広域的な情報サービスについては、既に多くの先進的な取組がなされ、成果を上げつつある。桑名・員弁地域での満足度の低い生涯学習関連サービスについては富山県の「インターネット市民塾」、スポーツ施設などの公共施設予約では千葉県長生・山武地方拠点都市地域整備推進協議会の公共施設予約システム、これらを統合した地域ポータルサイト(※)としては早稲田商店街が運営する「早稲田の暮らし方」などの事例があり、これらを図表3-5にまとめた。

　富山県のインターネット市民塾の特徴は、インターネットの双方向性を最大限に活用した形で、誰でもが講師になれ、誰でもが受講者になれる「学習機会のフリーマーケット」を実現している点である。多くの教える知識を持った人々が集うことによって、きわめて多様なジャンルの学習機会が創出されることになり、地域内の多くの市民が距離を気にすることなく受講することが可能となる。また、電子会議機能を用いて学習後の雑談や意見交換など新たなコミュニケーションも作りだしている。

　千葉県長生・山武地方拠点都市地域整備推進協議会は、構成16市町村、2広域組合(山武郡市広域行政組合、長生郡市広域市町村圏組合)が参加して、公共施設の案内、空き状況の確認、予約がインターネット上で可能なシステムの運用を開始している。

　「早稲田の暮らし方」は、東京都新宿区の早稲田商店街が早稲田大学、地域団体と共同で運営する地域ポータルサイトである。地域ポータルとされるのは、上記の生涯学習に関連する「学ぶ」以外に「住まい:購入、賃貸情報」、「移動:交通情報」、「飲食」、「働く」、「出産・子育て」など多様な情報分野を提供し、早稲田地域で暮らすときに必要な情報すべてを提供仕様としているためである。また、情報交換も積極的に進め、環境問題への取組も積極的に進め、集会など実体的な交流も行われている。

　こうした活動の背景として、一定の決済手段は必要となってくるが、長野県駒ヶ根市では商工会議所、地元金融機関、自治体が連携してポイント機能、プリペイド機能、キャッシュカード機能を持つICカードの運用が進められている。基本的には地域商店街に顧客を呼び戻すためのツールであるが、市役所の各種手数料の支払い、公立病院の医療費支払い、高速バス乗車券、公共施設利用料の支払いなど幅広く利用することが可能となっている。 　さらに、通勤客などの広域化した生活行動に対応した情報拠点の設置事例として、埼玉県の埼玉県領事館の事例がある。埼玉県から通勤するサラリーマンなどを対象にパスポート申請、受取、住民票の写し、戸籍謄本・抄本の交付請求、災害情報の提供・収集など幅広いサービスを居住自

治体に代わって受け付けるものである。バックアップの情報システムの整備は行われているが、必ずしもITが前面にでたものではない。それ以前に受付担当者を埼玉県全市町村からの出向者扱いとするなどさまざまな実現のための仕組は参考になるといえよう。

　三重県では、鈴鹿市が生活基盤から行政情報まで多様な情報サービスを実現している。また、隣接県では名古屋市の提供情報が比較的充実している。

　鈴鹿市では、ガラス張りの市政をテーマに、詳細な環境情報を始めとして、図書館蔵書検索、各種講座情報の提供を行い、行政手続についても請求方法、記載方法、問合せ先などきめ細かい情報提供を行っている。その他、四日市市の被害情報、休日応急診療所情報、久居市のゴミ収集情報、イベント情報などが比較的充実している。

　名古屋市は鈴鹿市に比較して若干行政手続などのいくつかのぺージに分散しているが、スポーツ施設の空き情報、予約などのサービスが充実している。また、ボランティア情報センターを設置し、活動団体の名称、活動内容、連絡先など詳細な情報をデータベース化している(図表3-6)。