2.2 エンジン運動部
エンジンの運動部分は、ピストン、連接棒、クランク軸、主軸受、ハズミ車、ダンパ、及び、その付属部品で構成されている。
1) ピストン
ピストンは、シリンダライナ内を往復運動して、燃焼室内で発生した燃焼圧力を、頂面で受け、連接棒を介してクランク軸に回転力を与えるとともに、クランク軸の回転力により連接棒を介してシリンダ内の燃焼ガスの排出、新しい空気の吸入、並びにシリンダ内の空気を圧縮する役目をしている。
ピストンは、燃焼室の一部を形成するピストン頂部と、リングが装着されるリングランド部、ピストンピンを支持するピストンピンボス部、ピストンにかかる側圧を支えるスカート部によって構成されている。
ピストン頂面は、高い爆発圧力と高熱にさらされるとともにシリンダ内を高速で往復運動するため、軽くて高温強度に優れ、且つ熱膨張が少なく熱伝導の良い材料が要求される。
小形高速機関では、アルミニウムを母体とした比較的熱膨張係数の小さいY合金やローエッキス合金を金型鋳造して造られる。中大型機関では、2・51図に示す如く従来は鋳鉄一体形で造られていたが、最近では機関の高出力化に伴い、熱膨張係数が小さく、耐熱強度、保油性、なじみ性に優れたダクタイル鋳鉄(球状黒鉛鋳鉄)の一体形ピストンが使用されている他、頂部を耐熱強度に優れた鍛鋼で造りスカート部を鋳鉄等別の材料で造って、ボルトで締め付けた組み合わせ形が採用されている。
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2・51図 ピストンの断面形状
ピストン頂面の温度は、高過給機関ほど高くなり、この温度が材料の耐熱限度を越えると、亀裂発生等の事故を起こすので、潤滑油によりピストンの裏面を、強制的に冷却する必要があり冷却形ピストンが使用されている。その代表例を2・52図に示す。
最近の高速高出力機関には、2・53図に示すように、シリンダブロックに設けた固定ノズルによってジェット冷却する方式が主流となっている。又アルミピストンのトップリング溝部には、耐摩環(リングトレーガ)を鋳込みリング溝の摩耗に対処している。
ピストンの形状は、高熱を受ける頂部外径は、熱膨張を考慮して、スカート部に比べ幾分小さく加工されている。また、ピストンピンボス部は、ピン方向の膨張量が大きいため、ピストンピン方向を短径とし、その直角方向を長径とした楕円形に仕上げ、機関運転時熱を受けた時点で真円となるように作られている。(2・55図)
またピストン頂面は、燃焼室の一部を形成しているため燃焼方式により、2・54図に示すような形状に加工されている。
2・52図 ピストンの冷却方式
2・53図 空洞付ピストンの固定ノズルによるジェット冷却方式
2・54図 ピストンの頂部の形状
2・55図 ピストンの外形