(ロ) 機能
[1] 放電
充電されたバッテリに、電気回路を接続して電気エネルギを取り出すことを放電といい、放電すると、電解液中の硫酸分は極板の二酸化鉛及び海綿状鉛と化学反応を起こし、硫酸鉛と水を生成する。
従って放電を続けると、電解液の比重は放電量に比例して低下するので、比重を測ることによって放電量を知ることが出来る。完全充電時の比重が1.260(20℃)のバッテリについて比重と放電量の関係を示すと2・181図のようになる。
[2] 充電
充電は、放電とは逆に、バッテリに電流を供給する作用で、充電することにより、放電によって硫酸鉛に変わった極板から硫酸が分離し、電解液の比重は元に戻る。
極板の作用物質も、陽極板は二酸化鉛に、陰極板は海綿状鉛に戻り、再び放電する事が出来るようになる。充電中の端子電圧は、2・182図に示すように、充電が進むにつれて電圧は次第に上昇し、ついには最高値に達する。最高値に達した後はいくら充電しても変化しなくなる。
又、電解液の比重も端子電圧と同様に充電が進むにつれて次第に上昇し、ついにはいくら充電しても変化しなくなる。この時が完全に充電された時であり、この時の比重(20℃換算)が、1.260〜1.280の間にあればよいが、外れているときには、蒸留水又は希硫酸を入れて調整し、その後約1時間充電を続けた後比重を確認し範囲内にあれば終了とする。外れておれば再調整する。
2・181図 電解液の比重と放電量の関係
2・182図 充電時間と電圧及び比重の変化
[3] 容量
完全に充電されたバッテリを一定電流で連続放電した場合、端子電圧が放電終止電圧になるまでに取り出すことの出来る総電気量を、一般にバッテリの容量といい、放電電流とその放電時間との積で表し、単位には「アンペア・アワー」が用いられ「AH」の記号で表す。
(100AHのバッテリとは10Aの電流を10時間流す事が出来る容量のバッテリである)。
なお、バッテリの容量は電解液の温度によって2・183図のように変化する。即ち温度が上昇すると容量は増加し、逆に温度が下がると容量は減少する。
2・183図 容量と電解液温度との関係
[4] 電解液の比重と温度
電解液の比重は、バッテリの状態を知る要素の一つであり、この比重は2・184図に示す如く電解液の温度が高いと低くなり、温度が低いと高くなるので、標準温度の20℃に換算しないと正確な比較は出来ない。
2・184図 電解液温度と比重の関係
[5] 自己放電
バッテリは、外部に仕事をしなくとも時間の経過とともに、電気エネルギを失っていく。この現象を自己放電と云う。従って使用していないバッテリも定期的に充電する必要がある。
(取扱上の注意)
[1] ガス発生に対する注意
充電中及び充電完了直後のバッテリは、電気分解によって生じたガス(H2、O2)の発生が多く、特に水素ガス濃度が高くなると引火爆発するので、換気を良くすると共に火気の使用や、火花の発生には十分なる注意が必要である。
[2] 熱に対する注意
過大な電流による充電は、電解液を異常に過熱させ、電槽の変形、極板やセパレータの損傷などの原因となるので、充電時には十分なる注意が必要である。又スチーム、クリーナ、等による清掃中の過熱による電槽の損傷についても注意が必要である。
[3] 油脂に対する注意
バッテリの端子には、錆止めや腐食防止の目的でグリースなどを塗ることがあるが、それ以外に油脂が付着すると、有害な部分もあるので注意が必要である。