(1) 函館市
1. 取組概要
[1] 景観条例
・ 罰則規定
○ 伝建地区:有/景観地域:無
[2] 景観計画
・ 数値的目安の有無
○ 景観地域:実質的高さ制限
○ 全市 :大規模による届出の基準として採用 →高さが与える影響を考慮している。
[3] 景観ガイドライン
・ 地区指定の有無
○ 景観地域内での「デザインガイドライン」の策定
・ 記述内容と運用について検証中
[4] 表彰制度
・ 都市景観賞(平成7年度から)
[5] 要綱
・ 別紙(関係規則・要綱)
[6] 協定
・実績なし
※ 景観形成市民団体2件
1) 函館市伝統的建造物群保存会H5〜H9(景観地域内)
2) 函館市中心街まちづくり協議会H13〜(景観地域指定予定地域内)
[7] パンフ・小冊子
・ 別添
[8] アドバイザー制度
・ 「デザインガイドライン」の運用検証で採用の検討中
[9] その他
・都市景観行政
2.取組着手の経緯
いつ頃の何が契機となって景観に関わる取組に着手したのか。
[1] 歴史的景観の保全への市民意識の高揚
1977(昭和52年) 旧北海道函館支庁庁舎(現元町公園内)の「北海道開拓の村(札幌市)」への移転計画を契機に、移転反対の市民運動
→現地での修復保存を決定
1978(昭和53年) 市民運動に参加した者を中心に「函館の歴史的風土を守る会」発足
・ 以後、歴史的景観保全の中心的市民団体として活動中
○ この後、一連の市民運動を受けて、行政として歴史的景観の保全に関わる取組を進める。
1982・83(昭和57・58年) 函館市西部地区伝統的建造物群調査(文化庁補助)
[2] リゾート型高層マンションの出現
1987頃から(昭和62年) 異国情緒ある雰囲気が人気となって、観光客の急激な増加が起こるとももに、地域内で高層マンションの建設が進む。→マンション建設反対運動
1988〜(昭和63年) 伝建地区、景観地域指定に伴う「駆け込み」建設が起こる。
・一部歴史的建築物除却
伝建地区、景観地域指定後は、周辺地域に拡大。→高度地区の指定等
[3] 1988(昭和63年) 函館市西部地区歴史的景観条例の施行
伝建地区の都市計画決定
都市景観形成地域の指定・景観形成基準制定
○歴史的景観保全の市民運動とマンション建設反対運動の融合が条例制定の後押しとなった。議会筋も全員推進派であった。
1990(平成2年) 一部改正
1) 「勧告」の導入
2) 地域区分の見直し
3) 周辺地域への対応 → 「高度地区」導入、「要綱」地域設定 周辺地域の高層建築の景観誘導制度導入
[4] 1995(平成7年) 函館市都市景観条例の施行
○西部地区歴史的景観条例の施行後、高層マンションの建設が周辺地域に拡散していったことを契機として、全市で都市景観の形成を図る必要があるとの市民意見が生じ、1991(平成3年度)から準備に着手。
→現在、大規模建築物の届出についてのみ全市適用 都市景観形成地域の指定は、駅前・大門地区で準備中
3. 取組の効果
取組によりどんな効果が現れているか。
[1] 住民意識の高揚
※ 守る会の組織化
・ 函館市伝統的建造物群保存会の結成(1990/平成2年)
・ 函館市中心街まちづくり協議会(平成13年度団体認定)
※参加意識の増大
・ 特に顕著な動きは見られていない。
[2] 業者意識の高揚 届出の周知
※自主的な勉強会
※事前相談等の増加
・ 条例制定後、着実に周知は図られてきていると思われるが、依然事前相談は限られている。
・ 大規模の届出については、届出提出期日(1か月前)が守られないケースがある。
[3] 国・道からの表彰 別紙のとおり
追加:「港ヶ丘通」/建設大臣手づくり郷土賞〜ふるさとの風景にとけ込む道〜(平成5年度)
[4] まちなみ美化等への波及
・ 特になし
[5] 都市問題等への関心の増大
・ マンション建設の周辺区域への波及に対する反対運動 → 中高層指導要綱の制定
・ 借上市営住宅建設問題
・ アクアコミュニティ基本構想(観覧車建設に係る)
その他
ハード整備については、各種事業の環境整備がスムーズに取り組まれており、公共施設整備については、一定の効果を上げている。
4. 改善点など
効果を高めるためにやった方が良い、やった方が良かったと考えている事項。
[1] 条例化
函館市西部地区歴史的景観条例(S63) → 函館市都市景観条例(H7)
[2] 罰則強化
平成2年度に景観形成基準に適合しない場合の措置として、助言・指導に「勧告」を追加。
[3] 数値的基準
当初から、高さの基準を設定。
[4] 地区指定
平成2年度に地区区分の見直し。 新規の都市景観形成地域の指定は準備段階。
[5] 助成制度
指定建造物にはあるが、伝建地区を除き助成制度がない。効果的な景観誘導に支障が生じている。
[6] 表彰制度
S63の条例制定時から表彰制度を創設
[7] 住民意識の高揚
条例の制定経過にあるとおり、景観保全と高層リゾート型マンション建設反対の運動が一体となって取り組まれてきたところがあり、必ずしも歴史的景観保全に対する住民意識が一様に高まったためではないと考えている。
条例制定に当たっては、地域説明会を開催するなど、条例施行に対する周知は十分行ったと考えるが、意識の高揚まで到達していたかについては、疑問が残る。
[8] 民間業者に対する勉強会
地元説明会同様、地元業者への説明会を実施している。
[9] 職員の勉強会
[10] アドバイザー制度
S63の条例制定当初からの課題であったが、条例制定のいきさつから、高さ規制が主な内容となり、全般的な景観誘導に至っていない状況があり、このため、アドバイザー制度の導入も遅れている。
景観全般への配慮が必要不可欠ではないかとの指摘もあり、地域内での適切な景観誘導の手法について検討が進められており、アドバイザー制度の導入が今後の課題となっている。
[11] 審査委員会
函館市西部地区歴史的景観審議会(S63) 函館市都市景観審議会(H7)
その他
地域指定の経過から、「ガイドライン」の設定なしに地域指定と基準を設定した。このため、地域のあるべき将来像が認知されないままに経過してきたという反省点がある。