日本財団 図書館


3 桑名・員弁デジタルコミュニティ(仮称)の実現に向けて
 桑名・員弁デジタルコミュニティ(※)(仮称)の基盤システムとなる広域ポータルサイト(※)コミュニティ・インキュベータ(※)の内容についてこれまで述べてきたところであるが、ここでは両者のビジネスとしての展開、運用主体のあり方などについて検討し、実現に向けた課題の整理を行うこととする。
(1) ビジネスのステップと範囲
 基盤システムの実現に向けては、広域ポータルサイトのサービスを基礎サービスと高度双方向サービスとに分けて整理したように、一定の段階を切って進める必要がある。この段階も、電子自治体化の進展や地域における急速なインターネットの普及を念頭に置くと、できるだけ短期間の充実した準備期間の後、事業可能性の高い情報サービス事業に着手する展開段階へと向かうことが望まれる。
 
・準備段階
 今後数年の間に広域ポータルサイトにおける基礎的な情報サービスの実現とコミュニティ・インキュベータの基盤を形成する。
 この段階のビジネス範囲は、地域情報の電子的提供、広域行政情報の電子的提供など公的情報サービスの拡充と、公的機関が中心となった民間の情報提供サービスの調整、コミュニティ・インキュベータの運営を担う中間支援組織の選定、支援基金の造成などであり、公的な性格の強い事業が中心となる。
 こうした事業と平行して、展開段階においてビジネス化するべき事業の試行を進め、フィージビリティ(事業化可能性)を検討する。
 
・展開段階
 電子自治体と地域へのインターネット普及を基盤として、広域ポータルサイト、コミュニティ・インキュベータの両者が相まって地域コミュニティヘのサービス事業を本格化する。サービス事業は、準備段階のフィージビリティスタデイ(事業化可能性調査、以下F/S)をもとに取捨選択を進め、迅速かつ的確な事業着手を進める。
 広域ポータルサイトは、電子自治体化の進展を受け、個人認証基盤(※)組織認証基盤(※)を確立し、自治体からの外部委託を受けて、委託などにより公的施設の予約、料金支払い、遠隔講座の実施など、広域行政手続、広域行政サービスの電子的実施を行う。また、情報サービスと認証基盤、双方向サービスを通じ、介護ニーズと介護サービス、高齢者や就業主婦への商品配送、健康管理サービスなど地域のニーズと実サービスとをネット上で仲介して連動させ、仲介手数料などによってビジネス化を進める。
 コミュニティ・インキュベータは、選任された中間支援組織が主体となって、多彩な実体支援、IT支援を実現し、運営を進める。
(2) ビジネスモデルと事業主体
・ 準備段階
 準備段階の事業は広域行政情報、地域情報の提供を中心に行うものであり、全国平均を下回る低いITサービス水準の拡充という基本住民サービスの向上を図る形となる。これは基本的には地域の公的機関の役割とみることができよう。また、コミュニティ・インキュベータの運用を担う支援機関の選定、支援基金の造成などは公的機関が主体となることではじめて実現できる事業である。これらの事業については、公的機関自身もしくはその委託を受けた研究機関、中間支援組織、情報サービス事業者もしくはその複合体が事業の構築・運用を行うこととなろう。
 この時期に広域ポータルサイトの行う情報サービスは試行性の強い段階であり、高度な双方向性サービスを含めてこれを利用する一般住民の利用負担は想定されない。
 また、展開段階の情報事業について行うF/Sは、公的機関とともに実サービスを担う民間企業などの出資を得て設立されるF/S会社によって実施される。
 
・ 展開段階
 展開段階の事業は、公的機関の予約、申込、料金支払いなど公的機関が中心となって行うべきものと、仲介サービスにもとづく介護サービスやオンラインショッピングなど民間で実サービスを担う事業者との連携のもとに行うべきものとがある。公的機関の行うべき事業や仲介サービスは、個人情報保護法などで示される個人情報の取り扱いについての方向性をふまえる必要はあるが、基本的には公的責任を担いうる第三セクターなどへの外部委託を想定できよう。
 この段階の広域ポータルサイトは、第三セクターが準備段階からの広域行政情報、地域情報のサービスとともに、高度双方向サービス、仲介サービスを担う形となり、公的機関からの委託、手続などの実施に伴う利用者からの手数料、事業者から徴収される仲介サービス手数料などによる事業運営を行っていくこととなろう。
 コミュニティ・インキュベータの運営については、中間支援組織が新たな地域コミュニティの創造・再生という公的役割を担うものであり、公的機関からの委託を基本とすることとなろう。
中間支援組織は、そのサービス内容の拡充を図る上でも、インキュベータとして持つ企画機能を活かし、支援を通じて実践能力を高めたNPO法人とともに公的機関などから外部委託を受け、自立的なビジネスの展開を図ることも必要となろう。
(3) システム機能
 広域ポータルサイトとコミュニティ・インキュベータの事業を担うシステムの機能は、図表4-13に示したように、情報サービスから仲介、申請・手続、認証、決済までを一貫して実現する基盤機能と、その上に遠隔講座、遠隔診療・相談、オンラインショッピングなどのサービス機能、それらのサービスを利用者に統合的かつニーズに即した形で提供する個人ポータルサイト機能の複合体として提供される。
図表 4-13 桑名・員弁デジタルコミュニティ(仮称)を実現するシステム機能
(拡大画面: 77 KB)








日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION