第3章 市民団体の活動実態と支援ニーズ
本章では、まず、市民団体のうち、地縁団体である町内会・自治会の現状を、組織、活動内容、行政との関係、活動課題の面から見る。続いて、テーマ型市民団体について、同様の項目をアンケート調査及びヒアリング調査により分析する。
1 町内会・自治会の活動実態
(1) 組織の概要
藤枝市において、町内会・自治会の存在は大きく、加入率は約95%と高い。ただし、アパート(ワンルームなど)などの多い地区では未加入者が比較的多い。
藤枝市全体の町内会・自治会を束ねる組織として、自治会連合会がある。自治会連合会には、藤枝市が誕生する以前の旧町村単位で9つの支部がある。各支部には、自治会長、民生委員、児童委員がメンバーとなっている地区社会福祉協議会があり、実質的に、地区社会福祉協議会と自治会・町内会は一体となっている。そのメリットとしては、情報収集、行事への動員などがある。また、社会福祉協議会をうまく活用している町内会もある。
自治会は全市で45あり、その下に、町内会が173ある。また、町内会とほぼ同じ地域を対象とした自主防災組織が全市で159ある。自治会長は、市から自治協力員を委嘱されており、市の連絡調整、まちづくりに協力している。
一方、各町内会には、藤枝市から委嘱された保健委員、民生委員、児童委員がいる。これらの委員の中には自治会の役員を兼務している人が多い。
保健委員は、地域における健康づくりに向けて、保健婦などを呼んで、健康体操など講座の開設を行っている。民生委員は、福祉フォーラムなどを行っており、地域住民の間に、高齢者の見守りの必要性が認識され始めている。主任児童委員は、子育て支援を行っている。
図表3−1 藤枝市における自治会・町内会と委嘱委員などとの関係
(2) 活動内容
自治会連合会の活動方針は次の2つである。
[1] 各地域において自治会、町内会の組織を充実させ、対話と協調による明るいまちづくりと住民の健康増進を図るとともに、自らも進んで奉仕する意識を育てる。
[2] 向こう三軒両隣の絆を広め、家庭環境の見直し、青少年の健全育成、防災、交通安全活動の推進等の啓発を行い、住みよいまちづくりに努める。
自治会連合会の主な活動は、交通安全運動及びグラウンドゴルフである。交通安全運動は市の市民安全課と、グラウンドゴルフは市のスポーツ振興課と、それぞれ共同で行っている。また、支部ごとに地域おこしとして、体育祭、お祭りなどに取り組んでいる。
町内会や自治会の活動は、[1]町内会単位の場合、[2]自治会単位の場合、[3]自治会と町内会が一緒に活動する場合の3パターンがある。
自治会は、下記に示すとおり多岐にわたる活動を行っている。その性質や目的は次のように幅広い。このように、それぞれの活動は公益性が高く、自治体・町内会は地域社会で重要な位置を占めている。
[1] 地域の共通課題の解決
[2] 地域住民の生活の充実
[3] 地域コミュニティの活性化
[4] 行政の補完
自主防災など、自主的な活動も見られるが、行政からの依頼事項によるものも多く、行政活動を地域で支えている。地域住民の生活の充実に係わる事項について、全国の市町村と同様に、藤枝市でも、自治会・町内会に依存する傾向がある。ただし、自治体によっては、最近、行政事務の適正化の動きに伴い、自治会・町内会の負担の軽減を図る方向で、行政と自治会・町内会の関係の見直しを始めている。
図表3−2 自治会の活動内容
分野 |
自治会の活動 |
性質・目的 |
環境保全 |
ビン、缶などの資源物・不燃ごみの分別排出(月1回) |
[1] |
新聞紙・ダンボールなど紙類の分別排出(月2回) |
[1] |
可燃ゴミ、資源の分別、不燃ごみの集積場の整備・維持管理(通年) |
[1] |
生活排水路の清掃・維持(年2回程度) |
[1] |
(自治会から選出された環境衛生自治推進協会の活動も含む) |
  |
防災 |
自主防災組織化(主に地震防災) |
[1] |
防災訓練への参加(年2回) |
[1] |
地域安全 |
無事故無違反コンクール(年4回) |
[1] |
パトロール車による広報活動 |
[1] |
一斉街頭指導 |
[1] |
交通安全総決起大会への参加 |
[1] |
福祉 |
敬老会の開催 |
[2]、[3] |
日赤募金運動への協力 |
[4] |
福祉大会への参加 |
[4] |
青少年健全育成 |
成人式の開催 |
[3] |
あいさつ運動の実施 |
[3] |
文化・教育・スポーツ |
運動会 |
[2]、[3] |
自治会対抗グランドゴルフ大会 |
[2]、[3] |
歩け歩け大会(一部地域のみ) |
[2] |
文化祭(一部地域のみ) |
[2]、[3] |
行政支援 |
行政連絡 |
[4]
|
行政への要望 |
[4] |
注:活動の性格は、[1]地域の共通課題の解決、[2]地域住民の生活の充実、[3]地域コミュニティの活性化、[4]行政の補完
出典:ヒアリングより作成
また、自治会・町内会は、環境、地域安全、福祉、保健、青少年の健全育成、文化・教育・スポーツの分野において、イベントなどを市民団体と共同開催したり、市民団体への活動に参加したりしており、いくつかの市民団体と協力関係にある。
一般的に、自治会や町内会は、市民団体の発展を阻害する存在として見られがちである
が、藤枝市ではそのような判断が当てはまるような状況はない。
図表3−3 自治会とテーマ型市民団体などとの関係
分野 |
テーマ型市民団体などとの関係 |
環境保全 |
市と環境自治協議会との共催による「ごみゼロ(530)」運動への参加(自治会をはじめ子供会などが参加)
消費生活・環境をテーマとした「みんなで考える生活展」への参加・協力
環境衛生自治推進協議会と消費者生活推進協会との意見交換会の開催 |
地域安全 |
暴力追放決起大会への参加 |
福祉 |
社会を明るくする運動(街頭指導)
地区社協への参画 |
保健 |
保健委員連絡協議会への参加 |
青少年健全育成 |
子供会との交流会の開催 |
文化・教育・
スポーツ |
公民館まつりへの参加
男女共同参画モデル地域事業への参加 |
出典:ヒアリングより作成
(3) 行政との関係
自治会・町内会は、藤枝市から、連絡広報、市主催の行事の事務などを依頼されている。
一方で、活動支援として補助金などの交付を受けている。
また、最近は、市民安全課を窓口として、行政への提言や要望を行っている。
(4) 活動する上での課題
新住民が多い地域は、自治会や町内会に加入しない人が多い。そのため、自治会活動は、新しい住民の多いところほど活動が停滞しているという指摘がある。その一方で、新住民が自治会の役員として活発に活動している地区もみられる。このように、参加の呼びかけを行えば、新住民の中にも活動に協力してくれる人もいるので、自治会や町内会の役員は積極的に声をかけるようにしている。