはそれぞれの宿に関する全ての回答を送付し、改善につなげてもらうように働きかけることにしている。
2) 施設の視察を実施
 主に上記1)のアンケートの回答や、宿泊者から寄せられる苦情の連絡を基に、問題があると思われる3施設の視察を行った。視察を行った者が気付いた点をその場で各施設に伝え、改善を働きかけた。
4. 広報事業
1) 英文宣伝印刷物の作成・配布
 予約センターの役割、全加盟宿泊施設の案内、予約手続及び加盟宿泊施設の種別説明、海外からの予約申込書からなる英文宣伝印刷物「Directory of Welcome Inns」を作成し、JNTOの海外事務所(ニューヨーク、シカゴ、サンフランシスコ、ロスアンゼルス、トロント、サンパウロ、ロンドン、パリ、フランクフルト、北京、香港、バンコク、ソウル、シドニー)及び日本観光協会の台湾事務所を通じて、40,900部を海外で配布した。国内では、各カウンター及び本部より34,500部の配付を行った。
2) インターネットによる広報・宣伝
 平成13年3月末に当財団独自のサイト(http://www.itcj.or.jp)を開設(添付資料[6])し、その中でウェルカムイン加盟施設の紹介、予約受付を行っている。咋年度に引き続き、国際観光振興会のサイトに通年リンクしている。また、JAWOCからの依頼により、JAWOCのサイトの宿泊情報のぺ一ジから当財団のサイトヘのリンクを平成13年10月から平成14年3月上旬まで行った。ワールドカップ期間の予約が殺到し、開催地のほとんどの施設が満室という状態になったため、3月中旬以降はリンクを止め、ウェルカムイン予約サービスの照会とホームページアドレスの掲載のみとなっている。
3) 海外雑誌、ラジオでの紹介
 平成13年度中に当センターが情報提供を行ったうちから、以下の誌紙・番組でウェルカム・イン予約事業が紹介された
・Budget Travel 2002年9月号
 アメリカの、タイトル通り経済的な旅行を紹介する旅行雑誌で日本旅行のアイデアとして当予約センターの活用が紹介された。
(添付資料[8])
・韓国国営ラジオ放送(KBS)のワールドカップマイナス100日特別放送番組
 2月6日に取材を受けた時点での開催都市の満室状況、予約サービスの内容などインタビューをもとにお役立ち情報として紹介された。
5. 調査研究事業
1) ウェルカム・イン・データベースの更新
a. 加盟宿泊施設のデータベース
 加盟宿泊施設情報の検索・更新と外国人旅客による加盟宿泊施設の利用状況を把握するため作成している加盟宿泊施設関連情報データベースを維持し、変更情報については更新するとともに、新規加盟の宿泊施設の情報を新たに加えた。
(加盟宿泊施設データベースの概要)
○加盟宿泊施設のデータベース(添付資料[3]参照)
 平成14年3月31日現在732軒の宿泊施設情報を記録。予約窓口での予約斡旋業務に活用すると共に英文宣伝印刷物「Directory of Welcome Inns」の編集・発行に利用。
○日・英文併記アクセス地図(添付資料[4]参照)
 予約が成立した外国人旅客に当該の宿泊施設の地図を提供し、容易に到着できるよう配慮している。加盟宿泊施設732軒分のアクセス地図を記録保存している。
b. 斡旋実績のデータベース
 予約成立時に発行する予約確認書(添付資料[2]参照)をもとに予約を斡旋した外国人旅客の訪問地、施設、人数、国籍、延べ宿泊数、支払額、予約取扱窓口等のデータベースが作成できるようになった。これを斡旋実績の統計作成に利用している。
 (斡旋実績データベースの概要)
 ○ 宿泊地  ○ 国籍別構成 ○ 年齢別構成
 ○ 宿泊施設 ○ 宿泊日   ○ 支払い額
 ○ 性別構成
2) 外国人旅客による加盟宿泊施設の利用実態報告書の作成・配布
 ウェルカム・インデータベースに記録した外国人宿泊客のデータを分析し、利用実態を「予約斡旋状況」として取り纏めた。当予約センターの活動の参考にするだけでなく、この報告書を希望する加盟宿泊施設へ配布し外国人旅客の受入れに対する問題意識を喚起するとともに、国際観光振興会海外観光宣伝事務所等の広報に協力していただいている諸機関に配布し、日頃の広報活動の成果を還元した。
3) 利用者アンケートの実施
 利用者の嗜好や、特性を掴むことを目的として、昨年度から成田空港、関西空港、東京及び京都の各カウンターで予約申込をした利用者にアンケートを行っている。平成13年度の結果は以下の通り。
1. なぜその宿泊施設を選んだか?

平成13年度 平成12年度
 和風が良かった 24.2% 22.3%
 洋風が良かった  6.6% 8.5%
 料金        24.7% 25.5%
 立地        27.9% 26.6%
 ガイド本等の推薦 10.7%  9.1%
 そこしかなかった   6.0%  7.9%



2. 旅行期間


平成13年度 平成12年度
 1週間以下 35.7% 46.3%
 10日以下 14.5% 15.2%
 2週間以下 18.5% 12.1%
 3週間以下 15.9% 13.7%
 3週間超 15.3% 12.7%



3. JNTOのウェッブサイトを訪日前に見たか?

平成13年度 平成12年度
 見た 30.0% 26.8%
 見ていない 70.0% 73.2%



4. ウェルカムインのぺージを訪日前に見たか?

平成13年度 平成12年度
 見た 20.1% 18.6%
 見ていない 79.9% 81.4%



5. 何回目の訪日か?


平成13年度 平成12年度
 初めて           67.6%  64.4%
 2回目           13.5% 16.1%
 3回目           5.5%    6.0%
 4回目以上         13.4%    13.5%
 全て、自分で書き込んでもらうのではなく、予め用意されている選択肢の中から選んでもらう形にしている。「1」のなぜその宿泊施設を選んだか?という設問に対しては、実際には「駅から近い○○○○円位の旅館(ホテル)」という様に複合的な要素により決定されるため、その中から相応しいものを一つに限定せず回答してもらっている。
 「1」選んだ基準については、洋風が良いとする人の割合が和風の1/4と少なくなった。その他の項目については、昨年度の比率と比べて大きな変化はない。
 「2」の旅行期間については、1週間以下がやはり最も多いが、全体のうちに占める割合は昨年よりも約9%も減り、10日から2週間滞在する人が増えている。
 「3」、「4」については、昨年より若干見た人の割合が増加している。カウンター利用者は初来日の割合が高い。本年度は67.6%と昨年より3.2%増加した。








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