6 雪国生活情報サービス
地域外との情報交流の成果を鹿角市民の生活改善に向ける努力も重要である。このサービスは、そのことを考え続けるための仕組みである。すなわち、世界中の積雪寒冷地から暮らしに役立つ情報を収集し、市民に伝える役割を担う。子供達に雪国の暮らしの厳しさだけでなく、楽しさを実感させることも、その子供達が将来地域を担ってくれるかどうかを決める時に有力な判断材料のひとつになるかもしれない。また、世界の積雪寒冷地で用いられている様々な技術や道具について学ぶことにより、地域の産業を振興・再生させるヒントを得ることもできる。
あるいはもう少し広く、東北地方の農山村地域に生きるための知恵を絞り集めて、市民生活の改善を図るということも考えられる。鹿角の生活の中で守り伝えられてきた文化を世界に向けて発信するという機能を持つことも考えるべきである。それによってこの地域に住むことが市民の誇りになるという展開こそが、このサービスの目指すべき最終的な目標である。
(1) 情報収集と提供
ア 雪国生活情報
世界の積雪寒冷地から冬の暮らしを豊かに楽しくする次のような情報を収集して、市民に伝える。
・家庭向きの除雪技術と道具
・冷熱資源としての雪の活用
・住宅やインテリアなど生活を快適にする仕掛け(照明や暖房)
・新しい冬のファッション
・バラエティ豊かな備蓄食品
・雪国の遊び
世界の除雪道具や照明器具、暖房器具などの情報をたくさん集めることにより、鹿角の鉄工業や木工業の技術を生かすことのできる新しい製品の可能性が見えてくることも期待できよう。
<現在の雪処理用具の一部>
<アメリカ製電動除雪機>
<薪ストーブ>
<ペレットストーブ>
注)ペレットストーブ:間伐材や林地残材、樹皮などを原料とする木質ペレットを燃料とするストーブ。森林荒廃の防止と資源の有効活用につながる。
<北欧のタウンハウス>
注)タウンハウス:省エネルギーや雪の対応などで優れる。図表の例は、住戸間を木のデッキでつなぎ、階段などを共有化して土地の有効利用を図っている。
資料:日本建築学会編「雪と寒さと生活1」彰国社
イ 伝統技術の保存・振興
長い雪国の生活史の中で培われてきたさまざまな生活の知恵を現代に再生し伝える。こうした知恵・技術を現代生活に復活させ、新しい知恵を付加していくことは、生活に雪国らしい味わいをもたらすだけでなく、電力や石油エネルギーに頼った現代生活の脆弱性に対する安全弁としても意味を持つであろう。
<昭和初期全国の除雪用具>
<雁木>
<コミセ(黒石市)>
資料:日本建築学会編「雪と寒さと生活1」彰国社
干しもちづくり(秋田)岡田重男「雪の生活学」無明舎出版より
秋田のガッコ庫(つけもの庫)
(2) 研修・学習機能
ア 国内外研修
世界の積雪寒冷地に、地域産業の次代を担う若い人たちを、目的を持った研修に送り出し、帰国後にその経験を活かした産業起こしや製品開発に挑戦してもらう。例えば、世界中の除雪器具とその使い方を勉強して、鹿角の鉄工所で試作したり、木製の公園遊具を鹿角の木工技術を使って作るなど、産業の芽は多様に考えられるであろう。
様々な分野の人材育成に関する補助金の申請窓口を一本化することで資金対応を行う。
イ 地域学習
住民が地域のことをもっとよく知り、愛着を持って暮らすために、特に子供たちや若者に地域の歴史や伝統、技などを伝えていく仕組みをつくる。高齢者の力を借りることで、高齢者が生きがいを見つける機会にもなることが期待できる。