3 新たなふるさと市民制度の基本的な考え方
(1) 鹿角市の基本課題
鹿角市では4町村合併以前の昭和30年の人口6万余をピークに、人口減少が続いている。そして人口減少の進展は、同時に、過疎化・高齢化の進展をもたらしている。
産業においては、豊かな観光資源に恵まれてはいるものの、観光の多様化などの流れのなかで、入り込み客数の減少などが見られ、観光産業には以前のような活気が失われてきている。鹿角の基幹産業である農林業は低迷しており、製造業などにおいても雇用力のある大規模・中核企業が少ないことから、地域経済力の一層の低下が懸念されている。
このように鹿角市は、様々な部分で都市としての深刻な課題を抱えている。このような状況を打開するために、鹿角は、その地域の枠内にとどまらず、広く人材、その知恵・活力・ネットワークを生かしていくことで、地域振興・活性化を図らざるをえないと考えられる。
(2) ふるさと大使−その現状と問題点
上記の人材活用方策として鹿角市が創設したのが「ふるさと大使」である。
鹿角市ふるさと大使は東京事務所の開設を機に、平成元年12月より、鹿角市出身の有識者、産業、教育、芸術、文化などの面で、かつて鹿角市と関わりを持った人たちを対象に、市長が委嘱しているものであり、今日まで運営されてきた。鹿角にゆかりのある各界の有力者に鹿角市の観光、産業などの宣伝をしてもらうとともに、鹿角市の活性化、観光、文化、産業振興のために知恵を借りようというものである。現在21名が大使としての委嘱を受けている。
大使にはふるさと鹿角の宣伝のための名刺と年1回の特産品の送付を行い、また年1回、東京で市長との懇談会が実施されてきた。この懇談会で出された提言は、必要に応じて市役所内の担当部局に伝えられる形で影響力を持ってきたのである。
しかし、市の方から特定の課題を示して対策を聞くというよりも、限られた時間の中で「何か提言はありませんか」という一般的な問いかけが主であった。このため、有識者のノウハウを生かして市の課題を解決する方策を見つけるというような即効性を持ち得なかった。また、鹿角市民の活動の現場までふるさと大使の提言を伝達し、また施策化する仕組みが未熟であり、商工会などの経済団体さえも情報をうまく活用することができなかった。
(3) 新たな外部人材活用制度の必要性
以上のような状況にあって、「ふるさと大使」事業に見直しが迫られることとなった。
一方、過疎化、高齢化のさらなる進展、地域経済のさらなる落ち込みが続いている。また、鹿角事業運営の中心となってきた鹿角市東京事務所と東京のアンテナショップとして特産品の営業販売と消費者の意見の収集を行ってきた「秋田鹿角屋」が相次いで閉鎖され、それらに代わる新たな鹿角PRの方策が求められている。こうした課題に対して、外部人材を活用して、より実質的な効果を期待した新たな制度を立ち上げる必要性が生まれてきたのである。それが新たな「ふるさと市民」制度である。
(4) 3つの<鹿角づくり>に向けて
ふるさと市民制度は、市内外の人材と情報の交流によって鹿角の地域づくりを促進する狙いを持つものである。そこで以上で見てきた鹿角市の現状や課題を踏まえ、人材と情報の交流による対策を考える中から、ふるさと市民制度の導入によって、とくに次の3つの<鹿角づくり>を進めることを考えることとした。
○ <住みやすい鹿角>をつくる
・鹿角に住む人たちが安心して、快適に暮らすこと、その環境の充実がまず必要である。
・そこで、地域内外からの人と情報を受け止め、福祉、生涯学習、文化活動など、様々な分野で市民生活の向上を図ることが必要である。
○ <ふるさと鹿角>をつくる
・明るく活気ある、そして温かな<ふるさと>こそが鹿角の魅力である。
・<ふるさと鹿角>をつくることで、交流人口を確保し、過疎化、高齢化に対応したまちづくりを進めることが期待される。
○ <力強い鹿角>をつくる
・落ち込みが続く地域経済を、貴重な自然などの地域資源を活かして再興することが求められている。
・地域内外の人達の知恵や汗、熱意、資金などを活用して元気な鹿角をつくることが必要である。