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3 調査対象地区の特性と資源環境
(1) 対象地区の特性
 対象地区の特性は図表1-3-1のように捉えられる。
図表1-3-1 対象地区の地域特性
区分 地区特性
位置 ○浅羽町の南端、遠州灘の中央西寄りに位置している。
○東名高速道路袋井IC、及び東海道新幹線掛川駅から直線で10km、時間にして30分  前後で到達できる。
○西は福田町の福田漁港、東は大須賀町にまたがるゴルフ場に隣接している。
歴史的背景 ○天竜川からの堆積土砂と黒潮の海流によって形成された地区であり、いわば現浅羽町の原形を形成した地区でもある。
○歴史的建造物として南地区にある最も古い寺は大福寺で (1599年:安土桃山時代後半)、概ねこの地区の開発のスタート時期として捉えられる。なお、主たる集落の基礎が形成されたのは徳川期である。
○紀州方面との繋がりが強く、熊野権現を祭る神社があり、行者(修験者)が多く住み着いてもいた。さらに、海に面した地域の特徴として「寄木神社」の立地や、唐人の漂着事件といった歴史を残している。
○明治以降農地造成が行われ、明治割・大正割・昭和割と呼ばれ、それに伴い防砂・防風林としての松林が残っている。
○一方、水害等の戦いの歴史も長く、現在「命山」という知名にそれが象徴されている。
自然環境 ○気候は年間を通して温暖な気候で年平均気温16度で、冬季の積雪はほとんどない。
○海岸一帯は砂浜と松林が織りなす優れた自然環境地で、一帯が御前崎遠州灘県立自然公園 (特別地域) に指定されている。
○但し、海浜侵食により砂浜は徐々に狭くなっており、松林も松食い虫の被害やゴミの不法投棄等があり、自然環境の荒廃がみられる。
○遠州灘一体はアカウミガメの産卵地となっているが、当地区においては四輪駆動車の侵入などによる卵の破損があり、人口ふ化場を設け卵の保全を図っている。
○また、最近の動きでは、休耕田に貯水したことにより、全国でも有数の野鳥の飛来地になり、自然との共生の一つの動きとして評価される。
人口の動き ○計画対象地区を含む行政区 (南地区) として捉えた人口は3998人 (平成13年4月) で、コンスタントな増加傾向にある。
○但し、計画対象地区に限ってみると、人口約200人、世帯数50世帯でほぼ横ばいの動きである。
産業 ○従前はほとんどが農業であったが、農業従事者の高齢化、後継者不足、砂地農業の難しさ等から、現在では養鶏・養豚の事業者とトマトやバラ栽培農家がある程度で、多くの農地は遊体農地となっている。
○工場は昭和40年頃から立地がみられ、本計画対象地区には18事業所が立地している。業種的には自動車や機械の部品製造が多いが、インテリア家具や食品加工業もみられる。
主たる施設立地状況 ○農業・工業の産業施設以外では、公共の体育施設が対象地区の中心部にあり市民農園が対象地区の西部にある程度である。
区分 地区特性
観光レクリエーション利用状況 ○浅羽町全体で約8万人で、ほどんどが対象地区の海浜部の利用客である。
○遊泳禁止区域であり海水浴はあまりみられないが、釣りやサーフィンスポットになっている。但し、サーファーや釣り客の車による海浜乗り入れはアカウミガメとの環境問題を起こしている。
○海の利用面では、観光客から申し込みが有れば地元グループにより観光地引き網を行っている。
○また、浜松御前崎自転車道が海岸部を走っているが、利用基地となるような機能 (例えば駐車場等) も無いため、利用は極めて少ない。
土地利用・土地所有・土地規制 ○土地利用は、一部の工業用地以外はほとんど農地であるが、遊休農地がかなり占めている。
○土地所有状況についてみると、公有地は松林 (大半が国有地で一部集落が所有している) と公的施設の立地地区くらいで、大部分が民有地である。
○土地所有形態は、明治以降の農地造成に伴い南北に細長く所有している形態になっており、対象地区の土地所有者は約300名程度 (町内在住者) である。
○土地規制では、内陸部は農業振興地域の農用地指定が概ねかけられており、海浜部は県立自然公園特別区域となっている。
道路・交通 ○対象地区の中央部を農道が東西に走り、将来計画としてほぼこの農道に沿って国道150号バイパスの計画がある。
○計画対象地区に係わるバス路線は、町の自主運行バスが町の中心部と対象地区の中心部にある勤労者体育センターを結んでいるが、便数は極めて少ない。
その他基盤環境の整備状況 ○上水道の幹線は現在立地している工場を中心にネットワークされており、将来の太田川ダムの完成により、水供給上の問題はあまりない。
○排水関係で問題になるのは養豚場の屎尿処理で、臭い公害が周辺地域に及んでいる。
図表1-3-2 計画対象地区の土地利用の概況
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図1-3-3 計画対象地区のフィールド点検(その1)
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図1-3-3 計画対象地区のフィールド点検(その2)
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図表1-3-4 計画対象地区の資源特性
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(2) 保全及び活用すべき資源対象と特性
 先に示した計画対象地区の現況分析からみて、大きくは次の3つの枠組みから、保全及び活用すべき資源対象が捉えられる。(一部計画対象地区周辺を含む)
ア 自然系資源
 最も代表的な資源が海・海浜に象徴される自然系の資源であり、保全していくことが前提的な考え方となる。
 ただし、浅羽町の土地形成史を勉強できる舞台であり、アカウミガメに代表される海や海浜の様々な生態は環境問題を考える格好の素材でもある。
 これらの資質をまずは町民や浅羽の子ども達が理解し、適正に活用するとともに、浅羽町に立地する企業あるいは掛川・袋井・磐田等の周辺都市住民も一帯となった、“自然環境の保全から創造へ”という考え方の取り組みが必要である。
■ 特性ある自然系資源
○ 水・海の生態
○ アカウミガメ
○ 海浜
○ 防風・防砂の松林
○ 遠州灘の海風
○ 亀の松(海亀の供養費と伝説)
○ 野鳥の飛来等
イ 歴史・文化系資源
 計画対象地区の歴史的史実が明確に残っているものは安土桃山時代後半からであり、単体資源で大きな誘致力をもつ資源はない。
 ただし、古くから紀州方面との繋がりを示す史実や、海との関わりを示す神社、あるいは津波や水害との戦いを示すものなど、こまかく辿っていくと計画対象地区周辺の歴史的な物語が紐解かれる素材が点在している。
 これらの資質は、自然系資源と同様、まずは町民がしっかりと認識し、“わが町を知る”という観点から再発見していく必要がある。
 その上で、当地を訪れる人たちにも、“地域に触れる素材”として提供し、より浅羽をさらには遠州灘を知ってもらう素材として活用していくべきものである。
■ 特性ある歴史・文化系資源
○ 各種の神社・仏閣
・ 海岸への漂着物(寄木)を祭った大野寄木神社等
・ 漁師達の航海安全を祈った風宮神社
・ 熊野権現を祭った江川神社等
○ 西国三十三カ所巡礼供養碑(和歌山県那智の青岸渡寺〜岐阜県美濃の谷汲山)
○ 修験道の事跡
・ 行人塚(諸国を遍歴する修験者)
・ 前浜行者堂(奈良県大峰山を中心霊山とした修験道のお墓)
○ 湊両墓制墓地(浅羽辺りが近畿地方を中心とした両墓制の東限)
○ 唐人の漂着事件の事跡(江戸)
○ 湊浜製塩所跡(明治初期)
○ 津波や水害との戦いの歴史
・ 浅羽大囲堤
・ 命山等
ウ その他の資源
 計画対象地区には歴史・文化系資源のところでも記載した寄木神社にみられるように海からの漂着物といったユニークな資源(資源の捉え方によるが、国境を越えた様々な流れ物・寄り物がみられる)や、計画対象地区にある工場の生産品や生産過程で生じるリサイクル可能な物(例えばインテリア家具の廃材等)、あるいは浅羽町内に立地する企業との結びつきで展開が考えられるもの(例えば日本ペットフードと結びつけたドッグラン的な施設づくり等)など、その展開工夫によっては活用できる資質が内在している。
■ その他の資源で特出できるもの
○ 海浜への漂着物
○ 工場の生産物やシステム及び廃棄物(リサイクル化を含め)
○ 明治割り・大正割り・昭和割りの農耕開拓の事跡
○ 砂地農業の痕跡
○ 水耕栽培のバラ栽培農家
○ 遊休農地等の未利用地等








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