第2章 藤枝市における市民団体と行政の関係
市民活動、市民団体との関係の深い藤枝市の10の部署に対するヒアリングをもとに、行政側から見た市民団体との関係、市民団体に対する意識、協働に関する考え方、協働・市民参加の現状と課題についてまとめる。
ヒアリングした部署は、以下のとおりである。
社会福祉課、介護保険課、長寿福祉課、市民健康課、生涯学習課、道路河川課、公園緑地課、生活環境課、男女共同参画推進室、市民安全課
1 市民団体との関係
(1) 行政運営に関して
市民(議員等を含む)の行政に対する要望は、自治会長を通して市に提出されることになっている。まちづくりに関しては、自治会が緊急性の高い事項を選定し、優先順位をつけて市に要望を出している。全体の要望数は年間で約200件であるが、対応できる事項は年間2〜3割程度である。個々の要望への回答は行っておらず、工事を実施する場合のみ連絡している状況である。
また、まちづくりなどの事業を実施する際には、自治会の理解を得ないと難しい状況にあり、日常業務において、自治会とあまり接触がない部署においても、地域での事業を計画する場合は自治会に了解を得るようにしている。
(2) 市民参加に関して
ア 保健・医療・福祉
● 介護・福祉ぷらん21策定のための市民懇話会の市民委員の公募
市民懇話会は20人で構成され、うち3人は市民から公募した(応募は3人)。藤枝市 として初めて、中間案について市民から意見を集めるとともに、市民懇話会を傍聴できるようにした。
● 藤枝市障害者計画推進協議会への市民委員の参加
障害者プランを推進するために藤枝市障害者計画推進協議会が設置され、自治会、民生・児童委員などが委員として参画している。
イ 社会教育
● 生涯学習講座への市民の意見の反映
生涯学習に関する講座を計画する際に、市民にアンケートを行い、その結果を反映させている。講座の実施後にも、受講者に講座の評価に関するアンケート調査を行っている。ただし、分析は行っていない。
ウ まちづくり
● 親水公園づくりワークショップ
親水公園づくりに際して、ワークショップを開催し、公募により市民60人が参加した。4〜5のグループに分けて発表会を行い、発表された意見の中から計画に反映すべきものを採択した。これは、平成9年に河川法が改正され、計画策定の際にワークショップ等を開催し、地元の人の意見を聴取することとなったことに基づくものである。ただし、準用河川については、このようなことは適用されないため、事業の実施に際しては説明会のみを行っている。
● 藤枝駅南区画整理事業地内の公園整備への市民参加
JR藤枝駅の南側にある近隣公園の整備計画は、区画整理で生み出された土地であるため、地権者の参加を得て策定することになっている。
● 道路については、実施計画段階で、市民の意見を聞いて策定することは難しい。
エ 環境保全
● 環境基本計画策定のための市民懇話会
市民懇話会を開催し、市民の意見を採り入れながら環境基本計画を策定した。
● 環境基本計画推進委員会の市民委員の公募
環境審議会の下に環境基本計画推進委員会を設置し、委員11名のうち、一般市民から委員を4名公募した(応募者4人)。
● 21世紀の森づくり実行委員会の市民委員の公募
21世紀に向けた事業として、平成14年オープン予定の運動公園の伐採した斜面に植林し、市民の森をつくる計画が立てられ、実行委員を市民から公募した。約20名が応募し、委員会はすべて市民委員で構成された。市民委員中心に、植樹祭りが計画、実施された。
オ 災害救助
● 地域防災計画作成
地域防災計画の作成に際して、自治会連合会が協議に参加した。また、各自主防災組織における防災計画の作成には、市民参加を取り入れている。
カ 地域安全
● 交通安全事業への市民参加
交通安全運動期間中の事業計画の策定及び事業実施について、市民参加を取り入れている。
キ 男女協働参画
● 地区レベルの男女共同参画推進事業計画の作成
広幡地区に男女共同参画推進モデル地区を設定し、市民自らが、地区内の課題を取り上げ、それらの課題解決のための計画を作成した。参加メンバーは約35名で、月1回19:00〜21:00に会議を開催した。開催当初は、大学の先生が講師として研修を行い、意識啓発を行った。
● 男女共同参画に関する情報誌の編集
男女共同参画に関する専門情報誌を発刊するに際して、7名の編集委員を市民から募集した(男性1名、女性6名)。
● アンケート設計に関する市民の意見の反映
男女共同参画に関する住民意識調査(アンケート調査)の内容について、市役所内部で検討した後、その案を市民団体の代表で組織される懇話会に諮り、そこで意見を受けて、アンケート票を作成する。懇話会は15名程度で、任期は2年である。平成9年に作成した男女共同参画プランについても、前半が終了したので、後半のアクションプランを策定する際には、同様に市民の意見を反映させる予定となっている。
ク 市民活動全般
● 100人委員会(藤枝まちづくり会議)
第四次藤枝市総合計画を市民参加により推進する一環として、市民参加の問題点と参加の仕組み作りのため、平成13年度に100人委員会(藤枝まちづくり会議)を設置した。一般市民から委員を公募し、39名の応募があった。
(3) 市民活動への支援
大半の課で、個別に市民活動への支援がなされている。例えば、次のような支援が行われている。
● 河川の草刈り
自治会の年間計画の中で事業として位置づけされている河川(2級河川及び準用河川)の草刈りに対して、補助金を交付している。道具については、専門的なものが必要なため、貸し出しは行っていない。
● 公園の草むしり
地元の人が行っている公園の草むしりに対して報奨金を支給している。
● 町内などの美化
市内の公共施設や自治会へ花の種を無料で配布し、植栽や維持管理は地元の市民が行っている。
● 病院ボランティア
病院ボランティアを希望する人たちに、市立病院を活動場所として提供している。病院では、ボランティアは看護婦ではないため、できることに限界があることに留意している。また、病院とボランティアの間で意見交換会を開いているが、自主活動ということを尊重し、病院からの要望は極力抑えている。
(4) 市民団体などへの委託
一部の市の事業については、市民団体に業務委託を行っている。
● 都市公園の管理
市内に85箇所ある公園の管理のうち、樹木の剪定について、緑化協同組合やシルバー人材センターへ業務委託している。
● 男女共同参画市民フォーラムの開催
男女共同参画市民フォーラムの開催を平成11年からふじえだ女性の会へ委託している。
● 駅周辺放置自転車所有者への注意勧告
藤枝駅前周辺の放置自転車禁止区域の違反者への注意勧告を、(財)藤枝市振興公社の他に、シルバー人材センターにも委託している。
● 女性支援センターの運営
女性支援センターを設置して、運営を女性市民団体へ委託したいと考えている。
(5) 委員などの委嘱
行政サービスを円滑に進めるため、あるいは藤枝市の業務を補完するため、自治会・町内会などから推薦を受けて、下記のような委員を市民に委嘱している。これらの委員などは、自治会・町内会の役員が兼ねている場合もある。また、交代で担当するため、すべての委員が自主的に、積極的に活動しているわけではない。一方で、これらの委員に就任しつつ、市民団体で活動を行っている人もいる。
● 自治協力員
● 交通安全指導員
● 民生・児童委員
● 保健委員
● 介護さわやか相談員(高齢者福祉施設の入居者の不満などの把握)