(2) 真鶴町
1. 取組概要
[1] 景観条例
・ 景観に特化した条例はないが、「まちづくり条例」(平成6年1月施行)を定めている。
・「まちづくり条例」は、大きく以下の3つの柱から成っている。
[1]「まちづくり計画」(都市計画の基本的方針・市町村MP) →基本日標と方針、地区別計画
[2]「土地利用規制基準」(ゾーニング) →都市計画上の用途無指定地域を含む全町域について、町独自のゾーニングを行い、地区別に「建物用途」「建蔽・容積率」「建物高」「最少敷地面積」「壁面後退」について定めている。
[3] 「美の原則」→8つのデザインコード(美の基準)
・またその他、「建設行為の手続き」についても定めている。
[2] 景観計画
特になし
[3] 景観ガイドライン
・「景観ガイドライン」としては定められていないが、「まちづくり条例」の中で定められた「美の基準」がそれに該当する。
・「美の基準」では、8つのデザインコードを定め、場所の特性を示すキーワードごとに「課題」「解決方法」を図入りで解説。
○デザインコード:[1]場所[2]格づけ[3]尺度[4]調和[5]材料[6]装飾と芸術[7]コミュニテイ[8]眺め
[4] 表彰制度
・「まちづくり条例」(第28条)で、まちづくりに寄与した町民、建設行為者、団体への表彰制度を定めている。
[5] 要綱
(宅地開発等指導要綱)
[6] 協定
・町長により「地区まちづくり協議会」に認定された団体は、「地区まちづくり協定」を定めることができる。
・「地区まちづくり協定」が町の「まちづくり計画」と合致する場合は、「地区まちづくり計画」への移行可能。
[7] パンフ・小冊子
・「まちづくり条例」を条例策定時に全戸配布
・現在は役場窓口にて無料配布
[8] アドバイザー制度
・特になし
[9] 助成制度など
・「地区まちづくり協議会」に認定された組織に対して、以下の支援を実施。
[1]財政的支援(補助金の交付 上限30万円)
[2]人的支援(町職員・アドバイザーの派遣)
[3]物的支援(会場、印刷・コピー等)
(拡大画面: 91 KB)
■ 真鶴町まちづくり条例の構成(資料:真鶴町「まちづくり条例」パンフレット)
(拡大画面: 58 KB)
■ 条例に定められた建設行為の手続きのフロー(資料:「まちづくり条例」パンフレット)
(拡大画面: 102 KB)
■ 美の基準の一部(資料:真鶴町「美の基準・デザインコード」)
2. 取組着手の経緯
いつ頃の何が契機となって景観に関わる取組に着手したのか。
[1] 「白地地域」におけるリゾートマンション開発と水供給の危機
昭和63年 駅前にリゾートマンションが建設。それ以降、開発の圧力が一気に高まり、役場窓には連日5〜10件の相談が持ち込まれる事態になる。また、宅地開発指導要綱による行政指導に従わない事業者もあらわれる。 1988年以降に開発されたリゾートマンションのほとんどは、「未線引き」で用途が指定されていない「白地地域」で行われた。
昭和63年 「宅地開発等適正化対策特別委員会」を設置し、開発抑制方策の検討を開始。
平成元年 町議会がリゾートマンション建設凍結宣言を決議。
平成2年 宅地増加に応じた水供給の不足が問題となり、「上水道事業給水規制条例」「地下水採取の規制に関する条例」が町議会で相次いで可決。
[2] 「真鶴町まちづくり条例」の策定
平成3年 「真鶴町まちづくり条例」の条例策定作業を開始
(町役場職員+外部からの専門家の勉強会からスタート)
平成4年 まちづくり条例素案の住民説明会を実施(全11回、549名参加)
平成5年 「まちづくり計画」(都市計画の基本的方針・市町村MP)、「土地利用規制基準」(ゾーニング)、「美の原則」の3本を柱とする「真鶴町まちづくり条例」が町議会で可決(翌年施行)
3. 取組の効果
取組によりどんな効果が現れているか。
○業者意識の高揚
・「まちづくり条例」に定められた建設行為の事前手続きの受け入れ
→建設行為が行われる場合、町役場担当者が現地調査を行い、事業者に対して、「美の基準」をどの様に適用するかについて、リクエストを出すことができる。事業者は事前協議の中で、「美の基準」への取組について説明をおこなう仕組みとなっている。
また、事業者は事前公開の看板に「美の基準への取組」の欄を設け、「美の基準」に対する取組を示さなければならい。
○表彰
・日本都市計画学会「計画設計奨励賞」(1994年)
○その他
・「美の基準」に基づく町からのリクエストにより、計画の変更が行われた施設の例として海水浴場の監視施設がある。
■「美の基準」に基づく町からのリクエストにより、海水浴場へのアプローチ道路からの海への眺めを遮らないように、海水浴場の監視施設の位置が変更された。
4. 改善点など
効果を高めるためにやった方が良い、やった方が良かったと考えている事項。
○条例の全戸配布、シンポジウム
・真鶴町では、「まちづくり条例」を全戸配布しており、また定期的にまちづくりシンポジウムを開催しており、住民意識を高める上で効果的であった。
○職員勉強会
外部からアドバイザーを招くなど、役場内の検討体制を確立することが重要である。
○その他の課題・問題点
・「美の基準」の具体的な適用事例のほとんどは、公共性の高い建築物である。これは、例えば一般住宅等の場合、真鶴町では建築確認申請を受け付けられないためこの段階で町からリクエストが出せないこと、町役場の担当者のみで町内全域で行われる全ての建設行為について現地調査を行い、美の基準へのリクエスト調書を作成することが事実上不可能であること等の理由による。