3 循環型社会を目指した今後の取り組み
本調査研究では、松山市のごみ処理・リサイクル事業の中で、食用廃油と剪定枝に焦点をあて、リサイクルシステムを検討した。これらのリサイクルシステムは、単にリサイクルによるごみの減量にとどまらず、限りある資源の保全、環境負荷の低減、市民へのPR・啓発に効果があるものと考えられる。
今後は、循環型社会の構築という大きな目標に向けて、松山市は様々な形での事業展開を求められることになる。ここでは、「えひめ循環型社会推進計画」に沿った形で、今後の松山市が循環型社会を目指したごみ処理・リサイクル事業を展開していく上で重要になると考えられるポイントを示す。
[1] 環境意識の高揚
平成12年、国の循環型社会形成推進基本法が制定された。ここでは、ごみ問題を解決するためにはまずごみになるものを出さない「発生抑制」重要であるとして、廃棄物処理の優先順位を次のように明記している。
発生抑制>再使用>排出抑制>熱回収>適正処分
また、「えひめ循環型社会推進計画」においても、愛媛県全体の排出量減量目標が示されている。製造業者がものを生産し、流通業者がものを販売し、消費者がものを消費し、行政がごみとなったものを処理するという構造を改める必要がある。
回収した資源を再生しても、商品として流通し、消費者に消費されなければ、リサイクルの輪は完結しない。現在、資源を回収しても、回収した資源がだぶついてしまうという現象が顕在化しており、資源の循環を円滑に進めるための、いわゆるリサイクルの出口対策が求められている。
これらの取り組みについては、行政がシステムを構築して市民・事業者が実施するという性質のものではなく、市民・事業者・行政が各々の役割分担に基づいて行動する必要がある。松山市は、市民への環境学習や子供たちに対する環境教育、市民や事業者への環境情報の提供等によって、市民・事業者が各々の役割を果たしやすいような仕組みづくりや、三者の協働を円滑に進めるための情報提供など、三者のコーディネーターとしての役割を果たしていく必要がある。
[2] 多様なリサイクルシステムの定着促進
「えひめ循環型社会推進計画」では、愛媛県全体のリサイクル目標を設定している。松山市におけるリサイクル率を向上させるためには、新規品目のリサイクルが必要であるという視点から、本調査研究では、食用廃油と剪定枝を取り上げて、リサイクルシステムを提案してきた。しかし、これ以外の品目でも、容器包装リサイクル法の対象品目である紙箱・包装紙などの紙製容器包装や、可燃ごみの中に含まれる割合が最も高いと考えられる生ごみのリサイクルは行っていない。全国的にみると、これらの品目については、既にリサイクルを行っている事例があることから、松山市においても取り扱いについて検討していく必要がある。
松山市では、既にびん・缶類、古紙類、プラスチック類の分別収集を実施しており一定の成果を上げている。しかし、ごみとして捨てられているものもあると考えられることから、既存品目についても収集量を増加させるような取り組みが必要である。特に、松山市では人口が増加し、とりわけ単身世帯が増加している傾向がみられることから、一般にごみ問題には無関心といわれるこれらの層に協力を求めていく努力が必要である。
また、リサイクルシステムについては、行政の分別収集以外にも、地域の取り組みである集団回収や事業者による店頭回収などが行われている。これらの民間における取り組みについても支援することで、多様なリサイクルシステムの定着を図る必要がある。
[3] 環境ビジネス支援制度の拡充
本調査研究の中で取り上げたように、民間事業者の中で、事業系の食用廃油をバイオ・ディーゼル燃料に再生しようとする動きがみられる。今後のごみ処理・リサイクル事業、特に事業系ごみのリサイクル事業については、行政が担うのではなく、民間事業者の積極的な参入が求められている。行政は、これらの新しいリサイクルビジネスの芽を育て、育成していく必要がある。また、事業系のリサイクルシステムと行政が行う家庭系のリサイクルシステムをつなぎ合わせて、民間と行政が一体となったシステムを構築することで、より効率的で環境負荷の少ないリサイクルシステムの構築が期待できる。
また、本調査研究では、剪定枝からペレットを製造する事業を展開しようとするNPOの動きを取り上げた。NPO支援法等により、我が国でもNPOに対する認識が高まっており、今後、ごみ処理・リサイクル事業のひとつの柱としての位置づけが期待できる。行政は、このようなNPOの取り組みについても育成支援していく必要がある。
[4] 環境優先行政の実践
「えひめ循環型社会推進計画」では、愛媛県全体の最終処分量目標を示している。松山市では、最終処分量を減らすため、焼却灰を溶融してスラグ化する設備を導入するなど、最終処分量の減量に努めている。全国の自治体の中には、溶融スラグの再利用を実施している自治体もあることから、さらなる最終処分量の削減について検討する必要がある。これらの取り組みをはじめ、松山市のごみ処理・リサイクル事業は環境への負荷をできるだけ少なくなるような取り組みが必要である。
環境優先行政を実践するためには、ごみ処理・リサイクル部署だけの取り組みでは限界がある。庁舎内のすべての部署が環境への意識を十分に高め、各々の役割の中で環境に配慮した施策を実践することにより、松山市の目指す「環境日本一」を達成することが可能である。本調査研究においても、食用廃油から再生したバイオ・ディーゼル燃料を他部署の車両(市庁舎、福祉車両)で使用すること、剪定枝から再生した堆肥を市内農家で使用することなどを盛り込んでいる。このような、全庁あげた横断的な取り組みを、あらゆる機会を通じて実施していくよう配慮する必要がある。
図表7−2 松山市の取り組むべき施策の整理
愛媛県の方向性 |
松山市の具体的な施策 |
環境意識の高揚 |
環境教育・環境学習の充実 |
・児童・生徒の環境学習の拡充 ・(仮称)リサイクルセンターでの環境教育・環境学習の実施 ・消費者団体・NPO等との連携強化 |
環境意識の普及啓発 |
・リサイクル活動を通じた環境意識の醸成 |
環境情報の提供 |
・広報、掲示板等による情報提供 ・椿インターネットによる情報提供 ・(仮称)リサイクルセンターでの情報提供 ・インターネットやiモードの活用 |
多様なリサイクルシステムの定着・促進 |
新たなリサイクルシステムの導入 |
・食用廃油・剪定枝のリサイクルシステムの確立 ・生ごみリサイクルシステムの確立 ・再生品の利用推進 |
リサイクル施設の整備促進 |
・(仮称)リサイクルセンターの建設 ・西クリーンセンターの建て替え |
容器包装リサイクルシステムの定着促進 |
・金物・ガラス類、紙類リサイクルの拡充 ・プラスチック類リサイクルの拡充 |
家電リサイクルシステムの定着促進 |
・事業者によるリサイクルシステムの定着促進 ・不法投棄の防止対策 |
環境ビジネスの支援制度拡充 |
環境ビジネスの育成支援 |
・市内事業者の民間活力の利用推進 ・NPO等の環境ビジネスへの参入支援 |
環境にやさしい技術の導入 |
・西クリーンセンター竣工時の最新技術の導入 ・市内事業者のリサイクル施設導入時の支援 |
環境にやさしい事業活動の展開 |
・商店街等のリサイクル活動の支援・促進 ・商店街等と連携した消費者啓発の推進 ・事務所のリサイクル活動の支援・促進 |
環境優先行政の実践 |
不法投棄防止対策の推進 |
・家電リサイクル法施行にともなう不法投棄防止対策の強化 |
環境に配慮した行政活動の展開 |
・全庁をあげた横断的な環境行政への取り組み強化 ・周辺自治体との広域的な連携強化 |
図表7-3 松山市の今後の取り組み
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