11) 電流の働き
[1] 発熱作用
金属には、電気が通りやすい導線を流れるときはほとんど熱は出ないが、ニクロム線のように電流の流れを妨げようとする電気抵抗があるものに、電流を流せば熱が発生する。発熱部分の温度が高くなるようにしてやると、赤熱から白熱に移行して光が多く出るようになる。
電流が流れることによって導体に発生する熱をジュール熱と云う。
[2] 磁気作用
補・68図のように直線上の導線に電流Iを流すと、導線の周りに同心円上の磁界Hができる。電流が流れると、必ず磁界ができる現象は、電気の最も基本的な性質の1つである。
電気がする力仕事はこの作用の応用である。
つぎに、導線を巻いてつくったコイルに電流を流すと、補・69図のようにその中に磁界が発生する。
磁界の中で導線に電流を流すと導線は力を受けこれを電磁力と呼ぶ。
補・68図
補・69図
[3] 化学作用
水の電気分解や、電気メッキでおなじみの作用である。補・70図のように、食塩水に2枚の極板を入れて電池の両端につなぐと、食塩水はプラスの電気を持つナトリウムイオンとマイナスの電気を持つ塩素イオンに電離し、プラスの極板ではマイナス塩素イオンがひかれ、電気を失って塩素ガスが、マイナスの極板ではプラスのナトリウムイオンがひかれ、水酸化ナトリウムとなり、余った水素がガスとして出て行く。
補・70図
12) 電力
電源から出た電荷は、高いエネルギを持っている。この電荷は、電流として回路を動き、色々な形でエネルギを放出し、エネルギを低くして電源に戻る。電気が、熱、光、力と云うように、色々な仕事をしてくれるのはこのためである。電気は、一般に一秒間にする仕事のことを、仕事率と云う。
電流が一秒間にする仕事、つまり電流の仕事率のことを電力と云い、単位はワット(記号はW)が用いられる。
電力(W)=電圧(V)×電流(I)
電気のする仕事の量は、電力量と云い単位はワット時(記号はWh)で、通常はキロワット時(kWh)が用いられる。次の式で計算する。
電力量=電力×時間
なお、電力Pは抵抗回路の電圧V、電流I、抵抗Rの値のうち2つ数値がわかれば、先に学んだオームの法則より求められる。
13) 発電
補・71図のようにコイルの両端に検流計をつなぎ、磁石をコイルに近づけたり、遠ざけたりすると検流計の針が振れる。つまり電流が流れる。
電流の大きさは、磁石を動かす早さが早いほど大きく、電流の向きは近づけるときと遠ざけるときで反対となり、同様磁石を固定してコイルを動かしても同じ現象が起こる。
このように、磁界の変化によって導体に起電力が生じる現象を電磁誘導と云い、この起電力を誘導起電力、流れる電流を誘導電流という。
補・71図
14) 変圧器
交流電流の最大の利点は「変圧器(トランス)」によって、電圧を自由に上げたり下げたりできることである。
補・72図ように1次コイルに電池をつなぐとスイッチを開閉するときだけ電球がつくが、スイッチを閉じたままのときは電球はつかない。これは、前項で説明したように、スイッチを開閉することによって、1次コイルでつくられる磁界が変化し、2次コイルを通る磁力線が変化し、2次コイルに誘導起電力が起きるからである。
次に、1次コイルに交流電圧を加えると、スイッチを開閉しなくても、電球はついたままになる。これは交流電圧が周期的に変化するからである。このようにして、1次コイルに加えた交流電圧を、2次コイルに伝え、そのなかだちをするのが磁界(磁力線)である。実際の変圧器は補・73図のように薄いけい素鋼板を積み重ねて鉄心にして、その周囲に1次、2次コイルを巻き付ける。
変圧器は次のような関係が成り立つ。
補・72図
補・73図