[5] ICレギュレータ
バッテリには、オルタネータで発生した電気を供給して充電しているが、高い電圧で充電すればバッテリは破損してしまう。そのために発生電圧を制御し、一定に保つ必要がある。この発生電圧を制御するのがレギュレータである。
ICレギュレータはフィールドコイルとアースの間に入れたトランジスタをツエナダイオードでON、OFFすることによりフィールド電流を制御し、オルタネータの出力電圧を一定に保っている。
(ICとは集積回路のことで、一つの基板上に導体や抵抗を印刷などで形成し、それにトランジスタ、ダイオードなどの半導体部分(チップ)を接続して樹脂でおおったものである)
・ 出力電圧が低いとき
ツエナダイオード(ZD)が導通しないためトランジスタ(Tr2)がONし、フィールド電流を流し出力電圧を上げる。(2・175図)
・ 出力電圧が高いとき
ツエナダイオード(ZD)が導通するためトランジスタ(Tr2)がOFFし、フィールド電流が流れなくなるため出力電圧が低下する。(2・176図)
2・175図 出力電圧が低いとき
2・176図 出力電圧が高いとき
(参考)
イ. ツエナダイオード
ツエナダイオードは、普通のダイオードと同様に整流特性を持っているが、逆方向に電圧を加えると、ある電圧(ツエナ電圧)以上になると急激に電流
が流れる特性を有している。又ツエナ電圧以下になると不導通となり、電流は流れない。
2・177図 ツエナダイオードの特性例
ロ. トランジスタ
NPN型トランジスタの場合、べース(B)からエミッタ(E)へ、わずかな電流(ベース電流という)を流すと、コレクタ(C)とエミッタの間が導通状態となり、ここにべース電流の数十倍の電流(コレクタ電流という)が流れる。
2・178図 トランジスタの作動
なお、べース電流が流れないときは、コレクタとエミッタ間が不導通になり、コレクタ電流は流れなくなる性質を有している。
(3) バッテリ
(イ) 構造
バッテリは、2・179図に示すように数枚の陽極板、陰極板、セパレータを交互に組み合わせた極板群と、電解液及びこれらを収める電槽などで構成されている。
2・179図 バッテリ
[1] 極板群
二酸化鉛で造った陽極板と、鉛で造った陰極板を2・180図に示すように数枚ずつ組み合わせ、これに極柱(ポール)を取り付け、各極板の間に短絡防止用のセパレータおよび作用物質の脱落防止のガラスマットを挿入して組み立てたものを極板群といい、この極板群を電槽内に入れて造った蓄電池をセル(単電池)と云う。なお、起電力は2Vで、このセルを2個以上直列につないだものをバッテリという。
2・180図 極板群
[2] 電槽
電槽は、エボナイト又は合成樹脂で造られた容器で、12V用は6つの部屋に分かれ、それぞれに極板群が収められ、コネクタによって直列に接続されている。
蓋には電解液を注入したり、比重計用のスポイトや温度計を入れたりするための液口があり、ここから電解液が漏れたり、ほこりが入ったりしないように合成樹脂の液口栓が取り付けられている。なおこの栓の中央又は、側部に小さな穴があけられており、バッテリの内部で発生するガスを放出するようにしている。
[3] 電解液
電解液は、精製水又は蒸留水に硫酸を混合して、希硫酸としたものを用いる。
電解液の比重は、完全充電時、(液温20℃の時)1.260〜1.280の間で使用され、寒冷地では1.280に近い高めの比重のものが使用されている。