日本財団 図書館


1.4 プロペラ軸
 プロペラ軸は中間軸と同様船舶機関規則などにより主要寸法が決定され、また合格した規格材を使用しなければならない。
 一般にプロペラ軸は鍛鋼製で、前端は船内で中間軸と一体に鍛造された軸継手フランジまたは、組立型軸フランジとカップリングボルトで結合される。プロペラ軸の後端は、通常固定ピッチプロペラの場合コーンパートでプロペラを取付ける。
 可変ピッチプロペラの場合、多くは軸と一体に鍛造された一体型継手フランジでプロペラを取付ける。小型の可変ピッチプロペラの場合は、コーンパートで取付けるものである。
 プロペラ軸の構造は、船尾管軸受の潤滑方式によって海水潤滑方式と油潤滑方式に大別される。
 
1) 海水潤滑方式
 3・10図に示すような鍛鋼製プロペラ軸の場合は、軸身が海水腐食に対して確実に保護されなければならない。3・10図は海水潤滑方式のプロペラ軸を示す。
 
(拡大画面: 48 KB)
z1169_01.jpg
3・10図 海水潤滑方式
 プロペラ軸の保護方法としてつぎのものがあり、第1種プロペラ軸と第2種プロペラ軸に分類される。
(1) 第1種プロペラ軸
[1] 全通青銅スリーブを装備したプロペラ軸
[2] 分装青銅スリーブでその間をゴム巻きで保護したプロペラ軸(3・11図)
[3] 分装青銅スリーブで、その間をFRPで保護したプロペラ軸(3・12図)。但し、JG認定品のみ第1種プロペラ軸と認められるが、その他のものは、第2種プロペラ軸となる。
[4] 船舶機関規則の承認した耐食性材料で製造されたプロペラ軸
 
(2) 第2種プロペラ軸
[1] 第1種プロペラ軸以外のプロペラ軸
  3・11図はゴム巻き保護した場合のスリーブ端部の形状を示す。3・12図はFRPで保護した場合のスリーブ端部の形状を示す。
 なお、プロペラ軸の検査については第5章船舶安全法を参照のこと。
 
3・11図 ゴム巻保護
 
3・12図 FRP保護
        
(3) プロペラ軸の船首側組立型軸継手構造
 プロペラ軸を船尾方向から船尾管に挿入する場合、プロペラ軸の船首側は組立軸継手を採用することになるが、この場合3・13図に示すような構造では船尾管軸装置からの海水の漏水によって軸身に海水がかかり腐食したり、クロスマークが発生したりして、プロペラ軸が折損することがある。この対策として3・14図に示すようなプロペラ軸スリーブを組立型軸継手まで延長し、軸身を完全に保護する構造とする。
 
3・13図
 
3・14図
        
(4) プロペラ軸のプロペラ取付部の構造
 3・15図に示すようなプロペラ軸にプロペラを取付ける構造では、プロペラの船首側のゴムパッキン(Oリング)がプロペラの押込量に影響を受けるのでOリングによる密封性が不安定である。このためプロペラ軸の軸身にクロスマークが発生することがある。この対策として3・16図に示すようなゴムパッキンをパッキングランドで押込む構造とする。
 プロペラ軸は海水の浸入などによって折損事故が発生することがあるので、プロペラの取付時および取外時の検査には、十分留意しなければならない。
 
3・15図 プロペラ取付部の構造
 
3・16図 プロペラ取付部の構造
    
 
2) 油潤滑方式
 3・10図に示すような海水潤滑方式のプロペラ軸の構造と異なり、プロペラ軸が鍛鋼製の場合でも油潤滑方式ではプロペラ軸は海水と接触することがないので、プロペラ軸の軸身の保護対策は必要ない。ただし、船尾管の船首側および船尾側には船舶機関規則などで承認された船尾管軸封装置を装備する必要がある。船首側の軸封装置は船尾管内の油が機関室内へ流出するのを防ぐ。また、船尾側の軸封装置は船外からの船尾管内への海水の浸入および船尾管内の油の船外への流出を防ぐものである。
 この場合のプロペラ軸は第1種プロペラ軸として認められる。3・17図に油潤滑方式のプロペラ軸を示す。
 
(拡大画面: 48 KB)
z1171_01.jpg
3・17図 油潤滑式
1.5 船尾管軸
 多軸船の場合、船体構造上、プロペラ軸の長さが長くなり製作上、装備上などの理由により、プロペラ軸継手と中間軸継手との結合位置を船外で行うことがある。この場合の船尾管内を通る中間軸を船尾管軸と言う。
 船外位置に軸継手がある場合は、軸継手を海水からの腐食に対して保護するための保護カバーを設ける必要がある。
1.6 船尾管および船尾管軸受
1) 船尾管
 一般に船尾管本体(スタンチューブ)は鋳鉄製あるいは鋳鋼製の場合が多い。また比較的大型船では船尾管本体を設けず、船体と溶接構造で形成する場合もある。
 
2) 船尾管軸受
(1) 海水潤滑軸受
 海水潤滑軸受材として、リグナムバイタ、合成ゴム、合成樹脂などが使用される。
[1] リグナムバイタ
 リグナムバイタは熱帯地方に成育する自然木で自己潤滑性に優れた軸受材である。リグナムバイタは、海水に浸漬すると膨潤するので、装てん時、長手方向(軸方向)の伸びしろを考慮する必要がある。またプロペラ軸回転時リグナムバイタに含有されている樹脂分が温度の影響を受けやすいのでプロペラ軸とリグナムバイタとの摺動熱を取去るため船尾管へ積極的に給水する必要がある。
 リグナムバイタは船尾管ブッシュ(青銅製)に装着する際3・18図に示すように軸受の下半部には変形がきわめてすくない木口材を、上半分には板目材を使用することが大切である。
3・18図 リグナムバイタの取付要領
[2] ゴム軸受
 3・19図に示すようなゴム軸受の構造はリグナムバイタ軸受と同じである。ゴム軸受は、軸の回転が高い時、軸とゴム軸受との摩擦係数が小さいため、主機関出力の動力損失がすくなく、ゴム自体の耐摩耗性が優れていることから近年海水潤滑軸受材として普及している。プロペラ軸回転時ゴム軸受部の温度上昇は致命的な損傷につながるので冷却水の供給はリグナムバイタ以上に十分留意しなければならない。
 
(拡大画面: 62 KB)
z1173_01.jpg
3・19図 ゴム軸受の構造
[3] 樹脂軸受
 樹脂軸受は小型船の船尾管軸受に使用される場合が多い。現在船尾管軸受材としてはフェノール樹脂に綿帆布やアスベストを入れ積層したもの、樹脂粉末を圧縮プレスしたテフロン系のものなどが使用されている。
 
(2) 油潤滑軸受
 軸受材としては鋳鉄製または鋳鋼製ブッシュにホワイトメタルを内張り鋳込んだものが使用される。ホワイトメタル軸受は油にて潤滑され軸受性能が非常に優れているが、軸が片当りしないよう軸芯に十分注意しなければならない。
1.7 張出軸受
 張出軸受とは多軸船などで、プロペラ軸を支持するために船外に張り出した軸受で、シャフトブラケット軸受とも言う。3・20図に示すように一般に海水潤滑軸受で、リグナムバイタ軸受またはゴム軸受が使用される。油潤滑軸受の場合はホワイトメタル軸受を使用し、張出軸受と船尾管軸受の間のプロペラ軸を円筒形の鋼板で覆い、油溜りを作り、張出軸受の船尾側および船尾管船首側にシール装置を設ける。
3・20図 張出軸受








日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION